こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。

ざっくり言うと


・キスより1年はやく目覚めた『いばら姫』
・王子様は眼中になく、社長になった『シンデレラ』
・350ページを超えるデジタル絵本

早起き姫早起き姫 [Kindle版]
hnrfxm (著)
出版: くらげデザイン事務所; 1版 (2014/5/8)

どこかで間違った運命の歯車。早起きしてしまった眠り姫。まだ見ぬ運命の相手に会うため……姫はガーデニングを始める。

ただの童話だと思ったら大間違い! 大人も楽しめるお話です。 誰も知らない、古き良きヨーロッパの町ルーヒェンブルクで繰り広げられる人々の物語。

※下記プレビューはPC向けです。

王子のキスが待てなかったお姫さま


本書『早起き姫』は━━『眠れる森の美女(いばら姫)』をはじめとする有名な童話やおとぎばなしを組み合わせることによって斬新なストーリーを作りあげた、350ページを越える手作り絵本です。

hayaoki_01

つけペンとミリペンで描いたという、愛らしくてリリカルでぬくもりのあるイラストは親しみやすく━━わたしの場合、あっというまに感情移入することができました。

あらすじ


好奇心に足をつけたような元気でかわいい5才の女の子が、おばあさん(花売りの老嬢)と出会い、親交を深めるなかで、いろいろなおとぎばなしを聞かせてもらいます。

hayaoki_02

それは『眠れる森の美女』『シンデレラ』『人魚姫』『運命をつかさどる三姉妹の女神』など━━に、よく似ているのだけれど、細部や結末が異なりました。たとえば……

眠りについてから100年目に運命の王子様が迎えに来るはずだったお姫様は━━1年早く目覚めてしまいます。異常気象によって、お姫様を守護していた魔法のバラが枯れてしまったからです。
ふたたびバラを咲かせるため、お姫様の苦難の人生がはじまります……『早起き姫』

灰かぶり姫は、舞踏会に出席するために魔法使いからきらびやかなドレスやアクセサリーを与えられるのですが━━服飾デザイナーこそが天職なのだと決意します。
舞踏会には出席せず、灰かぶり姫はそのまま家を飛び出したのち。アパレル会社を大成功させて、魔法の力を借りずに不幸な境遇から抜けだしたのですが……『注文の多いシンデレラ』

灰かぶり姫の運命を思わぬ方向に変えてしまったノルン(運命の女神)は、三姉妹のひとりでした。
これまで数多くの運命の糸をつかさどり、しあわせになっていく人間たちを見ているうちに━━自分にも「女として幸せになる権利があるのではないか」と考えはじめ、人間の男性相手に恋をするのですが……『三人の糸繰り姉妹』

花売りの老嬢━━おばあさんは、女の子におはなしを聞かせるたびに悲しそうな表情を浮かべ、ときには涙を流します。

おばあさんが語るおとぎばなしは、それぞれが地続きになっている同時代の物語です。5才の女の子や老嬢、それぞれの童話の主人公たちが密接に関わりあって、最後には「あるひとりの女性」をしあわせへと導きます。

感想


ここまでの記述で「ピコーン( ゚∀゚)!」ときた人がいるかもしれませんね。
本書『早起き姫』は、本編に散りばめられた数々のヒントが、クライマックスにおいて一点に収束することで、強いカタルシスを味わえる絵本です。

タイミングが良いことに、2014年7月公開のディズニー新作『マレフィセント』も、『眠れる森の美女』に新解釈を加えた物語です。



邪悪な妖精を演じるのは、アンジェリーナ・ジョリーです。ブラピの嫁。
この映画も興味ぶかいのですが━━本書における『スリーピング・ビューティー』の新解釈も、万人の鑑賞にたえうる魅力と意外性をそなえています。

そもそも、むかしばなしの新解釈コンテンツには、おもしろい作品が多いのです。
最近ならば、魔女狩りを専門とする賞金稼ぎへと成長した兄と妹を描いた映画『ヘンゼル&グレーテル』が真っ先に思い浮かびます。

文芸の世界に目を向ければ、倉橋由美子『大人のための残酷童話』という名作があります。
本書『早起き姫』も、倉橋文学の流れをくむ残酷童話です。残酷といっても、泣きさけんだり血が飛びちるようなスプラッタな話ではなくて━━

人間の生における「老い」や「後悔」などの悲哀を帯びたテーマをふくみ、読者は自分の経験と照らし合わせることによって、さまざまな感情と向きあうことになります。
ていねいに作られている良質な一冊です。超オススメ!(ただし、タブレットを利用した閲覧を推奨します)

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)

  • 早起き姫
  • 著者:hnrfxm
  • 価格:300円
  • 読了にかかる時間:約1時間(個人差があります)

「世界観」
★★★★★(5)
「ていねいな作画」度
★★★★★(5)
「満足」度
★★★★★(5)
「総合」
★★★★★(5)


著者について


hnrfxmさん(@hnrfxm)。『くらげ 』と読みます。瀬戸内出身のデザイナー兼イラストレーター。

あなたの一冊をレビューします


つんどく速報では、電子書籍のレビュー候補を受け付けています。
ご応募はこちらから。
おもしろい電子書籍を教えてください(自薦・他薦を問いません)

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット