つんどく速報（電子書籍の感想・レビュー）

ブエナス・タルデス！（スペイン語で「こんにちは」の意）
キンドる速報ライター☆イマガワです。

造幣局の発表によると、一円玉が余っているらしいです。一円玉って、ご飯のおかずに最適ですよね～。煮て良し、焼いて良し、炒めて良し、ナマでも良し。塩コショウはもとより、醤油、ソース、マヨネーズとの相性もバツグンです。(ﾟдﾟ)ｳﾏｰ

……という冗談はさておき。キンドルストアで「ユーモア小説の鬼才」を発見しましたよ！ こちらの作品です。

来たるべき日曜日 他６編
著者：めきし粉
販売元：めきし粉製粉所
(2013-01-22)
販売元：Amazon.co.jp

めきし粉短編集。すぐ読めるユーモア小説を中心に表題作の『来たるべき日曜日』の他6編をセレクトしました

ほとばしる奇想の数々

この作品集は優れています。でも、洗練されていない。誤解をおそれずに言うなら、ろ過されていない日本酒のような味わい。だが、それがいい！

訓練された酒呑みほど「どぶろく」や「マッコリ」のような「雑味が残っている」ものを好みます。雑味とは「旨み」です。この作品集では、玄妙な「旨み」を満喫できます。

以下は、6作品の寸評です。項目はタイトル名。

女三十バツイチ子持ち。彼氏はいるが頼りない。

女性の一人称饒舌体による、ギャグ・ショートショート。つきあっている男は、風呂からあがるといつも裸で踊りだす。子持ちなので、ゆくゆくは結婚も考えているのだけど……。バツイチ女性の苦悩が、面白おかしく描かれています。

記憶売ります

同窓会の当日に、男は記憶の一部が欠けていることに気づく。同級生たちの顔は思い出せる。名前も思いだせる。でも高校時代の記憶が抜け落ちていた。同窓会に出席するのに、それでは困る。

男は、巷で流行している「記憶売ります」といいうサービスを利用する。個人のライフログが政府のコンピュータで全て管理されている時代、裏ルートを使って芸能人や有名人はもちろんのこと、無名人である自分自身の「記憶」を買うこともできるらしい。男は同窓会でうまく振る舞うために「自分の記憶」を買うことにしたのだが……。

「記憶の売買」というアイデア自体は、シュワちゃん主演の映画『トータル・リコール』でおなじみですが、さらに工夫を施したものになっていて、最後のオチは秀逸！

来るべき日曜日

表題作。14才の娘と淫行に及んだあげく妊娠に至らせた中学教師を成敗しようとするガンコ親父。名刀『巌鉄』をふりまわし、不届きな男性教師に鉄槌をくだそうとすると、そこへ娘が飛び出して来て……まさかの真剣白刃取り！ おののく男性教師をよそに、父と娘の愉快で激しい言い争いがはじまる。

それは酷い片思いで。

女性経験の乏しい男が、ある女性への切ない気持ちを饒舌に語っている。『北の国から』のジュンくんみたいな語り口が面白くて、読んでいるとニヤニヤしてしまう。物語の後半で「誰に」片想いをしていたのか判明するのですが……あなたは絶対に笑います。奇抜な設定ではないけれど、ジワジワくる内容です。

ボブと呼ばれた男

校則に「エレキギターは禁止」という項目があった時代。ムッシュかまやつが初めてエレキギターをかき鳴らしたらパトカーが10台やってきた時代。『エレキギター』という革命が、世の中に衝撃を与えることのできた時代の青春ストーリー。これまでの3作品と違って、素直な青春デンデケデケデケなお話です。

天才芸術家誕生

毒電波の存在に気づいてしまった男。せめて自分の部屋だけは守ろうと思い、ホームセンターで買ってきた釘と針金を用いて「即席の電磁コイル」を設置する。キノコが生えるようにして毎日１つずつ増えていく電磁コイル。友人知人からは異常者扱いされたが、恋人の裕子だけは理解を示してくれた。なぜなら、その裕子こそが電波をまき散らしている当事者だったからである。果たして、男の運命は……。

塩素濃度は今日も好調

とある水道局職員の日常を描いた小品。とくにオチはないけれど、軽妙な語り口によって料金滞納者たちの生態が描かれている。もはや「文体芸」ともいえるもので、たとえば「NHKの天気予報士が読みあげる原稿」を書かせても、愉快な掌編に仕立ててしまうはず。まさに鬼才！

高知大学、おそるべし

これらの初出は、高知大学文芸サークルで発行していた文芸誌やASAHIネットへの投稿作品。次回作は書きおろしを予定しているそうです。とても楽しみであり、絶対に買います！

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。

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