こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。

ざっくり言うと


・読み切りマンガ3編+アルファを収録
・それぞれの物語に共通するカルマとは?
・周到かつ重層的かつ野心的なオムニバスシリーズ

第1巻
春夏秋冬オクテット(春夏): やまなしレイ漫画短編集春夏秋冬オクテット(春夏): やまなしレイ漫画短編集 [Kindle版]
やまなしレイ (著)
出版: やまなしレイ; 1版 (2014/5/9)

「奏子ちゃん、キミは答えられるかい? 『キミが犯した“罪”とは何だ?』」

世界には色々な人間がいて、それぞれが“罪”を背負って生きている。

8本の短編漫画という形でそれを描く短編集で、この1巻には『shine』『shining』『エロ本を買いにいこう!』『アタシハ許サレマスカ』の4本を収録。

※下記プレビューはPC向けです。

オムニバスまんが


本書『春夏秋冬オクテット(春夏)』は、のどかな表紙とは裏腹に、野心的なテーマと仕掛けを擁している作品集です。

オクテット(8人組)のシリーズ名があらわすとおり。『春夏(4編)』『秋(2編)』『冬(2編)』━━合計8編の構成。すでにシリーズは完結しています。

第2巻
春夏秋冬オクテット(秋): やまなしレイ漫画短編集春夏秋冬オクテット(秋): やまなしレイ漫画短編集 [Kindle版]
やまなしレイ (著)
出版: やまなしレイ; 1版 (2014/5/9)


第3巻(シリーズ完結)
春夏秋冬オクテット(冬): やまなしレイ漫画短編集春夏秋冬オクテット(冬): やまなしレイ漫画短編集 [Kindle版]
やまなしレイ (著)
出版: やまなしレイ; 1版 (2014/5/9)

全3巻のうち、本書は第1巻です。
表紙を含めて、134ページ。現代もの、剣と魔法のファンタジーもの、等。計4編の短編まんがを収録しています。

春夏秋冬オクテット』シリーズは、読み切りマンガを無造作に集めただけの作品集ではありません。

世界観や登場人物は異なるものの、或るひとつのカルマ(宿業)に囚われた者たちを扱っています。特定のコンセプトに基づく作品集━━オムニバスです。

それでは、本書『春夏秋冬オクテット(春夏)』の収録作を紹介していきます。



※『見出し』は、短編マンガのタイトルです

『shine』


剣と魔法のファンタジー世界における、40歳以上離れている年の差カップル道中記です。

発明好きで行商人のオッサンである『ムハイル・シュタルベルト』が、なりゆきで人助けをします。

研究所から逃げ出してきたという美少女『シャイン』は、ある理由によって追われているという。もしも連れ戻されてしまえば、ふたたび過酷な生活を強いられることを聞かされたオッサンは━━美少女のために身を挺する決意を固めます。

昼行灯みたいなオッサンが、じつは頭もキレてメチャクチャ強かった……という展開は読んでいて気分が燃えあがります。身寄りのない少女でなくても惚れるレベル。

ただし……このオッサンは、疑わしい嗜好の持ち主です。

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春夏秋冬オクテット(春夏)』から引用。以下おなじ

野暮なツッコミはさておき。コメディとシリアスのバランスが絶妙であり、飽きさせないよう、常に読者の心に揺さぶりをかけてくる一編です。

『エロ本を買いにいこう!』


親しい少年たちの代わりに━━エロ本を買いに行くことを安請け合いしてしまったお人好しの女子高生が奮闘する物語です。

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考えようによっては『D・V・D!! D・V・D!!』を連想しかねない状況ですが、アレとは趣向が異なります。ドタバタやコメディ展開を踏まえながら━━多くの読者の意表を衝くであろう思いがけない真相が待ちうけます。(´;ω;`)ブワッ

先に紹介した『shine』は痛快で面白いなあという印象に留まったのですが━━。本作『エロ本を買いにいこう!』を読み終えたときに「作者は只者ではない」という確信に至りました。

『アタシハ許サレマスカ』


巻末マンガ。シリーズ3作品に通底するテーマが明らかになります。本書をはじめとする『春夏秋冬オクテット』シリーズは、ここからが本番です。

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『shine』や『エロ本を買いにいこう!』の登場人物たちが、理不尽な理由により断罪されて、地獄(みたいな体育館)で刑罰の報いを受けている━━という内容。

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死神ちゃんという上位存在キャラクターが、シャインや山倉奏子に罪を問うてみせます。

個人的な思い入れで恐縮なのですが……。
この『アタシハ許サレマスカ』の趣向は、サウンドノベル『ひぐらしのなく頃に』において各エピソード終了後に繰り広げられる『お疲れ様会』を思い出しました

すなわち。虚構内存在であることを自覚している登場人物たちが、一堂に会して本編を振り返り、本人たちでさえ知らされていない裏テーマを探っていく━━いわば、作者からの挑戦状。
読者に対して、真相にいたるためのヒントを小出しに与えるという趣向です。

小説やマンガを読んでいるとき、こういう手の込んだ仕掛けに遭遇すると、おもわず体温が上がります。わくわく。

作者であるやまなしレイさんのストーリーテリングは巧みであり、良い意味で読者を裏切ろうとする展開がたまらない。

きわめて私的な心情を申し上げるならば、本書を読み終えたときに「この漫画家は、わたしを必ず楽しませてくれる」という信頼感が芽生えたほどです。要注目!

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)


「要注目作家」度
★★★★☆(4)
「ワクワク」度
★★★★☆(4)
「満足」度
★★★★★(5)
「総合」
★★★★☆(4)

著者について


やまなしレイさん(@yamanashirei)。WEB漫画描き。

ちなみに。2014年5月20現在Kindleストアにおいては全3巻の分冊構成で販売していますが、1冊にまとめて購入することもできます。

全1巻

パブーの場合、57ページ分の試し読みが出来ます。ぜひ。

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