こんにちは!
キンドる速報ライター☆イマガワです。

漫画家のKDP活用例といえば、鈴木みそ氏が有名です。今回は『プロの小説家』が、みずからの手で初期作品を電子書籍化した事例をご紹介します。

頸折れ人形考頸折れ人形考 [Kindle版]
著者:司凍季
出版: 司凍季
(2013-03-10)

エレベーターの中で頸を絞められたうえに、へし折られた、奇っ怪な死体が発見される。

死体はオーガンディーのドレスに赤いパンプスを履き、あたかもフランス人形のような恰好をしていた。しかしエレベーターに乗り合わせた人間はなく、階と階の途中でとまっていたため、そこは完全な密室だったのである――!

「島田荘司が提唱する『本格ミステリー論』の忠実な実践作」と綾辻行人氏に評された処女短編。謎とストーリーが多重構造で幾層にも重ねられた、めくるめくエロスと怪奇が織りなす本格ミステリー。

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。



苦悶のフランス人形


奇妙な死体が発見される。場所は、階の途中で停止してしまったエレベーター。都市の片隅に、突如として現れた密室。死んでいたのは、フランス人形のような衣装に身を包んだ「頸(くび)が折れた」死体。

遠い昔に捨てたはずの女


文芸誌編集者の佳山守彦(かやま・もりひこ)は、おのれの心に罪悪感が残っていることに驚いていた。偶然、街で見かけた女。手には白いパラソル、腰までとどく長い黒髪、ラベンダーブルーのドレスや赤い靴で着飾った「お人形」のような恰好をしていた。とっくのむかしに捨てた女……笹本涼子(ささもと・りょうこ)に似ていた。

忌まわしき応募原稿


女を見かけた数日後。主人公の「佳山守彦」がつとめる出版社に、「佳山守彦」を名乗る人物から小説新人賞の応募原稿が送られてくる。当然、本人には身に覚えがない。罪を告白するかのように書かれたそれは、守彦が涼子に強いた「忌まわしい肉体関係」の記録だった。

密室トリックだけじゃない


本作『頸折れ人形考』には、密室が登場します。しかし、密室トリックの謎解きはメインではありません。

第1は、停止したエレベーターに閉じ込められた死体の謎。フランス人形を模したような衣装というのは、異様さを際立てています。守彦が見かけた「女」の恰好にもよく似ていますが……はたして、同一人物なのか?

第2は、守彦がつとめる出版社に送られてきた『告発文』のような応募原稿の謎。当然、守彦が書いたものではありません。にもかかわらず、守彦と涼子しか知りえないはずの「特殊な性交渉」の様子が細かく記録されていたのです。

もっとも謎なのは


守彦のもとに追加で送られてきた応募原稿の内容です。そこには「ある出来事」の告白が書かれていました。はじめに送られてきた原稿に書かれていたのは、ほとんどが事実ばかりでした。しかし、追加原稿には、守彦にはまったく覚えのない「ある出来事」の様子が、詳細に書かれていたのです。それは、とても恐ろしい内容でした。

始まったときには、すでに終わっている


はじめに密室の謎が提示されたので、それにばかり気を取られていました。これが迂闊だった(笑) やられた!

断言しましょう。読者は、この小説の1文字目を読んだ瞬間に、作者に敗北します。始まったときには、すでに終わっている。映画『SAW』(シリーズ第1作目)のオチを思い出しました。清々しいほどの絶望感です。カ・イ・カ・ン。

物語の後半で事件の真相が明らかになるにつれて、背筋がゾッとするはずです。もし自分が、この事件の犯人に標的にされたら……おそらく、身の潔白を証明できないと思います。まさに、孔明の罠。とんでもない復讐方法です。読めばわかる!

著者について


司凍季(@toki9195)さん。お名前は「つかさ・とき」と読みます。

司さんは、10冊以上の著作があるプロの推理作家です。デビュー作の『からくり人形は五度笑う』は、島田荘司氏の推薦によって上梓されました。本格派ミステリを得意とした「知る人ぞ知る」女性の推理作家です。

2013年現在、司さんの既刊は、新刊書店では入手しにくい状況です。しかし、スローペースではありますが、電子書籍ストアでの配信も始まっています。司さんにかぎらず、絶版になってしまった良作が、電子書籍化をきっかけにして「再評価」される流れに期待します!


  • 頸折れ人形考
  • 著者:司凍季
  • 価格:290円
  • 読了にかかる時間:約1時間(個人差があります)
「情念」度
★★★★☆(4)
「密室殺人」度
★★★☆☆(3)
「孔明の罠」度
★★★★★(5)
「総合」
★★★★☆(4)

あわせて読みたい


このたび、鮎川哲也『本格推理』の入選作が、著者みずからの手によって陽の目を見ることになりました。たいへん有意義なKDP(キンドル・ダイレクト・パブリッシング)の活用例です。

亡霊航路亡霊航路 [Kindle版]
著者:司凍季
出版: 司凍季
(2013-03-25)

第1回 鮎川哲也「本格推理」入選作

寝台特急「あさかぜ3号」で身体中をメッタ差しにされた男の死体が発見された。しかし死亡時刻、容疑者は瀬戸内海航路のフェリーに乗っていた――! 船に乗っていた人間がどうやって寝台特急の男を殺せたのか?

鮎川哲也氏 評
「交通機関を用いてアリバイを偽造する話は、かつてわたしも試みたことがあるのだけれど、これがなかなか難しいものだった。司氏は鉄道ミステリーに不慣れなひと、もっと直截にいえば不得手な作家だとばかり考えていたのだが、どうしてどうして、時刻表をひと睨みするや忽ち新手のトリックを案出したのである」

鮎川哲也『本格推理』とは?


1993年からスタートした、一般公募によって掲載作が決まるアンソロジー企画です。選者は『鬼貫警部シリーズ』などで有名な推理作家・鮎川哲也氏。プロデビューを果たした投稿者や入選者が多いことでも有名な、小説コンテストです。

投稿・入選経験者を挙げると、シリーズ累計300万部のベストセラー『謎解きはディナーのあとで』の作者である東川篤哉をはじめ、田中啓文、柄刀一、二階堂黎人、メフィスト賞組である蘇部健一、霧舎巧、黒田研二、津村巧など、錚々たるメンバーを世に送り出す役割を果たしています。

製作ツールは?




司さんは『一太郎 2013 玄』のEPUB出力機能を活用しているようです。

ライブドアブログでも、高品質なEPUBファイルを作成できます。タテ書き、ヨコ書き、ルビ(ふりがな)、縦中横、傍点、画像、ハイパーリンクなどの機能も満載。ブログを書くようにして、そのままKindleストアに提出できるEPUBファイルが作成できます。オススメ!

冬休みの宿題にどうぞ! ライブドアブログでEPUBの電子書籍を作る方法 - キンドる速報(KDPの感想・レビュー)

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