こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。

ざっくり言うと


・三十路サラリーマンの自分探し
・酒場で育まれる友情
・『かもめのジョナサン』ネタを含む

やり過ごす日々のポートレイト
藤沢裕之(@fujisawahi)
出版: 然書房; 2版 (2013/2/4)


“優しさを隠して生きる全ての大人に贈る物語”

<作品紹介>
東京に暮らすごく普通のサラリーマンの僕。彼は、とある立ち飲み屋で、不思議な雰囲気をもつ男性ジョナさんと知り合いになる。

すこし冷めた僕と、謎の多いジョナさん、そして大好きなお酒。奇妙に交差する、二人の帰るべき場所“ホーム”探しの日々。

これはジョナさんの重い過去と、これからの僕のやり過ごす日々を綴ったポートレイト。

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。


悩みがないのが悩み


31歳のサラリーマン。都内の大企業に勤めており、同期のなかではいちばんの出世頭━━なのに、毎日がつまらないと言う。

仕事は順調で、結婚を前提につきあっている恋人もいる。まるで、人生がイージーモードすぎて困る、とでも言わんばかり。男の名前は、山口祐介です。

要領が良すぎるせいなのか、どうしても世間や他人のことを冷めた目でとらえてしまう。祐介には友人がいません。

毎日をやり過ごすようにして業務を終えたあと、ひとりで、客の少ない酒場に立ち寄る。彼の唯一ともいえる楽しみでした。

酒場のジョナさん


祐介のお目当ては、ジョナさんという常連客の四十男です。

職業不詳。どんな仕事で稼いでいるのかはわからない。でも、毎晩飲みに来れる程度には懐に余裕がある様子。

海外小説『かもめのジョナサン』が好きだというので、祐介のほうからジョナさんと呼ぶようになりました。

酒場だけの付き合いという気楽さも手伝って、友人のいない祐介は、ジョナさんとたわいもない話することを目当てに通うようになります。

しまいには、恋人とのデート回数を減らしてまで、ジョナさんとの酒盛りを優先しはじめます。あるとき、浮気を疑われて詰問されるのですが━━正直に話せばいいのに、なぜかジョナさんのことを隠します。(もちろん、純然たる男の友情です)

酒場のジョナさん。働いている様子はなく、引退するには若すぎる。祐介にとっては、あたかも身ぎれいなヒッピーのごとき印象でした。

絶望と怒り


じつは。それこそが、ジョナさんが現在進行形で抱えている心境です。酒場でいつも飲んだくれている四十男は、いまもなお、壮絶な過去にとらわれていました。

祐介と出会う、数年前。ジョナさんは、最愛の妻を失っています。

ある忌まわしい犯罪に巻き込まれたことがきっかけで、ジョナさんは世捨て人のような暮らしをはじめました。

亡き妻の無念を晴らすために、会社を辞めて、いまだ手がかりすらつかめない犯人を追い続けているのです。

感想


ストーリーは明快であり、文章も読みやすい。つかみきれないのが、主人公の心情です。

奥さんを殺されてしまったジョナさんの行動や心境の変化は、とてもわかりやすいですし、被害者遺族の抱える問題がよく伝わってきました。

一方の祐介については、読者として反感を抱くほどではないのですが「何言っているのか、意味わかんない」と思ってしまう箇所がいくつもありました。

それこそが、ありあわせの道徳や社会通念にとらわれず、なおも思考停止せずに理想を追い求める存在━━『かもめのジョナサン』に通じているようにも受け取れます。

深い意味があるのかもしれないし、ないのかもしれない。いずれにせよ、読み解き甲斐のある作品です。

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)


「酒場」度
★★★★☆(4)
「ポエム」度
★★★★☆(4)
「満足」度
★★★★☆(4)
「総合」
★★★★☆(4)



著者について


藤沢裕之さん(@fujisawahi)。『ふじさわ・ひろゆき』と読みます。小説や詩を書きながら、サラリーマンをしている。


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