こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。

ざっくり言うと


・ヒトを死に至らしめる『バターの雨』とは?
・記憶喪失の少女が、飛行ユニットをあやつって戦闘する
・文学フリマの出展作品

ダイヤモンドの戦士ダイヤモンドの戦士 [Kindle版]
佐藤 (著)
出版: 佐藤; 1版 (2013/7/21)

少女は夜を行く――。

触れれば死に至る物質、バターの雨が降り注ぐ近未来。喋るダイヤモンドを持つ少女フィロと、ジャンは出会った。みなしご達との交流、インベイダーとバターの雨の謎、十年前の事故に隠された秘密。

やがて成長した彼らは、災厄に立ち向かってゆく。書き下ろし長編。

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。

たたかう少女とダイヤモンド


ひとりの戦闘少女がいる。

彼女は、装着型の飛行ギアを自在にあやつって、胸元にかがやく『しゃべるダイヤモンド』の助言を得ながら、『バターの雨』をはじめとする通称『インベーダー』に対して、空中戦で互角以上に渡りあう。

ダイヤモンドの戦士━━少女の名は『フィロ』という。

バターの雨がふる街


バターの雨とは、突如として我々を襲った「天災」である。
(中略)
黄色くて粘りがあることから、いつの間にかその呼び名がつけられた物質であり、わずかでも皮膚に付着すれば、昏睡して死に至る。

ダイヤモンドの戦士』から引用。以下おなじ

ある化学工場爆発事故のあと、どこからともなく飛んできた通称『バターの雨』は、細胞にふくまれるタンパク質を糖に変えるプラントに改造してしまう作用がある。つまり、ヒトを高血糖状態におちいらせる。

いわば、急性糖尿病になるようなもので、急激な血糖値の上昇が起きると簡単にヒトは気絶してしまう。生成された糖プラントはガン細胞のごとく増えるので━━『バターの雨』におかされたヒトが2度と目をさますことはない。

未知の生命体による地球侵攻━━特に、旧神奈川県秦野市である『西湘国 秦野(はたの)シティ』に向かってくる謎の生物は、派手さこそないものの、日本人を全滅させうる恐るべき敵だった。

さらに『インベーダー』と呼ばれる、バターの雨をまとった未確認飛行物体はマシンガンを装備しており━━関東地方の自衛団は、徹底抗戦をおこなっていた。

if……分裂した日本列島


モノクロームの殺伐(さつばつ)とした表紙イラストからうかがえるように。本書『ダイヤモンドの戦士』は、いつかどこかの日本列島を書いたシリアスなSF小説です。

旧東京都や横浜が『日本国』として再編成されている以外にも━━日本国の25倍もの国土を持つ『みちのく連邦』をはじめ、たぶん遊園地がある『TDL市国』、たぶん焼きまんじゅうが義務化されているであろう『ネオ群馬』などの独立国家があります。

孤児だったフィロが所属しているのは、神奈川県の秦野市や小田原市あたりが独立したとおぼしき『西湘国』の自衛団です。

西湘国には、バターの雨に対抗しうる原理を発見したマードストン女史という有能な女性科学者がいます。
フィロが装備している飛行ギアは、撃ち落としたインベーダーの飛行装置を改造したものです。天才的な女性科学者が率いる軍事集団には、かなりグッときました。

勇気ある少女の失われた記憶


17歳くらいの少女フィロ。ダイヤモンドの戦士は、なぜ勇敢(ゆうかん)なのでしょうか?

フィロは孤児院で育ちました。
とてつもない爆発事故における生存者である彼女は、幼い頃の記憶を失っていました。

「ボクは、いらない人間なんだよっ。」

まぎれもない、空飛ぶ少女フィロの口から発せられた言葉です。彼女は、みずからを「ボク」と称します。フィロは、いわゆるボクっ娘なのです。

この世界には、いらない人間なんて1人もいない。けれど、少女は━━なにかを押し殺したような声で━━そう叫んで、危険な戦場へと飛び出していきます。

感想


日本列島にせまりくるインベーダーの巨大母船を迎え撃つための作戦に、フィロはみずから志願します。それは今までのようなヤケっぱちな行動ではなく━━ダイヤモンドの戦士だけがなしうる任務だと自覚したからです。

「……ボク、もう行くね。」

大切な人たちを守るために━━自分が失った記憶をとりもどすために。ボクっ娘のフィロは、人のことばを話すダイヤモンドに導かれるまま、インベーダーの母船に向かって加速していきます。

地表に直撃すればマグニチュード10を引き起こす大質量を阻止するために━━ガチンコの戦闘を繰り広げるクライマックスは、われわれ読者の想像力をフル回転させるので、小説ならではの心地よい疲労感を味わうことができました。

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)


「ボクっ娘」度
★★★★☆(4)
「退廃的SF」度
★★★★☆(4)
「満足」度
★★★★★(5)
「総合」
★★★★☆(4)


著者について


佐藤さん(@0tas)。『さとう』と読みます。ほかにも、Kindleストアで好評発売中。→ 佐藤の著書

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