こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。

今回ご紹介するのは、難易度&エンタメ度が『メフィスト級』のミステリー小説です。

白く汚れて冷たく綺麗な白く汚れて冷たく綺麗な [Kindle版]
犬子 蓮木 (著)
出版: もふもふ出版; 4(誤字脱字修正)版 (2012/11/24)

舞台は東京伊豆諸島の離れ小島、天才数学者の誕生パーティが開かれるはずの場所で首切り死体が発見される。

響く銃声。増え続ける犠牲者と密室。人は死の淵で何を思う。

真実に辿り着くのは噂に名高い名探偵だろうか、それとも天才数学者の孫である少女が真実を暴くのか? 真実なんてきっと誰にもわからない……

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。

読者のほとんどがダマされる


まいった。参りました。こういうオチですか。なるほどね。意表を突かれました。

すべての真相が明らかになったのち、きっと多くの読者が、まるっと、すっかり騙される爽快感に酔いしれることでしょう。

――えっ? 叙述トリックじゃありませんよ。まさか! そんな陳腐な仕掛けのミステリではありません、この小説は。あははは、叙述トリックで満足できるのはジュニアハイスクールまでですからね。

あらすじ


本書『白く汚れて冷たく綺麗な』は、どんでん・どんでん・どんでん返しが楽しめる長編ミステリです。

美人探偵である『伊澄泉水(いすみ・いずみ)』は、白紙の本をトリガーとした完全記憶能力を有しています。

名探偵伊澄には追っかけが存在します。男子高校生『浦木周(うらき・あまね)』です。じつは支配欲の権化であり、ワトソン役のふりをして、探偵役である伊澄をXXXするべく狙っています。

そんな2人が訪れたのは、伊豆諸島の離れ小島でした。名探偵伊澄の大学院時代の恩師――天才数学者が暮らしている孤島のパーティーに招かれたのです。

お約束のごとく、彼女たちの目の前にあらわれたのは、恩師の『生首』と『それ以外の肉塊』でした。

犯行現場にあったマッキントッシュのディスプレイには『これからも快楽の為、殺人を続けます。私もあなた方の中にいます。あと3人』という犯行予告がタイプされていたのです。

途絶した電話回線。パソコンの電子メールも使えず、高性能なはずの『ほとんどボタンのないディスプレイのみの携帯電話』は圏外を表示している――警察の到来が期待できないなか、名探偵と邪悪なワトソン役のコンビに期待が寄せられます。

どんでん返しの連続でヘトヘトになる


じつは読書進捗の60%あたりで、有能なる読者の疑念は『ある2名の登場人物』のどちらかに向けられると思います。おおよその犯人候補の目処がつくわけです。

しかし、どちらの人物も動機がはっきりしない。共犯関係にあるとも思えない。そもそもアリバイや密室などの状況を鑑みると、犯行が可能なようにも思えない。

そんなことを考えながら70%……80%と読んでいくうちに、いよいよ解答編に突入します。

犯人指名。やっぱりコイツだったか。ほらね、あのシーンのXXXはミスリードだった。そんな事だろうと思った。文章力や表現力は一丁前だけど、凡庸な推理小説だなあ、こりゃあ。

――などと、舐めてかかっていると1度目のどんでん返しに驚かされます。

とはいうものの、有能なる読者にとっては、それすらも想定の範囲内でしょう。でも、すぐに2度目のどんでん返しが発生するのです。

アッー! アッー! ずるいぞ! そんなオチ、びっくりした! アッー! でも……でも伏線あったわー。読み返したら、序盤や中盤に、真相に関係あること書いてあったわー。

という屈辱とも愉悦ともつかない複雑な感情を味わうことになります。まちがいなく。

娯楽性と批評性をあわせもつ良作


豚とミステリには無駄な部分なんてありません。耳はミミガーに、骨はスープに、ヒヅメすらも犬の餌になりえます。ミステリの場合も、直接・間接・偽装・陽動などを問わず、すべてがトリックや真相に関わってくるのです。

本書における事件の真相は『反則だけど、フェアである』と断言できます。妙な言い草ですが、本編中において合理的な説明が用意されています。

さらには、推理小説のとあるお約束に関する痛烈な揶揄(からかい)をも含んでおり、メタミステリ的な一面も併せ持っています。個人的には、その部分がいちばんのお気に入りです。

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)

「驚愕の真相」度
★★★★★(5)
「幻想的な表現」度
★★★★★(5)
「フグのように笑いたい」度
★★★★★(5)
「総合」
★★★★★(5)



著者について


犬子 蓮木さん(@sleeping_husky)。『いぬこ・はすき』と読みます。森博嗣が大好き。

本人インタビュー有り
【KDP最前線】感情って何だろう?私たちに問いかける物語「demi」を執筆した”犬子蓮木”さんにインタビュー | きんどるどうでしょう

あわせて読みたい


demi - spring and autumn -demi - spring and autumn - [Kindle版]
犬子 蓮木 (著)
出版: もふもふ出版; 3版 (2012/10/29)

demi - winter and summer -demi - winter and summer - [Kindle版]
犬子 蓮木 (著)
出版: もふもふ出版; 3版 (2012/10/28)


レビュー有り
「demi」~僕には感情がない。感情を欠落して生まれた彼の真の目的とは。 - つんどく速報(電子書籍の感想・レビュー)


あなたの一冊をレビューします


つんどく速報では、電子書籍のレビュー候補を受け付けています。
ご応募はこちらから。
おもしろい電子書籍を教えてください(自薦・他薦を問いません)

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット