ファミレスのモーニングセットが大好きな、キンドる速報ライター☆イマガワです。

トーストセットに付いてくる「ポーションジャム」は、あえて残します。ドリンクバーの紅茶とあわせて「ロシアンティー」にして飲むのが、最近のマイブーム! 朝食を抜くのは体に悪い。

さて、今回ご紹介するのは「有名ゲームジャーナリスト」の意外な才能を垣間見ることができる、良質なSF短編小説です。

宇治見陽介の眼宇治見陽介の眼
著者:新 清士
販売元:新清士
(2013-02-02)
販売元:Amazon.co.jp

コンピュータが発達し、ナノテクノロジーを一般的に使うようになった世界。「公安の狗」としての仕事も引き受けて生きなければならない宇治見陽介。上海で起きたテロリストが日本に侵入し、それに関連する女の監視役の仕事を受けることになる。

コンピュータが発達した世界で、人はどういう気持ちで生きることになるのか、世界が変わりつつある中での孤独や愛情の姿を描く。

「日本経済新聞電子版ゲーム読解」や「ビジネスファミ通」などの連載を持つ筆者が、コミティアで少部数発売され、ゲーム開発者から高い評判を得ていた作品の大幅改訂版。



公安警察とクラウドコンピュータ


ナノマシン技術とクラウドコンピュータが発達した2020年代の日本。公安警察の使いっ走りをしている宇治見陽介が命じられたのは「国際的テロリスト犯の情婦」を監視する任務だった。

妹想いの諜報員


宇治見陽介は、東京都太田区神谷地区のナノマシン工場で働いている若い男。しかし「裏の顔」は、公安警察の外部協力者。陽介には病弱の妹がおり、致命的な疾患を完治させるためには保険対象外のナノマシン治療を受ける必要がありました。工員としての給料では手術代をまかなえず、なかば強制的に国家権力の狗(いぬ)として働くことになるのです。

美しい女の生活を監視する


最新式の三次元カメラを使用することで、壁の向こうを覗き見ることができます。クラウドコンピュータの計算能力を利用して解析・映像化されるのはシルエット程度のものですが、情婦の日常はもとより着替えや風呂場に至るまで覗き見ることが可能です。

他人の、しかも美しい女のすべてを窃視(せっし)できるという快感に支配されていく陽介。いつしか任務を忘れてしまい、陽介と美しき情婦の「覗き、覗かれあう関係」は、やがて……。

窃視者の心理小説といえば


江戸川乱歩『屋根裏の散歩者』が有名ですね。ただし、本作は乱歩小説の登場人物たちよりも「HENTAI」度は控えめで、あくまでも情婦への恋心を増幅させる過程として描かれています。一部、引用してみましょう。

翔子が風呂に入っている映像から、目を背けることは容易ではない。こんな映像ぐらいインターネット上にはごろごろしているにも関わらずだ。自分の男性としての何かがむくりと顔を上げ、思い入れをしている女性のすべてを自分のものにしているような感覚に陥る。その感覚が、事実ではないということは明白だ。そのため、現実に揺り戻されると、後ろめたいバツの悪い気分になる。しかし、陽介が目を避けることが難しいものでもあった。

こんな調子で、数ページにわたって綴られる「クラウドコンピュータの計算能力を利用した近未来窃視」における心理描写は圧巻です。作者のとてつもない潜在力を感じました。長編小説でもっと読みたいですね!

作者は、有名ジャーナリスト


新清士(@kiyoshi_shin)さん。日本経済新聞ファミ通.com等の連載記事で有名なゲームジャーナリスト。イベントの講師としても活躍されているようです。

新さんのブログによれば「同人誌を中心に書いている、小説のような物を、多くの人に読んでもらえるようにすること」を考えているそうです。今回ご紹介した『宇治見陽介の眼』は、2010年のコミティアで発表されもの。2作目、3作目がKindleストアに登場する日はそう遠くないかも。ぜったい読みたい!

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。

  • 宇治見陽介の眼
  • 著者:新 清士
  • 価格:99円
  • 読了にかかる時間:約1.5時間(個人差があります)
SFミステリ度
★★★★☆(4)
窃視文学度
★★★★☆(4)
クラウ度
★★★★☆(4)
総合
★★★★☆(4)

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