こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。

ざっくり言うと


・レクサスを乗りまわす陰陽師が活躍するミステリ
・数百年前の悲恋が、時を超えてよみがえり、人が死ぬ
・呪術バトルもあるよ

隣の陰陽師──懸想橋の約束隣の陰陽師──懸想橋の約束 [Kindle版]
地蔵 重樹 (著)
出版: 地蔵 重樹; 3版 (2013/12/30)

 フリーライターの小栗護が引っ越した先の、格安賃貸マンションの部屋は、地縛霊が現れるという曰わく付きの物件だった。しかも隣の部屋には、陰陽師を自称する奇妙な男が住んでいた。

 そんな折、護が出版社から依頼されたのは、「御筥(おんばこ)様」という謎の箱を祭るという的中率の高い占い師の取材だった。
 その取材のために訪れた町の中心を流れる川の河川工事の現場からは、丁寧に埋葬されたらしき古い人骨が発見される。

 人骨の発見と時を同じくして一人の娘が失踪し、三代に渡る男達が犠牲となる猟奇殺人が起きた。
 護たちの取材は、隣人の陰陽師を巻き込んだ謎解きとなり、ある寺に伝わる人柱伝承と、懸想橋と呼ばれる橋にまつわる少女の悲しい恋いの物語とが結びつこうとしていた。

 一途な想いは、時空を超えて怨念へと変わり、やがて呪術のぶつかり合いとなる。
 二つの時代が交叉する物語が今、語られ始めた。

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。

きっかけはオカルト取材


フリーライターの小栗護(おぐり・まもる)は、月刊『不思議探訪』編集部の依頼を受けて、ある占い師の取材へ出掛けます。

『御筥様(おんばこさま)』を信奉する占い師の鴨野タケは、芸能人や政治家から圧倒的信頼を得ていることで有名でした。

今回の取材を取り次いでくれたのは、占い師(鴨野タケ)の姪です。しかし、待ち合わせ時刻をすぎても一向に姿をあらわさない。じつは、昨晩から連絡が取れないでいました。

不可解な一家惨殺事件


待ちぼうけを食らってしまったフリーライター小栗は、不穏なニュースを耳にします。地元の有力者一族が惨殺されたというのです。

凶行は惨状をきわめており、遺体はことごとく、まるで獣に噛みちぎられたような有様でした。

信じがたいものの、とても人間の仕業とは思えないことから━━地元住民のたちは、まことしやかに「荒野川の護岸工事が原因の呪いではないか」という噂を囁きあいます。

懸想橋にまつわる悲恋伝説


荒野川には、古くから『懸想橋(けそうばし)』と呼ばれている橋がありました。
その架け替えにともなって大規模な護岸工事をおこなっている最中に、人骨(頭蓋骨)が発見されるという事件がありました。

殺人事件ではありません。分析の結果、300年以上前のものであることが判明します。江戸期の治水事業の際にもちいられた『人柱』ではないかという推測もありました。

ところで。取材協力者に待ちぼうけをくらっていたフリーライター小栗護は、現地で思わぬ人物にくわします。

四十がらみの長身男、豊川猛(とよかわ・たけし)。護が住んでいるマンションにおけるお隣りさんであり━━現役の陰陽師です。
占い師取材に興味をいだいた陰陽師・豊川は、護と行動をともにします。

取材相手の占い師は、以前から工事に強く反対していたという。荒野川にかかる橋━━懸想橋にまつわる伝説が、信奉する『御筥様(おんばこさま)』と何やら関係があるようなのです。

変人陰陽師のサポートを頼みにして、失踪した取材協力者の行方や、すべてのはじまり━━『懸想橋』の悲恋伝説を調べていくうちに、現代の怪死事件と過去の悲劇のつながりが明らかになっていきます。

いまどきの陰陽師とは?


豊川は、じつに現代的な陰陽師です。マンションに住んでおり、開設したブログに寄せられたコメントを糸口にして仕事をゲットしています。

「安倍晴明ですか。あれは陰陽寮というお役所の人間ですからね。今で言えば公務員でしょう。だから地味なのですよ。
(中略)
私は民営ですからね。もっとクライアント受けするような華やかなものを見せないといけませんから。公営と民営の違いとでも言いましょうか」

作中から引用。

民営━━ビジネスであると割り切って稼いでいる様子です。なにせ、豊川の乗用車は『トヨタ・レクサス』です。相当儲けていると考えて良いでしょう。したたかな人物です。

感想


本書のクライマックスには、呪術戦闘シーンがあります。さまざまな印形を結んだり式神を駆使してこの世ならざる存在と渡り合うくだりには、おもわず前のめりになって読み進めました。

著者の地蔵さんは、呪術者に関するガイドブックも書いています。豊富な薀蓄+呪術バトルの組み合わせによって、続編エピソードをたくさん生み出せる地力を備えている、とお見受けしました。

商業出版において、陰陽師や呪術師が題材の作品には一定の需要があります。
本書は販売価格もお手頃ですし、うまくいけば固定読者が増えていき、好評シリーズになるかもしれませんね。

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)


「悲恋ミステリ」度
★★★★☆(4)
「陰陽バトル」度
★★★☆☆(3)
「満足」度
★★★★☆(4)
「総合」
★★★★☆(4)

著者について


地蔵重樹(@J_shigezoh)さん。『じぞう・しげき』と読みます。2014年5月22日現在、今回ご紹介したものを含めて5冊の小説をKindleストアで販売中です。(販売ページ

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