こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。

ざっくり言うと


・落ちぶれた天才シェフと若き女シェフの師弟愛
・一流レストランの料理長にするべく、愛と涙のトレーニングデイズ
・王道かつ正統派、詩情すらただよう。良質なグルメ小説

メインディッシュはあなたにメインディッシュはあなたに [Kindle版]
朱郷慶彦 (著), 南雲祐紀子 (イラスト)
出版: 双眼文庫; 2版 (2013/12/12)

かつては天才の名をほしいままにしていた加山恭一は、今では落ちぶれたアル中の中年男だ。

ある時、ひょんなことから知り合った若い女料理人、中条有美が押しかけてきて、強引に弟子入りしてくる。

奇しくも師弟となった、落ちぶれた元天才料理人と若い女性料理人が、タッグを組んでフランス三ツ星店のシェフを決めるオーディションに挑む時、誰も予測ができない事件が起こった!

急展開に目が離せない、恋愛&グルメ&ミステリー小説の幕が上がる!

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。

生ごみ置き場で出会ったふたり


中条有美(なかじょう・ゆみ)。25歳。フランス料理店の女性シェフです。ランチタイム用の弁当係を任されていますが、肝心の中身はイマイチ評判が良くありません。

いつものように売れ残った弁当をゴミ置き場へ捨てに行くと――残飯をあさっているホームレス風の中年男性に出くわします。

有美「おじさん。そんなごみ、捨てちゃいなよ。代わりにこのお弁当を全部持って帰っていいから」

男性「いや、その弁当なら、もう食べたことがある。(中略)お気持ちは有り難いけど、俺はこっちの生ごみの方を頂いておくとしよう」

そう言って、お目当ての生ごみをビニール袋いっぱいに詰めこんで、山岡士郎 ホームレス風の男性は立ち去っていきます。

>生ごみの方を頂いておくとしよう
>生ごみの方を頂いておくとしよう
>生ごみの方を頂いておくとしよう

自分の料理を全否定されてしまった、若手シェフの有美。ふと、気づきます。免許証が落ちているのを。氏名欄を見ると――。

元・天才料理人 加山恭一


49歳。職業・アルコール依存症。金欠になると、一流レストランの生ごみを漁りに出かけては、高級な肉や野菜の切れ端を自炊の材料にしていました。

加山は、かつて天才シェフとして、本場フランスの三つ星レストランで料理長を務めたこともある人物です。しかし、ある事件がきっかけで店を潰してしまったあと落ちぶれてしまい、いまは場末のアパートでひっそり暮らしていました。

「ね、お願い。私をあなたの弟子にして。いえ、弟子にして下さい。お願いしますっ」

免許証を拾った有美は、居場所を突き止めて押しかけます。加山のアパートに。そして、いきなり土下座します。

弟子にして下さい。お願いしますっ

突然の申し入れに、元・天才シェフの加山は、いちど断ります。

しかし、有美の尋常ではない熱意と、1日につきウィスキー1瓶という、アル中にとってみれば破格のギャラ提示を受けて。ついに、指導を引き受けることになります。

その翌日から、かつて天才とうたわれた伝説の料理人と、若き女性料理人の特訓がはじまるのです。

最高のシェフは、恋をしたシェフ


当初は、酒代を目当てに引き受けたものの、有美の才能には目をみはるものがありました。特訓を重ねていくうちに――49歳の加山は、25歳の若き女性シェフに年甲斐もなく心を寄せていきます。

しかし、当の女性シェフには、ミュージシャン志望の彼氏がいました。
オッサン(´・ω・)カワイソス……

読みたくないかもしれませんが、もうすぐ50を迎えようというオッサンが、若い女弟子の内面に憶測を巡らせながら、ああしよう・こうしよう・どうしようと葛藤と煩悶を繰り返す心理描写パートは爆笑 圧巻です。あ、田山花袋だ!

とにかく。指導する者として、恋するオッサンとして。天才料理人としての矜持とスケベ心のはざまで身悶えしながら――。加山恭一は、有美がさらに活躍できる職場を用意するべく奔走するのです。

決戦は、新料理長オーディション


あらすじ、終わり。こんな感じです。面白かったなっしー! 梨汁ブシャーッ!

ちなみに、この小説のクライマックスは、東京での新店オープンを見越した本場の三ツ星レストランが開催するオーディションです。

超一流レストランの新しき料理長の座をめぐって、女シェフ・中条有美をはじめとする選りすぐりの料理人たちが腕を競い合います。思いがけない策謀や愛憎劇が展開されるので、読んでいて退屈しないはずです。

オーディションには、天才シェフだった加山が落ちぶれるきっかけをつくった、深い因縁のある人物も参加しています。しかも女がらみです。N・T・R!

さらに

わたくしごとで恐縮ですが『美味しんぼ』や『王様のレストラン』が好きなものでして、なおさら楽しめました。

たとえば、元・天才料理人である加山恭一の嗜好が、ことごとく東西新聞社の某グータラ社員なのでニヤニヤせざるを得ません。

フランス料理ではよく生牡蠣と白ワイン、特にシャブリのグラン・クリュあたりを合わせるのが好まれる。俺に言わせりゃ、あんな組み合わせは、牡蠣の生臭さを際立たせるだけだ。

生牡蠣には辛口の日本酒以上に合う酒はないというのが俺の持論だ。昔、フランス人の料理人に生牡蠣と大吟醸の冷酒の組み合わせを試させてみたら、あまりの美味しさに言葉もでなかったよ。

この他にも、いわゆる京極メソッドも登場します。この言い回しは『美味しんぼ』をよく知らない人にはネタバレになりませんよね?

長く現場を離れていた伝説の男&才能はあるけれど自覚がない若き女シェフ。なんども衝突していくうちに、ふたりは惹かれ合っていく……。

この関係性は『王様のレストラン』における松本幸四郎と山口智子を彷彿とさせて、三谷幸喜ドラマ好きのツボに入りまくっておもわず梨汁ブシャーッ!ブシャーッ!って感じで、ラストまでハイテンションで読み進めることが出来ました。

自信をもってオススメできる小説です。

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)

「グルメ小説」度
★★★★★(5)
「名セリフ多い」度
★★★★★(5)
「満足」度
★★★★★(5)
「総合」
★★★★★(5)



著者について


朱郷慶彦さん(@ShugoYoshihiko)。『しゅごう・よしひこ』と読みます。1966年東京生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。現在、シナリオセンター作家集団に所属。


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