こんにちわ!
キンドる速報ライター☆イマガワです。

3.14……円周率ではありません。ホワイトデーが迫っています。繰り返します。ホワイトデーが2日後に迫っています!

女性がホワイトデーに期待する「お返し」の平均相場は3,970円(参照リンク)。無償の愛(笑)。愛を長続きさせたければ、それなりのコストをかけるべき。さきほど神様からお告げがありました。アーメン。

さて、今回ご紹介するのは「愛しあい続けるために、相手の死を望む」という恋人たちの奇妙な物語。

殺人★こみゅにけいしょん殺人★こみゅにけいしょん [Kindle版]
著者:針とら
出版: 針とら黒文庫
(2013-03-05)

 あなたは「喪ってはじめて大切な人だとわかった」というような経験はありますか? あるいは恋人が不治の病で死んでしまうドラマに大泣きした経験は?
 
 これはそんなあなたのためのお話です。文庫本換算:85ページ。

※製品版は、タテ書きです。


とある奇妙な心理療法


配偶者や恋人に、愛情を感じなくなった……だけど、別れたくない。そんな悩みを抱える人々が集まるウェブサイトがあります。

『喪失の小部屋』という名前のチャットルーム。役割分担を決めて、オンライン上でロールプレイを行うのです。

カウンセリングの手順


まずは「遺族役」と「通知役」に分かれます。通知役は、遺族役が「大切にしたい」と想う人の死を告げます。遺族役は「大切にしたい」と想う人の死を「擬似的」に受け止めます。このような儀式を経ることで「かけがえのない存在」であった頃の気持ちを取り戻そうというのです。

カウンセリングの直前に、大切にしたい人の「年齢」「関係性」「喪失の形態(事件、事故、病気)などの情報を共有しておきます。それらを踏まえた上で、死亡宣告シーンをオンラインチャット上で繰り広げるのです。

カウンセリングの様子を、本編から引用してみましょう。

(病室の中。ベッドに横たわったマサヤの顔には、白い布がかけられている)

「マキさん。残念ですが、マサヤさんは先程息を引き取られました。」
「……どういうことですか?」
「マサヤさんは以前から、肝臓癌を患っておられました。もう長くはもたないと本人もわかっているようでした。」
「嘘です! そんなの、私聞いたことないです。先生だって、ちょっと働きすぎなだけだって言っていたじゃないですか」
「あなたにだけは言わないでくれと、マサヤさんに頼まれていました。あなたに心配をかけたくなかったのでしょう。(林、マキに二枚の紙切れを渡す) これを、息を引き取る間際に、マサヤさんから預かりました。一緒に行けなくてごめんということでした」


マキとマサヤ


真紀と雅也。ふたりは、倦怠期のカップルです。真紀は『喪失の小部屋』のカウンセリングを何度も受けることで、恋人である雅也への気持ちを、どうにかつなぎ止めていました。でも、雅也との関係は日を追うごとにギクシャクしていくばかり。もはや、限界が訪れつつありました。

そんなある日。真紀が、雅也のノートパソコンをいじっていると奇妙なものを発見します。それは『喪失の小部屋』のチャットログを出力したテキストファイルでした。

(全裸の真紀の死体が床に転がっている。脇には巨漢デブの合田の姿)

「美味かったぜえ。おまえのオンナ」
「おまえ、なんだよ! 真紀をどうしたんだよ!」
「帰り道に襲ったのさ。クロロホルムで眠らせて、車に連れ込んだ」
「なんだってっ?」
「裸にひん剥いて、その若くみずみずしい果実のような肉体を、たっぷり味わわせてもらったぜ。良かったぜえ。真紀ちゃん、犯られながら、雅也雅也って泣くんだよ」
「てめえ! 畜生ぶっ殺してやる!!」
「真紀を返せ!!! 返せよお!!!!!」


健常なド変態


じつは、雅也も『喪失の小部屋』の利用者だったのです。真紀の擬似的な死を悲しむことで、ある種の癒しを得ていました。しかも、毎回かならず「異なる様々な変態的趣向で陵辱されたうえで死ぬ」というシチュエーション付きで。……えっ(笑)

しかし、雅也は精神異常者ではありません。これが彼にとって最適なカウンセリング方法であり、真紀との関係をかろうじて繋ぎ止める唯一の希望だったのです。……おまえら、もう別れちゃいなよ。って思ったのは、秘密です。

驚愕のどんでん返し


このあと、真紀は偽名アカウントを使って雅也の「通知役」を務めることにします。事前にチャットログを盗み見していたので、雅也の喜びそうツボは心得ていました。

カウンセリングにおける、2人の相性は抜群でした。チャットを使ったカウンセリングによって、ふたたび真紀と雅也の関係が改善していくのですが……。このあと、二転三転のストーリー展開が待ち受けています。読めばわかる!

著者のご紹介


針とら(@Varitra)さん。キンドる速報での紹介は2回目です。以前「街中のみんなは風船。僕は空気を入れる。「メカねこと空気入れ」というレビューを掲載しました。

緻密なプロットに裏打ちされたストーリー展開は、今回レビューした『殺人★こみゅにけいしょん』でも健在です。作品の品質にムラがない、安定した力量の持ち主です。針とら作品に、ハズレ無し!

最終選考の常連投稿者


KDP(キンドル・ダイレクト・パブリッシング)で出版する以前は、小説新人賞にも応募していたようです。たとえば、『すべて裏切者のしわざ』という作品は「第8回講談社BOX-AiR新人賞最終選考」に残っており、『らくがきウルファ!』という作品は「第1回角川つばさ文庫小説賞最終選考」に残っています。

これらの実績は、数々の選考をくぐりぬけることができる確かな実力の持ち主であることを証明しています。レビューした2作品を読むかぎりでは、Kindle発の人気作家になるのは時間の問題だと思いました!

■公式ブログ
針とらの雑念空間

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。

文章力
★★★★☆(4)
構成力
★★★★☆(4)
バカップル度
★★★★★(5)
総合
★★★★☆(4)

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