こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。

ざっくり言うと


・女子高生が、みずからの出生に疑念をいだく。
・知ってしまう。母と担任教師をむすぶ因縁を。
・正統派のジュブナイル(ヤングアダルト小説)

ミリオン・クレイン 染谷千鶴の果てしなく続く物語ミリオン・クレイン 染谷千鶴の果てしなく続く物語 [Kindle版]
花笠 香菜 (著)

あたし、染谷千鶴。17歳。元気と明るさとピアノが取り柄の高校2年生。

担任の藤崎先生は着任早々女子の間でファンクラブができるくらいの人気っぷりだけど、あたしを勝手に学級委員に指名したかと思えば無理難題をふっかけてくるわ数々の雑用を押しつけるわで、もうほんと迷惑もいいところ。

この一年間どうなっちゃうんだろう……と思いつつも、2年3組の中で起きた様々な事件や出来事を経て、あたしと先生は知らず知らずのうちに距離を縮めていく。
そして、思いもよらない展開と結末が、あたしを待ち受けていた。

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。

あらすじ


女子高生の千鶴は、進級後のクラス替えで友人たちと離れ離れになった。このままでは教室で孤立してしまう。
しかし。担任教師のはからいによって、学級「副」委員長を拝命する。なかば強制的な指名だった。

はじめ千鶴はイヤがるものの、それは教育者としてのさりげないフォローであった。

もともと張り切り屋で面倒見の良い性格だったことが功を奏した。合唱コンクールなどの学年行事を通して━━千鶴は、2年3組のクラスメイトたちと友情を育んでいく。

あるとき。千鶴は、ロックバンド『アスセナ・リエラ・コンテスティ』を知る。

彼らの熱烈なファンであるクラスメイトに誘われてライブに参加したのだが━━その1週間後に、ギタリストが交通事故死してしまう。

思いもかけなかった事実が発覚する。
じつは。千鶴の担任である藤崎透と亡くなったギタリストは━━大人気ロックバンド『アスセナ~』の前進であるアマチュアバンド『 ホワイト・リリー』時代の仲間だった。

さらに。亡くなったギタリストと過去に関わりがあったのは、担任の藤崎だけではない。

この事件をきっかけにして、千鶴は知ってしまう。
自分の母と担任の藤崎のあいだに、なにやら隠しておきたい、後ろめたい因縁があることを……。

「先生は、『叶わぬ恋』ってしたことあるんですか」

 誰もいないステージを見つめながら、あたしは先生に尋ねてみた。


千鶴の母は音楽留学中、父はアメリカ赴任中。両親は、奔放で放任主義だ。

千鶴は独り暮らしをしており、相談をできるような相手がいないまま……。
留守中の母の部屋から、担任教師との関係性を裏付ける物証を見つけてしまった千鶴は、いよいよ自分の出生に疑いをもちはじめる。

スクールカーストが無い世界観


本書『ミリオン・クレイン 染谷千鶴の果てしなく続く物語』は、正統派のジュブナイルであり、良質なヤングアダルト小説です。中高生の頃に、こういうのを1冊くらいは読んでおきたい。
書き慣れているので文章は読みやすく、商業出版のラインナップにあっても不自然ではないでしょう。

クラス替えを経たのち、1年生のときに構築した交遊関係(ライフライン)が強制リセットされてしまう設定は、現代であればイジメやスクールカースト方面にストーリーが傾いていきがちです。

しかし、著者はまったく違った方向に舵をきってみせます。

主人公の染谷千鶴は、地に足がついた性根の持ち主であり、教師やクラスメイトたちも心のまっすぐな人物たちなので、読んでいて清々しいです。

感想


思春期を通過する少女の心情を描くとともに、親や教師たちの過去(青春や挫折)にも重点を置いています。

考えてもみれば━━お母さんやお父さん、学校の先生にだって若いころがあり、熱烈な恋をして過ごしたことがあったかもしれない。誰にだって、若者だった時代があったのです。

そんな人生の先達たちがあえて語らないでいることを「知らずにはいられなくなった」少女が、親や担任教師たちの過去を遡って探求していくという、なかなか手の込んだ物語です。

表紙の印象では、教師との禁断の恋愛みたいな話かなーと思っていたのですが……エッチな出来事は一切ありませんでした。
むしろ、担任の藤崎透は教育者の鑑(かがみ)です。生徒である千鶴をそういう対象とは見なしていません。

いたずらにドラマチックにすることなく、読んでいて退屈することもない。本書は、ストーリーラインや登場人物たちのふるまいが美しい━━正統派のジュブナイル小説です。

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)


「中高生向け」度
★★★★☆(4)
「みんな、いいやつ」度
★★★★☆(4)
「満足」度
★★★★☆(4)
「総合」
★★★★☆(4)


著者について


花笠香菜さん(@KanaHANAGASA)。『はながさ・かな』と読みます。1982年兵庫県生まれ。筑波大学第一学群 社会学類卒業。

あなたの一冊をレビューします


つんどく速報では、電子書籍のレビュー候補を受け付けています。
ご応募はこちらから。
おもしろい電子書籍を教えてください(自薦・他薦を問いません)

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット