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「PM2.5」と「福沢諭吉」と「キムチ」の知られざる関係とは!?

諭吉の流儀『福翁自伝』を読む諭吉の流儀『福翁自伝』を読む [Kindle版]
著者:平山 洋
出版: 平山 洋
(2013-03-04)

日本一顔と名前を知られた男、福沢諭吉。
その爽快で力強い生涯をご存知だろうか?

悪さありいたずらありの幼少期から、笑いと学びに満ちた青年期、
日本のキーパーソンとなった壮年期、そして、かけ抜けた人生をふり返り

「愉快なことばかりであるが、人間の欲には際限のないもので、
不平をいえばまだまだいくらもある」

と話した老年期まで、人を惹きつけるエピソードがつまっている。

そんな福沢諭吉が自らの人生を語り本になったのが、『福翁自伝』である。
これまでは新訳を読むことでしか触れられなかったこの名著の、初めての解説本が『諭吉の流儀』である。福沢諭吉の人となり、そして魅力がつまった一冊。

※製品版は、タテ書きです。



みんなが大好き


福沢諭吉。「ふくざわ・ゆきち」と読みます。わたしたちが大好きな『一万円札』に印刷されているアノ人です。江戸時代末期から明治時代にかけて活躍した人物であり、坂本龍馬とは1歳ちがいの同時代人です。

福沢諭吉は『学問のすすめ』の著者であり、「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」というフレーズが有名であり、慶應義塾大学の創始者としても知られています。

ほかにも、アイスクリームをはじめて食べた日本人であり、江戸時代に『アメリカ独立宣言』を翻訳した人物であり、新政府の高官就任のオファーを断って、あえて実業家として活動することを選んだ人物でもあります。

福翁自伝とは?


慶應大学では、入学時に『福翁自伝』という書籍が配布されます。これは100年以上も前に書かれた自伝です。『福翁』は、大学創始者の福沢諭吉のことです。

『福翁自伝』の内容は、中津藩(現在の大分県)の下級武士の家に生まれてから、60歳を迎えるまでの諭吉の人生が、気取らない感じで語られています。

たとえば、大阪の適塾で学問に励んだくだりでは、殴り合いの喧嘩をしたり、蓄電池を作るのに必要なアンモニアを合成しすぎて悪臭騒ぎを起こしたりと、偉人の奔放な青年時代を読むことができます。

ほかにも、勝海舟が率いる咸臨丸に同乗してアメリカ合衆国を視察したこと、帰国後には幕府の翻訳係として取り立てられたこと、明治維新を迎えたあと、新聞事業や出版社を経営するに至った事などが『福翁自伝』には記されています。


気軽に読める解説書


『福翁自伝』は、明治時代に書かれたものです。岩波文庫から口語訳のものが出版されていますが、300ページ以上もあるので読み通すには根性が必要です。あれは、学生が読む類の書物だと思います。

本書『諭吉の流儀『福翁自伝』を読む』は、原著の主要なフレーズを100個抜き出して、一般的な読者にもわかりやすい言葉で解説がされています。原文の引用が2割に対して、著者の解説が8割という感じ。幕末~明治あたりの時代背景や人間関係が、平易な言葉で過不足なく解説されています。

この『諭吉の流儀『福翁自伝』を読む』を読むだけで、一般的な人よりも福沢諭吉について詳しくなれます。原著の『福翁自伝』を読まなくても済むくらい、充実している解説書だと思いました。

著者は、大学の研究者


平山洋さん。「ひらやま・よう」と読みます。日本思想史を専門としており、2013年3月現在、静岡県立大学の助教授を務めている方です。

平山さんは、とても有名な福沢諭吉の研究者です。すでに『福沢諭吉の真実 』(文春新書)という単著があります。じつは、この本が出版されるきっかけとなった『安川・平山論争』という、たいへん興味ぶかい学術的事件がありました。

それは「福沢諭吉のアジアに対する認識」に関する論争でした。本書は、この『安川・平山論争』の副読本としての側面もあります。

福翁は、差別主義者か否か?


むかし、福沢諭吉によって創刊された『時事新報』という新聞社がありました。

明治18年の3月16日。その『時事新報』紙上に、無署名の社説が掲載されました。それが『脱亜論』です。

脱亜論とは?


その社説は「不幸なるは近隣に国あり」という指摘からはじまります。つまり、当時の清国(現在の中国)と李氏朝鮮の文化的な遅れが、日本の発展に悪影響を与える可能性を危惧するものです。

つづけて「悪友を親しむ者は共に悪名を免かる可らず。我は心に於て亜細亜東方の悪友を謝絶するものなり」と断言します。この部分は「清国や李氏朝鮮のような後進国は取るに足らないから、もう無視しようぜ」という解釈もできますし、あるいは「お隣さんだからといって、特別に親しくしたり親切にする必要はない」と解釈することも可能です。

この『脱亜論』以外にも、諭吉自身の「清国や李氏朝鮮に対して差別的とも受け取れる発言」が記録として残っています。それらの悪い材料が、諭吉が「アジア差別主義者」であるという主張の根拠となっているようです。

ちなみに


前述した『安川・平山論争』というのは「福沢諭吉のアジア諸国や天皇制に対する価値観が、大日本帝国のアジア戦略に影響を与えたか否か?」という事に関する論争です。

今回ご紹介した「諭吉の流儀『福翁自伝』を読む」の著者である平山洋さんは、もちろん擁護派です。本書内においても、『福翁自伝』や関連書籍から読み取れる『諭吉のアジア観』が丁寧に解説されています。たいへん穏健で建設的なものです。

件の論争においても「無署名で書かれた『脱亜論』は、諭吉の手によるものではなく、普段から差別主義傾向のある記事を書いていたxxxxという記者の手によるものだ。諭吉は悪くない」と、平山さんは主張します。

エキサイティングな論争


諭吉擁護論に対する、安川寿之輔さん(名古屋大学)の反論手法が面白い。協力者の井田進也さん(大妻女子大学)が、時事新報の過去の署名記事を集めて、記者ごとの文章の癖を徹底的に検証します。そして、無署名記事である『脱亜論』を書いた記者を推定してみせたのです。

そして、通称『井田メソッド』と呼ばれる方法で推定された『脱亜論』の記者は、擁護派が主張する記者とは別人だったのです。この興味深い「学問的な応酬」は、朝日新聞紙上から始まり、ウェブ上にも波及して、果ては4冊の著作が出版される事態にまで発展しました。

詳しい内容を知りたい方は、以下の著作やウェブサイトを参照してみてください。

脱亜論 - Wikipedia

安川・平山論争 - Wikipedia

福沢諭吉の戦争論と天皇制論―新たな福沢美化論を批判する [単行本]

福沢諭吉の真実 (文春新書) [新書]

すこし長くなりましたが、本書は単なる「福翁自伝」の解説書にとどまらない面白さが詰まっているキンドル本です。最近の「中国・朝鮮半島」情勢を、深く読み解くための助けにもなるはずです。

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。

タメになる度
★★★★☆(4)
歴史が学べる度
★★★★☆(4)
慶應ボーイ度
★★★★☆(4)
総合
★★★★☆(4)

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