こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。

ざっくり言うと


・海上自衛隊OBが書いたミリタリー小説作品集
・ゆき子という少女が米国の原子力空母を乗っ取る
・女性自衛官だらけのハーレム離島基地

ネイビークライシス 海上自衛隊物語ネイビークライシス 海上自衛隊物語 [Kindle版]
甲斐しげる (著)
出版: 猫飯堂 (2014/1/19)

グァム沖で米海軍のイージス艦が火災をおこした。

火災は、とある少女が引き起こしたものだったのだ。
救難活動にむかう海上自衛隊の護衛艦きくかぜ。パニック状態の艦内から、堤吾郎が持ち帰った古ぼけた一枚のフロッピーディスクをきっかけに、やがて事態の全貌が明るみになっていく。

女性自衛官のお嬢こと永井圭子や、きくかぜの面白おかしい個性的な面々が織りなすミステリーと青春とらんちき騒ぎ(?)の日々を描いた「ネイビークライシス」はじめ、泣いて笑える中短編集です。

収録作品
「ネイビークライシス」
「いつか正義のみかたになる日まで」
「見知らぬ少女があたしを迎えにやってくる」
「瑠璃色大和撫子」
「ショートショート集(計三本の掌編)」

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。

陸海空コンプリート!


イヤッッホォォォオオォオウ!!!!
ついに、陸上・海上・航空それぞれの自衛隊出身者が、KDP(キンドル・ダイレクト・パブリッシング)において出揃いました。

元・陸上自衛官である廣川ヒロトさんは『自衛隊のごはん』シリーズを。元・航空自衛官(幹部)である数多久遠さんは『黎明の笛』を。

そして今回、元・海上自衛官の甲斐しげるさんが『ネイビークライシス』という、ユニークかつ意欲的な作品集を引っさげて颯爽と登場しました。

 表題作の「ネイビークライシス」は、実は二十年以上前に書いたものです。

 当時アジトにしていたPC-VANというパソコン通信で、僕はうさぎ猫の筆名で小説をちまちま書いてはアップロードするという日々をおくっていました。その作品のなかで最も思い入れが強いのがネイビークライシス、略してネクラです。

 感想も上々でした。「艦内描写が凄い」とか「自衛官の生活がリアル」とかいったものが特に多かったように記憶しています。

 そりゃあ、そうでしょう(笑)

 色々と思うところがあって、ひた隠しにしていたのですが、当時の僕は現役の海上自衛官でしたから(爆)

ネイビークライシス 海上自衛隊物語』あとがき

20年前・PC-VAN・海自現役時代に発表していた━━これだけでワクワクします。肝心の小説もバリエーションに富んでおり、心が弾む内容です。ご紹介しましょう。

たった1人で原子力空母を制圧


表題作である『ネイビークライシス』は、ひとりの日本人が実行したアメリカ第七艦隊空母制圧事件の顛末を書いたものです。海自の本拠地である広島県呉市を舞台にして、ある機関科員の視点で語られています。

あらすじ。幹部自衛官の父親を憎んでいた男が、ある出来事がきっかけで愛国心に目覚め、持ち前の天才的なクラッキング技術を駆使したのち、コンピューター・ウィルスを使って日米を巻きこむテロ計画を実行━━というストーリーです。

コンピューターウィルスを擬人化して描いており、その『ゆき子』という少女に擬したプログラムが大暴れします。さすが海自OBというだけあって、艦内描写や自衛官同士のやりとりにはリアリティがあります。

ただし、作中で起きるイベントはファンタジーです。著者の力量不足……ではなくて、わざと絵空事っぽくしているのだと思います。きっと。たぶん。おそらく。

なぜなら、現役自衛官時代に書いたものですから、物議をかもしかねない日本の自衛隊をネタにした第三次世界大戦勃発シミュレーションを、当時は書けなかったのでしょう。
ほんのすこしだけ『亡国のイージス』や『終戦のローレライ』を彷彿とさせました。(執筆時期は『ネクラ』のほうが早い!)

ちなみに、表題作『ネイビークライシス』は短編小説であり、すわ戦争勃発か━━というところで物語が終わります。そんな殺生な!

20年前に書かれたものなので、リライトするには限界があったのかもしれません。しかしながら、新たな長編作品のタネとして有望であり、とても魅力的な題材に思えました。

アマゾネス顔負けの女性自衛官たち


おもしろかったです。良い時間を過ごすことができました。

ちなみに。短編小説『ネイビークライシス』は、自衛隊にまつわるマスコミ報道および有権者批判が色濃い内容です。こういうのも嫌いではないのですが、『ネクラ』以外の話のほうに、奥行きやミリタリー系ジャンル小説としての新規性を感じました。

たとえば。収録作『瑠璃色大和撫子』は、女性自衛官が実効支配している離島基地のお話です。萌えやお色気一辺倒の内容ではなく、精神的に自立した女性たちをクローズアップしています。このシリーズ、もっと読みたい。

ところで。20年前に書いた作品の供養(!?)を無事に済ませた著者は、さっそく新作を準備しているご様子。


今回ご紹介した『ネイビークライシス 海上自衛隊物語』が良いウォーミングアップになったようですね。次回作を心待ちにしています。

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)


「艦内リアリティ」度
★★★★★(5)
「エンタメ」度
★★★★☆(4)
「満足」度
★★★★☆(4)
「総合」
★★★★☆(4)



著者について


甲斐しげるさん(@SigeruKai)。『かい・しげる』と読みます。元海上自衛官。本業は民間のセキュリティ会社社員。現在は広島の実家にて執筆活動。


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