こんにちは!
キンドる速報ライター☆イマガワです。

イヤミスとは、すなわち「読後感がイヤ~な」ミステリのこと。ベストセラーになった『告白』(湊かなえ)を代表とする、あの類のミステリ小説を指します。

今回ご紹介するのは、美しい文章と巧妙な仕掛けを見事に両立させている、KDP(キンドル・ダイレクト・パブリッシング)発の「イヤミス」です。

ゴースト≠ノイズ(リダクション) 上ゴースト≠ノイズ(リダクション) 上 [Kindle版]
著者:十市 社
出版: 十市社
(2013-02-06)

ゴースト≠ノイズ(リダクション) 下ゴースト≠ノイズ(リダクション) 下 [Kindle版]
著者:十市 社
出版: 十市社
(2013-02-06)

高校入学から7か月。

一人の友達もなく、1-Aの幽霊として誰からも認知されない孤独な日々を送っていたぼくは、放課後、1人の女子生徒から声をかけられる。

そうして、ぼくたちはときどき誰もいない放課後の図書室で落ち合うようになった。孤立からくる耳鳴りに苦しむぼくと、ぼくを利用し、理由を語らず欠席を繰り返す彼女。

ぼくの孤独な日常は少しずつ変化しはじめる。

そんななか、校内では連続動物虐待死事件の話題が持ちあがって――

※製品版は、タテ書きです。


1年A組 一居士架(いちこじ・かける)


彼は、ミスを犯した。いつ? 高校1年の1学期に。どのような? 同じクラスの女子たちの制服にぶちまけた。なにを? とある「生あたたかい」液体を。クラスメイト全員の目の前で。盛大に。

その事件を経て、彼のスクールカーストは「幽霊」に格下げされた。クラスメイトたちの目には映らない透明な存在。担任教師から名前を呼んでもらえない「30人学級の31人目」。それが一居士架(いちこじ・かける)という少年だった。

1年A組 玖波高町(くば・たかまち)


彼女は、変わった名前をもっていた。「高町」。某魔砲少女とは関係ない。色白で、まぶたが二重で、鼻筋はまっすぐで、漆黒の長髪が美しい。それが玖波高町(くば・たかまち)という少女だった。

「ぼくは幽霊なんだ」と、ぼくは告げた。(中略)
「ご愁傷さま」
 玖波高町はいただきますでも言うみたいにおざなりに合掌しただけだった。

高町には「幽霊」が見える。もちろん、これは比喩だ。クラスメイトたちの手前もあって、「見える」のは2人きりの時に限られていた。誰もいない放課後の図書室で、大人びた少女と「1年A組の幽霊」は、すこしずつ会話を重ねていく。

奇妙な「見立て」殺害事件


奇妙な死骸が、立て続けに高校の敷地内で発見される。

はじめは、2匹のネズミの死骸。箱のなかで、互いのヒゲをつかって「蝶々結び」にされていた。

2度目は、トカゲだった。2匹それぞれのシッポをつかって、きれいな「蝶々結び」に。

3度目は、具体的な動物名を挙げるのが憚られるほどの……とても残酷な仕打ちがなされた死骸が発見される。あの「愛すべき動物」の前足が、先の死骸たちのように……。けっして許すことのできない所業だった。

ネタバレ要素が多すぎて(汗)


えーと、ここまでが全体の「10%」のあらすじです。ふつう、書評の「あらすじ」というのは、少なくとも30%~50%くらい書くのが未読の人にとっては親切だと思うんですが、あのう、本作はミステリ小説でして、しかも「伏線だらけ」で「後半の数十ページで二転三転」するタイプのストーリー構成なので、こんな感じになっちゃいました。

出血大サービスで言うならば


本作の主人公は、いわゆる『信頼できない語り手』参照リンク)です。まさに、ミステリ読みの大好物だと思うんですが、どうぞ安心して召し上がってください。おいしいですから。

ちなみに、本作『ゴースト≠ノイズ(リダクション)』は、およそ14の章立てで構成されているのですが、下巻に収録されている第10章からは、脳みそ揺さぶり系のジェットコースター展開が楽しめること請け合いです。読めばわかる!

読者の反響






たいていのKDP(キンドル・ダイレクト・パブリッシング)由来の作品は、感想ツイートを見かけることはありません。なぜなら、作者の知名度が「ゼロ」だからです。しかし、この『ゴースト≠ノイズ(リダクション)』は、上記のような「アツい」感想ツイートを見かけました。

『天才かもしれん! 直木賞を受賞してもおかしくない作品だ!』と大絶賛しているツイートも見かけました。やや大げさなので元ツイートの引用は控えますが、とはいえ『ゴースト≠ノイズ(リダクション)』の圧倒的な読後感を共有している「いち読者」として、その気持ちはよくわかります。

フェアなミステリ小説


『事件の謎を解く手がかりは、全て明白に記述されていなくてはならない。』ヴァン・ダインの二十則)という、ミステリ小説が守るべき「お約束」に照らし合わせても、フェアな書き方がされています。これから手に取る人は、安心してこの作品の謎に挑んでみてください。本作は、あきらかに「アマチュア」の域を出ている良質なミステリ小説です。

著者について


十市社(@TohchinoYashiro)さん。読みは「とおちの・やしろ」です。

Kindle情報サイト『きんどるどうでしょう』のインタビュー(参照リンク)によれば、愛知県在住で、ミステリ小説が大好き。執筆の最中には、ひと息つくための緑茶と、糖分補給のための氷砂糖が欠かせないそうです。

著者のブログ
Untitled Area

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。まずは上巻から、お試しください。

文章力
★★★★★(5)
構成力
★★★★★(5)
イヤミス度
★★★★★(5)
総合
★★★★★(5)

関連リンク


KDP発で良質なミステリといえば、この作品も要チェックです!
彼女のための幽霊 (藤元杏シリーズ)彼女のための幽霊 (藤元杏シリーズ) [Kindle版]
著者:吉野 茉莉
(2010-08-07)


レビュー記事
ちょい鬱、青春こじらせ系ミステリ『彼女のための幽霊』 - キンドる速報(KDPの感想・レビュー)

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