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つんどく速報ライター☆イマガワです。

電子書籍に興味があるけれど、いまだに踏み出せないアナタ。いろんな電子書籍作品が「つまみぐい」できる、こんなパッケージはいかがでしょう!


ダイレクト文藝マガジン 010号「初登場 内藤みか/山本一郎/安田理央」ダイレクト文藝マガジン 010号「初登場 内藤みか/山本一郎/安田理央」 [Kindle版]
著者:佐々木 大輔
出版: 焚書刊行会
(2013-03-21)

収録文字数 およそ6万7千字
読了にかかる目安 2時間15分(500字/分の場合)

本書は、タテ書きです。

【目次】
01. はじめに
02. 内藤みか 『夢十夜 ~淫~』
03. 山本一郎 『たかし』
04. 鈴木フルーツ 『大銀河くそ女伝説』(漫画)
05. 犬子蓮木 『2月は死神』
06. 鈴木零生 『Book War』第一話 宣戦布告
07. 安田理央 『こんなに可愛いからこそ脱がせてもらえる、という時代』 [批評]
08. オドネル・ケビン 『オヤジ・マグネット』
09. 廣川ヒロト 『戦国居酒屋秀吉』(三)完結[連載小説]
10. 代々木犬助 『お客様の中にイケダハヤトはいらっしゃいませんか』
11. お父さんのためのダイレクト出版ニュース講座
12. 今週の発禁ツイート
13. 編集後記
14. 奥付

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。



インディーズ作家たちの挑戦


本書『ダイレクト文藝マガジン』は、2013年1月に創刊されたばかりのデジタル雑誌です。KDP(キンドル・ダイレクト・パブリッシング)を利用して個人出版にチャレンジしている創作者たち、おもに「インディーズ作家」たちの原稿が掲載されています。

インディーズ作家とは?


ヘリベマルヲ氏が提唱する『インディーズ小説』の概念により、その書き手を指すことばです。

・大手出版社の商品/製品に対するカウンターとして出版された小説
・流通媒体は「書籍」(電子書籍あるいはオンデマンドの紙書籍も含む)
・著者は出版コストを負担しない。したがって自費出版ではない。
・コミュニティの関係性や文脈によらない、独立した作品(同人誌とは異なる)

引用元:『インディーズ書籍宣言 電子書籍とオンデマンド本の過去、現在、未来

特徴は?


このデジタル雑誌を作っている全員が「書き手」であり、少なくとも1冊以上は「Kindleストア」にて著作を販売している顔ぶれで誌面が構成されています。それは寄稿者のみならず、雑誌制作の実作業を行なっている人間にも当てはまります。

編集部員みんな書き手


発行責任者の佐々木大輔さんは、すでに2冊の著作(『セルフパブリッシング狂時代』『女たちの遠野物語 - 十二話でわかる遠野物語の世界』)をKindleストアにて上梓しています。

編集責任者の忌川タツヤさんも同様、『絶対すくみず黙示録』『おれとこなちゃん』等、合計4冊のKindle本を発行しています。

マガジンの装丁を手がけている山田佳江さんにおいても、まごうことなき「小説の書き手」であり、ヒット作『未来少女ミウ』を含めた合計3冊の著作がKindleストアに並んでいます。

きわめつけは


『バックナンバーの004号」における表紙イラストです。

ダイレクト文藝マガジン 004号 新連載 山田佳江『電子の灯す物語』 文芸特集号ダイレクト文藝マガジン 004号 新連載 山田佳江『電子の灯す物語』 文芸特集号 [Kindle版]
著者:佐藤 拓史
出版: 焚書刊行会
(2013-02-08)


この女子高生のイラストを描いたのは、累計8,000部を突破した電子書籍『Gene Mapper (ジーン・マッパー)』の藤井太洋氏です。

藤井さんは、2013年に入ってからも怒涛の快進撃を見せており、SFマガジン等の紙媒体への寄稿はもとより、なんと! 2013年4月24日に早川書房から『Gene Mapper』の完全版が発売されるそうです。

Gene Mapper-full build-|ハヤカワ・オンライン

Gene Mapper -full build-(藤井太洋氏の公式ウェブサイト)

書き手の、書き手による、書き手のための表現媒体。それが『ダイレクト文藝マガジン』なのです。

収録作品のご紹介


2013年1月に創刊されて以来、2ヶ月のあいだに『ダイレクト文藝マガジン』は通算10号を数えましたが、今回ご紹介している第10号は、ひとつの到達点ともいえるラインナップです。さっそく、収録作品のレビューを記したいと思います。

内藤みか 『夢十夜 ~淫~』


わたしはカレの牝奴隷、「オーガズム証明」をしてみせる風俗嬢、全裸女と水子霊、不能の夫のイチモツ奇譚、などなど、10の掌編小説集。夏目漱石『夢十夜』における「こんな夢を見た。」という書き出しが「こんないやらしい夢を見た。」に変わるだけで、まったくちがう世界観を作り上げた著者に脱帽!

著者の内藤みかさんは、フランス書院文庫などでも活躍するプロの作家です。しかし本作は、出版社や編集者を経ていない「ナマ」の原稿。内藤さんは「ケータイ小説の女王」と呼ばれていたり、「Twitter小説集 140字の物語』という著作もあります。商業作家でありながらも、つねに新しいメディア上における文芸表現に挑戦してきた『インディーズ作家』の側面をもつ、稀有な人物です。

山本一郎 『たかし』


タイトルどおり「たかし」という大学生が主人公のショートショート小説。圧倒的な存在感の無さ、すなわち「リアルステルス」という超能力の持ち主である「たかし」が、新卒面接に挑む内容。現代的なディテールを備えながら、作品全体に「昭和の匂い」を感じさせる、正統派の掌編小説です。

著者の山本一郎さんは、いうまでもなく、あの「やまもといちろう」さんです。人気ブログ『やまもといちろうBLOG(ブログ))』においては、正業の投資分野のみならず、あたかも水面ギリギリを這って飛行するする最新鋭の巡航ミサイルのごとき破壊力と命中率を備えた圧倒的な筆致で書かれた政治・経済・書評・揉め事などの論評がたいへん好評です。でも、じつは文芸分野でも幅広く活躍できる能力を備えている書き手でもあったのです。

やまもといちろう 野球観戦日記 開幕版 [Kindle版]

この国で結婚をするということ 前編|山本一郎|ケイクスカルチャー|cakes(ケイクス)

赤い絨毯|山本一郎|cakes(ケイクス)

鈴木フルーツ 『大銀河くそ女伝説』


四コマギャグまんが。「創造主」の萌え擬人化もの。主人公の女子高生は、第1コマ目において交通事故で死にます。でも、すぐに生き返ります。「銀河の創造主」のおかげです。この「創造主」は、変な女の子。世間知らずで、造物主であるがゆえに、人間をモノのように扱ったりします。タイトルの「くそ女」の由来です。
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作者の鈴木フルーツさんは、萌えでキュートなヒロインを主役にしたブラックジョーク四コマが得意です。Kindleストアにおいて、すでに2作品が販売されています。つんどく速報においても『非実在少女しずむちゃん』のレビューをしました。

残念なヒロインの非日常を描いた4コマ漫画「非実在少女しずむちゃん」 - つんどく速報(電子書籍の感想・レビュー)

犬子蓮木 『2月は死神』


不穏な短編小説。主人公は、冬羽如月。プロの殺し屋。高校2年生。血を見ずに殺す。必要なのはラバー製のマスクのみ。相手にそっとかぶせれば、あっというまに死体の完成。無機質な登場人物たちの目を通して見る「殺人依頼者」たちのスケッチ。

著者の犬子蓮木さんは、キンドルストにおいて4冊の作品を上梓しています。代表作は、感情を欠落させたクローン人間の物語『demi』(レビュー

鈴木零生 『Book War』第一話 宣戦布告


出版業界を題材にして近未来SF。2015年。神田神保町に「外資系オンライン書籍通販企業 グローバリゾン・ジャパン」のオフィスがオープンする。そこで新たに発表された「マンガの同時翻訳配信」事業に、国内出版社は戦々恐々とする。グローバリゾン・ジャパンの代表を務める「瀬島弾」は、どうやら日本の出版社と穏やかならぬ因縁がありそうなのだが……。

バレバレの覆面作家「鈴木零生」さんによる、連載小説の第1回。なにも言えない。ええ、なにも言いませんとも。

安田理央 『こんなに可愛いからこそ脱がせてもらえる、という時代』


気鋭のサブカルライターによる『最近のAV女優がアイドルよりもカワイイ理由』を考察した批評エッセイ。デフレやインターネットの台頭による影響も少なからずあるのか、メーカー内における予算(制作費)が、減少している。とくに販売量を左右する「女優の質(ルックス・演技力・テクニック)」の点において妥協が許されない状況にある。以前ならばルックスは問われなかった「マニア向けのAV」においても同様の傾向にある。

……たしかに、おなじ「排泄物をモグモグする映像」の場合、どうせカネを支払うなら、美人が出演しているほうを選びますよねー。他にも「いまのアダルトビデオ女優は、先行する人気AV女優に憧れて業界入りする」という話も衝撃でした。ファッション雑誌の専属モデルに憧れて読者モデルに応募する、みたいなノリだそうです。

著者の安田理央さんは、25年以上もの活動歴のあるアダルト系フリーライターです。個人的な印象ですが、けっこう早期からインターネットの個人サイトやブログで情報発信を続けている気がします。最近では『45才からのアニメ入門』というシリーズにおいて、ユニークな視点からのエッセイを展開しています。ブログでも読めますが、けっこう長文なので、ぜひ電子書籍で読みたい!

オドネル・ケビン 『オヤジ・マグネット』


日本語を勉強中のアメリカ人。彼は、大分県の田舎駅のプラットフォームで電車が来るのをまっていた。案の定、おバカな日本人が話しかけてくる。いちどは、日本語がわからないフリをする。でも、しつこく話しかけて来る日本人。なぜなら、主人公のアメリカ人は、村上龍『69』を片手に座っていたからだ。彼はウンザリしていた。いつものパターンに。「日本語わかりますか?」→「ワカリマス」→「おおっ。きみ、日本語うまいね」→「ソウデモアリマセン」→(延々と、日本人としての優越感まじりのやりとりに付き合わされる)

オドネル・ケビン。日本語の文章を書くときのペンネームです。(たぶん)本名は「 Kevin ODonnell 」かな。日本語に興味をもったキッカケは、少年時代に耳にした日本のガールズパンクバンドの歌詞の響き。それ以来、ずっと日本語や小説について学び、考え、書き続けています。執筆後に、かならず日本人の知人にチェックしてもらっているので、ますます完成度が高まっています。オドネル小説を未読な人は、ぜひ!

廣川ヒロト 『戦国居酒屋☆秀吉』(三)完結


落ち武者ルックや戦国時代にこじつけたメニューが売りの「戦国コスプレ居酒屋」の店員たちが、タイムスリップする。彼らが迷い込んだのは、1559年。桶狭間の合戦の前年。そうです。信長のデビュー前夜。そうです。秀吉が、藤吉郎だった頃。そうです。戦国時代に迷い込んでしまった主人公たちは、ひょうんなことから「藤吉郎」と家で居候することになるのですが……。

著者は、廣川ヒロトさん。元自衛官という経歴を生かしたキンドル本『自衛隊のごはん』が1,000部を超えるヒットを記録。その勢いで執筆したのが、本作『戦国居酒屋☆秀吉』というわけ。すでにKindleストアにて完全版が発売中です。(戦国居酒屋☆秀吉 )『戦国自衛隊』や『鯨統一郎 タイムスリップシリーズ』が好きな人にオススメしたい一作です。

代々木犬助 『お客様の中にイケダハヤトはいらっしゃいませんか』


およそ930字で構成された掌編小説。高度1万メートルを飛行中の旅客機において、緊急事態が発生。早急に「イケダハヤト」が必要だった。早速フライトアテンダントが機内で呼びかける。つぎつぎと名乗りでる「イケダハヤト」たち。いったい誰が本物のイケダハヤトなのか!?

著者の代々木犬助さんは、ウェブ業界にまつわる人々をウィットに富んだ筆致で仕上げるのがうまいです。キンドルストア黎明期において話題になった『残念な聖戦』(レビュー)という作品では、代々木さんの優れたストーリーテリングが堪能できます。

読み応えありすぎ


「山本一郎」から「オドネル・ケビン」まで。この掟破りのラインナップは、キンドルストアやKDPが日本に存在しなかった2012年以前には実現しなかったものです。価格は、期間限定の99円。(通常価格は250円)ぜひ手に取ってみてくださいね!

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。

  • ダイレクト文藝マガジン 010号
  • 著者:佐々木大輔 忌川タツヤ 山本一郎 内藤みか 安田理央 犬子蓮木 廣川ヒロト 代々木犬助 山田佳江 オドネル・ケビン 柳田國男 鈴木零生 市川直子 鈴木フルーツ
  • 価格:250円
  • 読了にかかる時間:約2時間(個人差があります)
「満足」度
★★★★★(5)
「あたらしい文芸誌」度
★★★★☆(4)
「オドネルに驚愕」度
★★★★★(5)
「総合」
★★★★☆(4)

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