こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。

ざっくり言うと


・メタフィクション! メタライトノベル!
・魔法文明/異世界転移ファンタジー長編
・ここ最近におけるHJ文庫大賞奨励賞作品っぽいノリ

メタっ娘メタっ娘 [Kindle版]
佐々木直也 (著)
出版: disolo inc.; β(ver 0.05)版 (2013/12/30)

【芽以子(めいこ)】 えー……主人公の葛木芽以子です。 このラノベは、落選に落選を重ねた作者が往生際悪く自分で売り始めたどうしようもなくつまらない──

【作者】 ちょ!? ちょっと芽以子サン!!?あんた何いってんですか!?
【芽以子】 ナニって。ラノベとやらの紹介でしょ?

【作者】 買ってもらうための紹介で、どうしてダメ出してるんですかと聞いてるんです!!
【芽以子】 ダメ出しも何も、本当のことじゃない。

【作者】 そ、それはそうですが……でも、それを今ここでいう必要まったくないですよね!?
【芽以子】 読者に正確な情報を伝えないと詐欺になるでしょーが。

【作者】 いやそんな大げさな……。た、たしかにぼくはいくつかの新人賞で落選はしましたが、そもそもラノベの──
【芽以子】 過去に相当落ちたって聞いてるけど?

【作者】 ──そもそも! ラノベの面白さというのは人それぞれで、これを杓子定規でたった1作しか選ばれないという仕組みそのものにぼかァ問題提起を──

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。

野心的なセルフパブリッシング小説


メタフィクションとしてのライトノベル━━メタ・ラノベ。ライトノベルにまつわる考察や言及を含むライトノベルです。

本書『メタっ娘』の主人公である芽以子(めいこ)は、自分が虚構内存在(ラノベヒロイン)であることを認識しています。

この手法は━━30年ほど前に筒井康隆が発表した『虚人たち』を彷彿とさせます。(当該作は、のちに泉鏡花文学賞

虚人たち』の場合、すべての登場人物が虚構内存在であるという自覚を持っています。ほかにも、原稿用紙1枚を虚構内時間1分と定めることで意識の流れを表現したりと、さまざまな実験的手法が採用されていました。

ご安心を。本書『メタっ娘』では、虚構内存在であることを自覚しているのはヒロインである芽以子のみです。小難しい設定はそれだけなので、ややこしさは皆無であり、読みごこちは通常のライトノベルと変わりありません。

あらすじ


物語冒頭。芽以子は、作者の佐々木直也から話しかけられます。書きまちがいではありません。この作品においては、作者も登場人物のひとりなのです。

「アナタはいったい誰なの!?」

──あぁもう。こっちも仕事ですんで、描写する間は待っててくださいってば。

「知らないわよそんなこと!」

 まぁいいです。さて芽以子さん、自己紹介といきましょうか。ぼくは『作者』です。

「は?」

 そうですねぇ。単刀直入にいいますと、芽以子さんはライトノベルの中に入っちゃったんです。ちなみにジャンルはファンタジーものです。

地の文(説明や描写部分)が、作者のセリフです。ラノベにおける『あとがき』のノリを、本編でやっちゃってます。

で、このあと。女子高生の芽以子は、異世界で目を覚まします。そして、魔法王国の王女であるティアラに求愛され、勇者として迎えられるのです。

登場人物としての作者・佐々木直也は、ガチ百合シチュエーションを好み、全編において同性愛的な匂いが横溢しています。いわゆる「キャッキャウフフ」ってやつです。

感想


本書のタイトルは『メタっ娘』です。読むまでは『メタフィクション』のメタであるとは露とも思っておらず、まさかKDP発のライトノベルにおいて、このような挑戦的な作品に出会えるとは思ってもいませんでした。

今回のレビューでは、本書におけるメタ要素をおもに取り上げました。しかしながら、異世界ファンタジー(魔法文明もの)小説として、すくなくとも及第点周辺に達している内容です。

メタ要素を提示→通常のラノベ展開→終盤においてメタラノベならではのイベント発生……と、こんな感じ。

本書は、エンタメ的な満足感よりも、実験的な小説の醍醐味が勝っている作品でありました。個人的に、こういう作者は応援したくなります。

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)

  • メタっ娘
  • 著者:佐々木直也
  • 価格:525円
  • 読了にかかる時間:約2.5時間(個人差があります)
「前衛ラノベ」度
★★★★★(5)
「読みやすさ」度
★★★★☆(4)
「満足」度
★★★★☆(4)
「総合」
★★★★☆(4)



著者について


佐々木直也さん(@n_sasaki1)。『ささき・なおや』と読みます。埼玉県出身、東京都在住。職業はWebデザイナー。『スレイヤーズ』がきっかけでライトノベル作家を目指す。

あわせて読みたい


暴女桜子さんはラノベの読みすぎです(一) (佐々木家は順調に病み続けます)暴女桜子さんはラノベの読みすぎです(一) (佐々木家は順調に病み続けます) [Kindle版]
じんたね (著)
出版: 株式会社ディスカス; 1版 (2013/5/14)

・レビュー有り
誰かにネタバレしたくなるほど面白いハーレムラノベ『暴女桜子さんはラノベの読みすぎです (佐々木家は順調に病み続けます) 』

虚構内存在――筒井康隆と〈新しい《生》の次元〉虚構内存在――筒井康隆と〈新しい《生》の次元〉 [単行本]
藤田 直哉 (著)
出版: 作品社 (2013/1/31)



あなたの一冊をレビューします


つんどく速報では、電子書籍のレビュー候補を受け付けています。
ご応募はこちらから。
おもしろい電子書籍を教えてください(自薦・他薦を問いません)

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット