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つんどく速報ライター☆イマガワです。

占星術殺人事件の装画


占星術殺人事件 (講談社文庫)

担当したのは、不二本蒼生さん。今回ご紹介するのは、知る人ぞ知るイラストレーターの自叙伝です。

絵空迷宮~不二本蒼生の回想記
不二本蒼生
出版: コヅチカンパニー (2013/11/23)


澁澤龍彦、高橋克彦、志茂田景樹をはじめ、スティーヴン・キングやクライヴ・バーカーなど、国内外著名作家の表紙イラストレーションや挿絵等で知られる、怪奇と幻想の異色イラストレーター、不二本蒼生。

その半生と創作の秘密、そして昭和から平成にかけての日本イラストレーション業界の裏面史を語る! 60年代、70年代サブカルチャーに興味を持つ人必読!!

(本書は、「不二本蒼生Aoi Fujimoto’s blog!」連載の自伝に書き下しの章を加えたものです。)

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。


著者について


不二本蒼生さん(@aoifujimoto)。『ふじもと・あおい』と読みます。イラストレーター、画家。

1947年生まれ、石川県出身。地元の工業高校を卒業後、東京藝術大学を受験しましたが不合格になります。しかし、地元に帰りたくないので、そのまま阿佐ヶ谷美術学園(現・阿佐ヶ谷美術専門学校)に入学。

この挫折経験が、40年以上におよぶフリーランス生活に強度を与えています。

すこし解説


占星術殺人事件』━━島田荘司のデビュー作にして、本格ミステリの傑作です。ファンはもちろんのこと、本が好きな人であれば一度は目にしたことがあるはず。

いまでこそ有名ですが、1981年の発表当時において文壇から無視されていました。不二本さんは『占星術〜』だけでなく、以降に発表された『斜め屋敷の犯罪』や『死体が飲んだ水(死者が飲む水)』の表紙イラストレーションも担当しています。

じつは偶然に発見しました。ふと再読しようと手元にあった文庫版『占星術〜』の巻末解説を眺めていたら『藤本蒼猪』という名前が目につきました。改名前のペンネームです。

見慣れていた書物のなかに不二本さんの名残を再発見して━━自伝である本書『絵空迷宮』のなかでは言及されていなかったものですから、たいへん驚きました。

ほかにも様々な有名作家たちを


筒井康隆『時をかける少女』。無数のバージョンが存在しますが、なかでも角川文庫における初版カバーは不二本さんの仕事です。(原田知世主演の映画は、この7年後)

1976tutui

不二本蒼生の主なイラスト作品リストから引用)

ほかにも━━澁澤龍彦、志茂田景樹の作品多数、山上たつひこ『喜劇思想体系』(秋田書店版)、サンリオSF文庫の数作品、クライヴ・バーカー『血の本』シリーズなども担当しています。

反面教師、挫折、出会い、難病


本書『絵空迷宮~不二本蒼生の回想記』は、自叙伝です。幼少〜少年期における地元の伝統的雰囲気に対する違和感、両親との齟齬。青年期における挫折や下積み経験。同棲、結婚、30代のときに見舞われた難病。

それらを経て。不二本さんは、仕事をしながら家族を見守ることのできるフリーランスという生き方を選択します。本書においても、たびたび、家族に対して愛情や感謝の気持ちをくりかえし綴っています。

作風から連想するのは、芸術家肌のとっつきにくいイメージかもしれません。しかし、ご本人はとても謙虚な人柄で、注文に応じて様々な絵柄を使い分けたり、早期からデジタルを導入するなど、柔軟な姿勢を備えています。

個人的には、故・澁澤龍彦さんとのやりとりを興味ぶかく読みました。後世、日本の出版爛熟期における貴重な資料として扱われる1冊だと思います。

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)

「読みごたえ」度
★★★★☆(4)
「貴重な資料」度
★★★★★(5)
「満足」度
★★★★☆(4)
「総合」
★★★★☆(4)



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