こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。

ざっくり言うと


・ホラーやSFジャンルの7作品を収録
・荒削りだけど、青田買いしておきたい個人作家
・イジメっ子をブチ殺すためにスイング練習する話が秀逸

端編集1端編集1 [Kindle版]
網葉きよら (著)
出版: 檸檬Library; 1版 (2014/1/4)

現代のゆがみに生じるありとあらゆる題材を取り上げ、網葉風にガツガツかみ砕いた短編7本。

ごゆっくり味わいながらお楽しみ下さい。

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。

奇想と偏執が織りなす


端編集(たんぺんしゅう)』と読みます。名前のとおり、7つの短編を1冊にまとめたものです。

収録作のなかにオーソドックスなものは1つもありません。すべて、奇想や偏執にもとづいた物語ばかりです。

各短編のあらすじ


A.嘔吐した機械部品を組み立てたらどうなるか
B.イジメッ子に復讐するため野球をはじめる
C.部屋にわいた虫を退治するために虫を飼う
D.銃所持が解禁されているアマゾネスな日本
E.家族の言葉が理解できなくなった少年Aの凶行
F.もしも田舎に都会が突然降ってきたら
G.ひたすら理不尽な拷問がもたらす平和

7つの収録作をそれぞれ要約すると、こんな感じ。奇想にもとづいているので、なるべく理解しやすい作品から読むことをオススメします。推奨順は━━

B.ほんの些細なスイング
C.普遍的世界におけるたった一つの例
D.町内の三人
F.コキョウ
E.春を思う期節
A.プラスチックムーン
G.堺目市英緒町十-十-二

食前酒がわりの『ほんの些細なスイング』は、奇想というよりも良質なショートショートです。星新一ではなくて阿刀田高寄りなので、SFが苦手な人でも抵抗感すくないと思います。ちょっとイイ話です。

ほんの些細なスイング


イジメられっ子の小学生が、5人のイジメっ子を殴り殺すために、バットのスイング練習を始めます。毎日、何百回とスイングしているうちに、地元の少年野球チームに誘われます。

中学でも野球部に入るのですが、なおもイジメっ子をバットで殴り殺すことを忘れておらず、高校進学後には甲子園に出場。通算75ホームランを達成。

イジメられっ子の少年にとっては、カネも名誉も関係ありません。ひたすらボールをイジメっ子たちの顔に見立てて、いつか恨みを晴らそうとバットを振り続けた結果……。

要するに、フォレスト・ガンプっぽいノリですね。偏執的な殺意が、少年に明るい未来にもたらす。そんな不思議なめぐりあわせを描いています。

この奇想は、体験する価値あり


2番目に挙げた『普遍的世界におけるたった一つの例』は、すこし難易度があがります。汚部屋の住人が、どこからか湧いた害虫を退治するために天敵である新たな害虫を飼いはじめる、というストーリーです。

そして、3作目の『町内の三人』から、やや難解さが目立ちはじめます。前2作においてウォーミングアップは済んでいるので、きっとスムーズに読めるでしょう。

ただし。ところどころ誰がしゃべっているのか、あるいは、何がどのようになっているのか不明瞭な部分が見受けられます。

要は描写が足りないわけですが、けっして実力不足のせいではありません。単に、書き込まれていないだけです。そのあたりは大目に見ていただき、ぜひ手にとって読んでみてください。将来有望な書き手です。

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)

  • 端編集1
  • 著者:網葉きよら
  • 価格:250円
  • 読了にかかる時間:約2時間(個人差があります)
「奇想」度
★★★★☆(4)
「完成」度
★★★☆☆(3)
「満足」度
★★★★☆(4)
「総合」
★★★☆☆(3)



著者について


網葉きよらさん。『あみば・きよら』と読みます。ゲームセンター店員、工事現場作業などを経てホームレス生活を1年間つづけたのち小説を書き始める。小説家の三島由紀夫、棋士の谷川浩司九段に影響を受けた。


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