こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。

ざっくり言うと


・ついのべ作品集。140字の小説をまとめたもの
・猫とSFとロマンを愛する作家
・読めば、あなたもTwitterで小説を書きたくなる!?

耳と尻尾の狭間にて耳と尻尾の狭間にて [Kindle版]
犬吠埼一介 (著)
出版: 犬吠埼一介; 4版 (2013/3/12)

これまでに書いてきたついのべ(ツイッター小説のこと)を、一冊の同人誌としてまとめました。

僕の作品は、どちらかといえば小説というよりも、叙情詩的な、自らの思いの丈を力強く吐き出したような、詩歌に近い内容となります。さながら、犬が吠えているかのごとく。

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。

『ついのべ』とは?


本書『耳と尻尾の狭間にて』は、ついのべ作品集です。

『ついのべ』とは、140字以内で読める短い小説のことです。ついったーのべる。
Twitterをつかうので、1回の投稿に使えるのは140字まで。短歌や川柳よりも長く、詩よりも短い。そんな制約のなかで小説を発表しよう━━という試みが『ついのべ』です。

収録作のご紹介


本書の収録作から、いくつか抜粋します。

識ることこそが悲劇であり罪なのだ。全人類に、耳とヒゲをつけろ! 今日、二足歩行するただ一種類の生き物が消失した。人類総猫化法案を可決した、汎生態系霊的集合連盟は、長い戦いに終止符が打たれたことにほっと胸をなで下ろす。ユートピアが実現し、人も、地球も、救われたのだ。

耳と尻尾の狭間にて』から引用。以下おなじ

SF風味。あらすじや要約とは異なります。「小説の書き出し」と「要約」を掛けあわせたような印象を受けました。

太古より小さな生物種が巨大なそれを打倒するのは珍しくない。繁栄する鋼鉄の文明の裏で、緑の叡智を持つ野生の民が増殖する。戦火に街を追われる人間たち。最後の砦を取り囲む猫の津波。今、革命軍代表の一人の猫が、彼女をこよなく愛した、大統領という名の一匹の人間に鈴をつけた。

猫たちによる勢力図のぬりかえ。シンギュラリティ(技術的特異点)にあやかり、『ニャンギュラリティ(猫族的特異点)』とでも名づけましょうか。

一匹の蜘蛛が、地を這う。哀しいことに人は最初、気付かなかった。偉大な可能性を持った蜘蛛だったのだ。蜘蛛は這い続けた。糸を伸ばし。信じて、信じて、信じて信じ続けた。やがて繋がるようになった。蜘蛛は這い続けた。雲になった一匹の蜘蛛が世界を覆った時、世界は不滅になった。

蜘蛛(クモ)=ウェブ(クモの巣)。雲(くも)=クラウドネットワーク。現在のネットインフラを表現している一編です。言い回しがカッコイイ。

昔、どこかで読んだのだが、もう忘れてしまった。ヨーロッパの神話だったか。闇と戦う巨人がいる。巨人が闇を毎晩退けるから、毎日、朝日が昇るのだと。僕は子供心に、巨人に憧れたものだ。今思えば、ひたむきに生きる人々が生み出した、集合的な無意識こそ、巨人だったのだろうか。

魅力的な書き出しになりうる一編です。ついのべは、「ひらめき」をとりあえず140字以内に書きだしてみることから始まります。

新しい文芸ジャンル


芸術とは制約である。たとえば、絵画の本質は「額縁」だ。

G.K.チェスタトン,作家
正統とは何か』本文より要約して引用

絵画のみならず、文芸も同様ではないでしょうか? 表現における制約が足かせにはなるとはかぎりません。むしろ『額縁』があるからこそ、芸術家は生きているうちに創造的行為を終わらせることができて、すくなくとも1つ以上の作品を世に残すことができるのです。

同様に、ついのべは作りやすさが魅力です。140字しかないというのはたったの140字で書き終わるということでもあります。

ついのべ、ひいては本書のようなミニマムな物語をまとめたもの━━言わば『ついパブリッシング(!?)』は、いままで創作とは無縁だった人々の創作活動を盛んにするかもしれません。

感想


今回のレビューでは、物語性のあるついのべ作品ばかりを抜粋しましたが━━。そのほかに、著者の信念や哲学を垣間みることができる観念的なついのべも多数収録しています。

さらに。ワンツイートで完結させず、複数回にわたるツイートをまとめた短編小説『108の機関紙』を同時収録しています。

本を読むのが好きで、じつは「物語を作ってみたいけど、小説の書き方がわからない」という読者にこそ読んでほしい。本書を参考にして、ついのべデビューしてみませんか?

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)


「あたらしい文芸」度
★★★★☆(4)
「ロマンティック」度
★★★★☆(4)
「満足」度
★★★★☆(4)
「総合」
★★★★☆(4)


著者について


犬吠埼一介さん(@inbosk)。『いぬぼうざき・いっかい』と読みます。エンタメ大衆小説作家。インターネット上だけでなく即売会イベントでも精力的に活動している。

あわせて読みたい


寝付けない時には(twnovel@shinichikudoh)寝付けない時には(twnovel@shinichikudoh) [Kindle版]
工藤 伸一 (著)
出版: 書肆工藤; 8版 (2013/2/4)

3年半かけて書かれたツイッター小説2,000篇の中で、今のところ最も「お気に入り=ふぁぼられ」数が多かった作品のうち、上位100篇を収録。
時事ネタや文学ネタ、ブラックジョークに童話、ホラー、SF、ファンタジーなど、ジャンルは多岐に渡ります。


あなたの一冊をレビューします


つんどく速報では、電子書籍のレビュー候補を受け付けています。
ご応募はこちらから。
おもしろい電子書籍を教えてください(自薦・他薦を問いません)

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット