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ドカーン! ドカーン! 九七式中戦車、ドカーン!

鋼牙 / 試製一〇式装甲歩行機開発記鋼牙 / 試製一〇式装甲歩行機開発記 [Kindle版]
著者:齋藤三弥 イラスト:有田菜摘
出版:齋藤三弥
(2013-03-20)

昭和25年、日本陸軍は装甲された歩行機械、通称、『歩機』の開発を行っていた。

歩行機械は世界的な潮流であり、陸軍としても開発に傾注しなければならないのだが、各兵科同士の思惑のためにとても一枚岩とはいえない状態だった。

その当時の日本は欧米列強との直接対決を奇跡的に回避し、未曾有の繁栄を手に入れていた。だが、その反面、軍閥が国軍とは別に私設部隊を保有する暗部もあわせ持っている。

軍閥私設部隊は歩機や戦車を有する有力な部隊であり、武装強盗や内紛を多発させる内患として無視できない事態になっていた。

看過できなくなった軍は、その対抗にまだ試作段階の歩機、そして第一〇三独立実験評価中隊も参加させることにしたのだった。

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。

丁寧な解説と、優れたストーリーテリング


本書の主役である『装甲歩行機』は、対戦車戦用の兵器なので、皆さんの大好きな『戦車(パンツァー)』に関する描写も盛りだくさん。被弾後の戦車爆発パターンも豊富です。

ほかにも、作戦状況や兵器の機構や挙動に関して、物語の流れを妨げない程度のわかりやすい解説がなされているので、ミリタリー知識にうとい初心者でも楽しめると思います。

ソ連戦車に対抗するため開発された


本書の表紙に描かれているのは『装甲歩行機(歩機)』という兵器。

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もともとは、ソ連軍の脅威的な主力戦車に対抗するため開発されたものです。

1940年(昭和15年)当時において、ソ連軍の中型戦車『T-34』は、燃費のよいエンジン・高速走行が可能なサスペンション・幅広の履帯などを備えることにより、すぐれた機動力を誇っていました。

さらに『T-34』は、強力な76.2mm戦車砲を搭載しており、厚みのある傾斜装甲の防御力は、当時において世界最強レベルでした。当然、日本軍に配備されていた戦車では『T-34』を撃破することは難しい。

有効な対抗策は、たったひとつ。生身の歩兵が命がけで戦車に近づいて、手榴弾や爆薬あるいは地雷を仕掛けることによって撃破するしかなく、対ソ連軍戦車戦において、多くの兵士たちが犠牲になりました。

――以上のような教訓をもとに開発されたのが、戦車との近接戦闘(挺身攻撃)にも耐えうる『装甲歩行機(歩機)』というわけです。

世界観


本書『鋼牙 / 試製一〇式装甲歩行機開発記』は、いわゆる歴史改変SFジャンルに該当する長編小説です。

本編中では『昭和25年、欧米列強との直接対決を奇跡的に回避した日本』という一文のみ。あえて曖昧にしているのでしょうが、いち読者としては気になります。

ヒントになりそうな記述を拾っていくと、満州事変(昭和6年)が成功しており、日中戦争(昭和12年)が勃発したあたりまでは史実どおり。それ以降の歴史が『改変』されているようです。

さらに本編をたどっていくと、連合国司令部(GHQ)に関する言及は無く、昭和25年にもかかわらず大日本帝国陸軍が健在の模様。

これらの断片とあわせて『昭和25年、欧米列強との直接対決を奇跡的に回避した日本』という設定から導き出されるのは――

『海外領土の全面放棄』を意味するハルノートを受け入れ、真珠湾攻撃(昭和16年)が実行されなかった『戦後』の物語、であるらしいことがうかがえます。(たぶん)

出色のセルフパブリッシング作品


序章において『装甲歩行機(歩機)』の実戦投入を見極めるための模擬戦闘が描かれますが、読み終えた頃には、ほとんどの読者は『歩機』の実在を信じて疑わないことでしょう。そのくらい、本編における描写が緻密で、丁寧で、出来が良い!

加えて、昼行灯っぽい中間管理職が活躍したり、軍内部の派閥抗争があったり、終盤になると作者の筆が滑ったのか『ニュータイプ』っぽい描写が出てきたりと、まさに硬軟両面をそなえたエンターテイメント作品です。読めばわかる!

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)

「丁寧な解説」度
★★★★★(5)
「作戦描写が緻密」度
★★★★★(5)
「重鉄騎」度
★★★★★(5)
「総合」
★★★★★(5)



著者について


齋藤三弥さん(@type97chihakai)。『さいとう・みつや』と読みます。シナリオライター。


参考リンク


ハル・ノート - Wikipedia

【Kindle本紹介】リアル系二足歩行兵器の開発譚『鋼牙 / 試製一〇式装甲歩行機開発記』 | 電明書房


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