こんにちは!
キンドる速報ライター☆イマガワだお( ^ω^)

今回ご紹介するのは「知っておきたい電子書籍の教養」が学べるキンドル本です。

日の丸電子書籍はなぜ敗れたか -21st century eBook Story- (電子書籍の世紀)日の丸電子書籍はなぜ敗れたか -21st century eBook Story- (電子書籍の世紀) [Kindle版]
著者:鈴木秀生
出版: hidebook
(2013-03-17)

2004年、日本一の家電メーカーが世界に発表した、電子書籍専用端末とともに、出版業界から電子書籍の世界に飛び出した一人の当事者が語る、21世紀の「新しい本」の物語。

電子書籍ビジネスの歴史と未来がまるごとわかる、電子書籍界の入門書。
これを読まずして、もう電子書籍は語れない――。

●目次

【序章】 語り継ぐ「新しい本の物語」

<前篇 2004~2009>
電子ブックの赤ちゃんとの出会い
出版業界発 電子書籍行き
国産電子書籍専用端末で本を救え
eBook時代 はじまる!
電子コミックの夜明け
電子書籍「日本代表」eBookJapanの挑戦
出でよ!漫画文化の伝承者たち
ケータイコミックバブルの終焉
著者たちの「独立運動」
マンガ家vs電子書店抗争勃発?
電子書籍市場を育てた2人の名プロデューサー
電子出版苦闘記
世界電子書籍大戦勃発
さらば、日の丸電子書店

<中篇 2010~2012>
No apple?
『電子書籍の衝撃』が伝えたもの
「電子書籍を日本一売った」のは誰?
ホリエモンが語った電子出版のリアル
iPad狂想曲の果てに
夢やぶれて~編集者は再び夢を見るか~
雑誌死すとも雑誌記事は死せず
「雑誌の雑誌」メディアプロジェクト
3.11以後の雑誌の行方
編集者なんていらない?
電子出版だけで生きていく
出版社から離脱する編集者たち
村上春樹から学ぶ、書店メディア再生法
マンガ原作映画は誰のためか
売れんのか?Kindle作家への挑戦状
非モテ戦線異状なし! 出版人の生き残り方
Koboの炎上が照らしたもの
「読書革命」なんていらない?
Koboが復権できるたった一つの道
電子図書館は出版界の敵か
日の丸電子書店再び
Kindleがひとり勝ちした3つの理由~電子書籍端末戦争の真実~

<後篇 2013>
取次なんていらない?出版界の嫌われ者に宿っていたもの
2体の巨神兵が覚醒したワケ
正論の時代の終わり
新しい「本の道」 
New Book Paradiso 
日の丸電子書籍の敗因
編集者と書店員が集うメディアへ
出版敗戦のA級戦犯
書店の再生をかけて
本当に守るべきもの

※下記プレビューはPC向けです。


対象読者は?


タイトルは『日の丸電子書籍はなぜ敗れたか』という堅苦しい感じですが、語り口は平易です。

この本を読むべきなのは、以下のような人です。

・本好き・読書好きを自認している人
・電子書籍に興味がある人

もしくは……

・個人作家(あるいは志望者)
・現役のプロ作家・プロ漫画家(あるいは志望者)

日本における「電子書籍の発展と普及」に身をささげた著者が、2004~2013年のあいだに、見て、聞いて、感じたことを振り返った「出版業界レポート」です。成功例はもちろんのこと、失敗例まで赤裸々に語られているのが面白いです。

著者について


鈴木秀生(@hidedy)さん。「すずき・ひでお」と読みます。

「トーハン(出版取次)」→「eBookJapan(電子書籍ストア)」→「ボイジャージャパン(コンテンツ制作)」という、出版と電子書籍の最前線を渡り歩いてきた、現役バリバリの業界人です。

おもな内容


本書『日の丸電子書籍はなぜ敗れたか』は、全46章で構成されていて、読み応えは十分。目次タイトルからは中身が推測しにくいと思いますので、いくつか簡単な解説を添えたいと思います。

以下、見出しは「目次タイトル」です。

電子ブックの赤ちゃんとの出会い


いまから9年前。2004年。当時、著者は「出版取次(問屋)」に勤めていました。

松下電機産業(現パナソニック)が開発した電子書籍端末『Σ(シグマ)ブック』と、Sonyが開発した『Liblie(リブリエ)』が登場した頃です。

当時の電子書籍端末は、あまり使いやすいものではなかったそうです。ストアの品揃えも貧弱。そんな『Σブック』や『Liblie』は、電子書籍の明るい未来を連想させるものではありませんでした。

だからといって、紙の出版物の未来が希望に満ちあふれていたわけでもありません。著者は、転職を決断します。いまは取るに足らない存在の「電子書籍」は、縮みゆく出版業界に残された一縷の希望ではないか、と。

出版業界発 電子書籍行き


『トーハン』から『eBookJapan』に転職するときの奮闘記。奥さんに反対されながらも、新しい会社の面接を受けます。しかし、1度目は不採用でした。採用枠を勝ち取るためにとった秘策とは……。

eBook時代 はじまる!


この章では、『Σ(シグマ)ブック』開発元の松下電機について語られています。出版業界と電機業界の「価値観の違い」で、相当苦しめられたそうです。

電子コミックの夜明け


松下電機との共同プロジェクトが空中分解するなか、電子書籍版『北斗の拳』がヒットを記録。日本の電子書籍史上、はじめて1万ダウンロードを突破しました。この「1万ダウンロードの壁」は、成功するデジタルコンテンツの指標となる数字です。

出でよ!漫画文化の伝承者たち


『北斗の拳』の無料ダウンロード企画をめぐる、集英社とのトラブルの詳細が書かれています。じつは『北斗の拳』というコンテンツは、集英社とは別の会社が管理しているそうです。法的には問題ないものの、集英社に仁義を通さなかったため、なんと8年間も確執があったようです。出版業界のトンチンカンな権利意識がよくわかるエピソードです。

著者たちの「独立運動」


プロの漫画家たちが抱いている「出版社」への不信感について。実際に、著者が見聞きした事例が紹介されています。雑誌連載などの発表の場を失ってしまった中堅の漫画家たちは、かつて出版社に「使い捨て」にされたことを、けっして忘れていないのです。

No apple?


2010年4月。アップルの『App Store』で、ソフトバンク社長の孫正義氏の『志高く 孫正義 正伝』が、あっというまに1万部以上のヒットを記録。日本の『App Store』で電子書籍アプリがそれだけ売れたことは大きなニュースになりました。

この出来事をきっかけに、電子書籍制作の依頼が殺到したそうです。まさに「風向きが変わった」瞬間ですね。

『電子書籍の衝撃』が伝えたもの


佐々木俊尚『電子書籍の衝撃』が、紙版に先行して電子書籍版を110円で販売したところ、最終的に4万ダウンロードを突破しました。この出来事によって立証されたことは、以下の3点。

・電子版を紙版価格より廉価で先行配信すると、事前プロモーション効果で紙版も売れる

・紙と電子は読者を食い合うものではなく相乗効果をもたらせる

・Web連載→電子書籍配信→書籍販売という新たな出版モデル

この他にも、著者自身が携わった電子書籍プロモーション事例と結果が、くわしく紹介されています。

非モテ戦線異状なし! 出版人の生き残り方


『App Store』を舞台に、著者自身が、少人数と少コストで電子書籍を販売したときの体験がくわしく書かれています。テーマは「モテる」、専門ライターが10日間で執筆。閲覧アプリ開発費はレベニューシェア。

「読書革命」なんていらない?


電子書籍がもたらすものは「読書革命」ではない、というお話。著者は『ただ、面白い本、役立つ本、泣ける本を手頃な価格ですぐに読みたい』を実現する必要があり、それは「書店革命」によってもたらされると主張しています。

Kindleがひとり勝ちした3つの理由


第1に、都市部の駅内や電車内広告の大量出稿。Amazonサイトでの露出も効果的でした。第2に、世界中のユーザーが利用することが前提で作られた強固なシステム。第3に、Amazonは10年以上かけて「ネットで本を買うならAmazon」というブランドを確立していたという事実。とくに、3つ目は納得です。

取次なんていらない?


出版取次の歴史が語られています。戦時中の取次は、出版検閲のための国策会社だったのです。出版社や書店から嫌われている「取次」ですが、敗戦後における「表現の自由」を支えた「本の霊力」が集まる場所であったということが解説されています。元トーハン社員だからこそ語れる内容。必読。

本当に守るべきもの


この章は、かなり重要! 戦後に再編された「出版取次」は、政府やGHQから「表現の自由」を死守する役割を果たしました。じつは、日の丸(国内)電子書店にも、同様の役割が求められているのです。

日の丸電子書店が守るべきものは、電子書籍の価格ではなかった。電子書籍を通じた、言論と表現の自由だったのです

もしも、国内における『Amazon』と『Apple』の電子書籍流通シェアが8割を超えてしまったら……

流通の自由とともに、モノを言う自由やモノを書く自由が失われます。

本書のキモは、上記の引用部分にすべて集約されているのかもしれません。

業界人ブログの電子書籍化


本書の内容は、著者のブログ『本とeBookの公園 ― 21st century Book Story ―』を編集したものです。著者自身によって大幅に加筆修正され、読みやすくなっています。

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。

「業界のウラ話」度
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「パッション」度
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「凛ちゃんの将来が楽しみ」度
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「総合」
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