こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。
・テーマは、企業城下町における特殊なカースト意識 (ヒント:T●Y●TA市)
・疎外という言葉の、もうひとつの意味について
・終盤には、電子書籍エピソードが登場 (ヒント:k●b●っぽい)
つんどく速報ライター☆イマガワです。
ざっくり言うと
・テーマは、企業城下町における特殊なカースト意識 (ヒント:T●Y●TA市)
・疎外という言葉の、もうひとつの意味について
・終盤には、電子書籍エピソードが登場 (ヒント:k●b●っぽい)
疎外 [Kindle版]
幻夜軌跡 (著), aroma arts (イラスト)
出版: のぎのぎ出版; 2版 (2013/12/12)
高校入学を機に高見透は、一嘉市にやってくる。そこは大企業シーラカンスの下で発展した街だった。
幼い頃から自分の町に居場所を感じなかった透は、何もかもが華やかで眩しい一嘉市に惹かれていく。しかしこの街に受け入れてもらうには、透がシーラカンスに取り込まれる必要があった。
自分の居場所を得るために、自分を捨てるという矛盾に透は迷う。
早妃と碧。二人の少女との出会いを通して、透は本当の居場所を探し始める。
※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。
書名が意味するもの
本書は、とある企業城下町の排他性を題材にして、連帯や絆の二面性を深く掘り下げてみせた青春小説です
県内有数の進学校、一嘉(いっか)高校。生徒たちの多くが、地域の中核産業であり国内有数のIT企業『シーラカンス』に勤める従業員たちの子息や令嬢です。
(元々は『挙母市』だったのに、とある企業の影響力によって自治体名が変わってしまった某愛知県にある某都市を思い浮かべてください)
地域最大の企業『シーラカンス』に縁故のある生徒たちを古魚組と呼び、それ以外の者たちは半ば自虐的に疎外組と称していました。
この地域では、従業員同士の連帯意識が強いため、両親あるいは親族が『シーラカンス』に勤めていなければ、よそ者扱いされるのです。
下克上を夢みて
主人公の高見透(たかみ・とおる)は、県内の僻地出身――つまり、疎外組です。両親の強い期待を一身に受けて、往復3時間かけて通学しています。
入学後の透は、もちまえの聡明さと立ち回りの巧さによって、古魚組の生徒たちとの距離を縮めることに成功します。
彼にとって幸運だったのは、同じクラスの笹森早妃(ささもり・さき)に気に入られたことでした。早妃の父親はシーラカンスの役員を務めており、地域の実力者です。
とくに早妃のほうが夢中であり、ふたりは親密な関係になっていきます。
透は、消極的ながらも早妃のコネを利用して古魚組(特権階級)へのさらなる浸透を図るのですが……。
そうは問屋が卸さない
小賢しく立ち回ったがゆえに……主人公の透は、一夜にして転落します。教室内カーストの6合目あたりから、真っ逆さまに。スクールカースト小説のお約束ですね。
超ラブラブだった早妃からも見放され、透は、学校内における居場所を失ってしまいます。古魚組から無視されるのは当然ですが、おなじ疎外組の生徒たちからも村八分にされます。
もはや校内では立場がないので、放課後になると逃げるように教室を立ち去るしかありませんでした。透は、現実逃避のつもりで、自宅の近くにある商店街でアルバイトをはじめます。
そこで、思いがけず再起するためのヒントを得るのですが――。
感想
スクールカーストどころか、地域全体にはびこる歪んだ連帯意識――個人では抗いようのない同調圧力が広域を蝕んでいる世界の物語です。
強い仲間意識や連帯意識のあるところ、かならず疎外されている者あり。疎外を生み出すことによって、他方では絆が強化される現実(システム)。
一嘉市においては、シーラカンスの従業員でなければ人間ではないという有様です。平家にあらずんば人にあらず、みたいな。
それって人間の正しい在り方なのだろうか? いっぽうで、古魚組ならではの事情や窮屈さだってある。激動の学校生活をとおして、主人公である高見透が自問自答を繰り返しています。
疎外という言葉は 嫌う・のけものにする とは別の意味をもっています。心理小説や教養小説(ビルドゥングスロマン)といえるほど正統ではありませんが、本書は、なかなか読みごたえのある作品でした。
Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)
- 疎外
- 著者:幻夜軌跡 イラスト:aroma arts
- 価格:200円
- 読了にかかる時間:約3時間(個人差があります)
- 「表紙の完成」度
- ★★★★★(5)
- 「構成」力
- ★★★☆☆(3)
- 「満足」度
- ★★★★☆(4)
- 「総合」
- ★★★★☆(4)
著者について
幻夜軌跡さん(@Osefly)。『まぼやのきせき』と読みます。1984年東京生まれ。
大学在学中から小説のことを考えて書き続けてきたという、筋金入りの書き手です。Kindleストアが開始して以来、2013年12月現在、すでに7冊の長短編を発表しています。(参照リンク)
aroma artsさん。表紙や挿絵など、印象的なイラストを担当。公式ウェブサイト→ aroma arts.net
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