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つんどく速報ライター☆イマガワです。
本日ご紹介するのは、映画にもなった『苦役列車』の主人公、北町貫多もびっくりな、自己中心的かつ無軌道な無頼漢が登場する小説です。
つんどく速報ライター☆イマガワです。
本日ご紹介するのは、映画にもなった『苦役列車』の主人公、北町貫多もびっくりな、自己中心的かつ無軌道な無頼漢が登場する小説です。
俺は絶対悪くない [Kindle版]
著者:板倉吉三郎
出版: 板倉吉三郎
(2013-02-25)
日々、小さな悪い事をして、世間に対する悪意を満たしている啓太。そんな啓太が、会社を首になり、人の車のタイヤに釘を立てて回るという悪行に目覚めてしまう。
しかし、啓太は後悔をする。追いつめられて、神様に頼るしかなくなった啓太は、神様に許してもらおうとゴミ拾いなどをし出すのだが……。
※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。
すべて世間が悪い
啓太。23歳。高卒。工業系の小さな町工場で働いている。月給は12万円。つましく生きることしかできない。啓太は、生きていて何も良いことがないと嘆いていた。自分は幸福ではない → 世間のせいだ。そう決めつけて毎日を過ごしていた。
幸せそうなのが悪い
ひがみ根性が服を着ているような男。そんな啓太の趣味は「絶対に捕まらないような嫌がらせ」をすることだった。
コーヒーのスチール缶を、他人の乗用車のタイヤの下に設置する。そのあと、車の持ち主が知らずに発進させたときの「戸惑う表情、くやしそうな表情」を、安全な場所から眺めて楽しんでいた。このクズ野郎は、他人を不幸にしさえすれば、代わりに自分が幸福になれると信じて疑わない。
日頃のおこないが悪い
あるとき、啓太の軽四自動車がパンクしてしまう。さらに追い打ちをかけるようにして、勤めていた町工場をリストラされてしまう。m9(^Д^)プギャー 退職金は、たったの10万円。貯金は3万円しかなかった。ざまぁ。
追い打ちをかけるようにして振りかかる不幸。これまでの行いを反省するかとおもいきや、ゴミ野郎の迷惑行為はエスカレートしていく。
高級車に乗っているのが悪い
失業した啓太は、さっそくホームセンターに行って「コンクリート用の釘」を買い求める。病院の駐車場におもむき、釘の先を立てて、高級そうな自動車のタイヤ下に仕掛ける。他人、とくに金持ちを不幸にすれば、自分のところにカネが巡ってくるはずだと思っていた。氏ねよ、クズ野郎。
募金しないのが悪い
腹の立つことに、啓太のようなゴミクズにも恋人がいる。桃香。20歳。お互いが「カラダ目当て」で付き合い始めただけであり、とくに愛し合ってもいなかった。しかし、失業後にますます悪行を重ねるゴキブリ野郎を見かねて、桃香がアドバイスをする。
「悪い事が積み重なって啓太に不幸をもたらすんだよ」
「いい事をすれば何倍にもなっていい事が帰ってくる」
「コンビニの募金箱におつりを入れるとかさ、お年寄りを大切にするとかさ、町の清掃をするとかさ」
たび重なる不幸に見舞われて心が弱っていた啓太は、桃香のアドバイス通りに、安易な罪滅ぼしを実行するのだが……。
KDP史上、最悪のクズ主人公
日本版のKDP(キンドル・ダイレクト・パブリッシング)が始まってから、およそ5ヶ月が経ちましたが、本作『俺は絶対悪くない』ほどのクズ主人公に出会ったのは、これが初めてです。
コンクリート釘を使った迷惑行為のあと、もしや警察に逮捕されるのではないかという恐怖に苛まれた啓太は、罪滅ぼしのためにコンビニの募金箱にカネを入れようとします。
啓太の募金額
いくらだと思います? なんと「1万円」です。さらに、コンビニを出てからすぐに、道を歩いている老婆を見つけては「親切の押し売り」を行おうとして拒絶されます。
しかし、強迫観念にとらわれている啓太は、やるに事欠いて、老婆に無理矢理「1万円」を押しつけてその場から立ち去るのです。まさに、愚者の典型のような振る舞いを見せてくれます。あたかも『苦役列車』で有名な西村賢太氏の私小説を読んでいる時のように、笑いが止まらなくなりました。
読者を選ぶ小説
ダメ人間が小説の題材になっている場合、たいていは「愛すべき」とか「憎めない」要素が含まれているものですが、本作にはそれが見当たりません。とくに、啓太がイタズラの標的にするような「幸福な人々」に該当する読者は、まちがいなく不快な気分になるはずです。
本作は、読者を選ぶ小説です。この小説を楽しむためには、多かれ少なかれ「普段の心掛けが悪い」人間である必要があります。
□ いまの生活に大きな不満がある。
□ 政治家と官僚と大企業こそが、諸悪の根源だ。
□ 愛想のわるいコンビニ店員が気に入らない。
□ 心の底から謝罪した経験がほとんど無い。
□テレビやネットや屋外で、笑顔の人々を見かけると腹が立つ。
上記のチェック項目の答えが「たった1つでもYES」の人は、本作『俺は絶対悪くない』を楽しく読めるはずです。むしろ、主人公に共感できるかもしれません。読めばわかる!
著者について
板倉吉三郎さん(@taka0123)。「いたくら・きちさぶろう」と読みます。
板倉さんは、2006年に開催された『第10回伊豆文学賞』にて、最優秀賞を受賞しています。伊豆文学賞とは、川端康成『伊豆の踊子』、井上靖『しろばんば』などの、伊豆を舞台とした文学作品にちなんで創設されたものです。静岡県が主催している、地元密着型の小説コンテストであり、2013年現在すでに「第16回」の開催をむかえています。
Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。
- 俺は絶対悪くない
- 著者:板倉吉三郎
- 価格:250円
- 読了にかかる時間:約1時間(個人差があります)
- 「ダメ人間」度
- ★★★★☆(4)
- 「共感してはいけない」度
- ★★★★☆(4)
- 「西村賢太っぽい」度
- ★★★★★(5)
- 「総合」
- ★★★★☆(4)
ちなみに
板倉さんの受賞作は出版されています。Amazonでも入手可能。
ぼくらの自由―第10回「伊豆文学賞」優秀作品集 (「伊豆文学賞」優秀作品集 (第10回)) [単行本]
出版: 静岡新聞社
(2007-03)
参考リンク
■【KDP最前線】こんにちわソウルメイト「スピちゃんとフリーター」を執筆した板倉吉三郎さんにインタビュー | きんどるどうでしょう
■静岡県/しずおか文化のページ/伊豆文学賞
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