こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。

今年2013年の元旦に、数々の文学者たちの著作権保護期間が過ぎました。今回は、名著のパブリックドメイン化を踏まえて製作された、野心的なダイレクト出版物のご紹介です。


女たちの遠野物語 - 十二話でわかる遠野物語の世界女たちの遠野物語 - 十二話でわかる遠野物語の世界 [Kindle版]
著者:柳田 國男
出版:焚書刊行会
(2013-03-18)

全119話ある『遠野物語』の中から、女性にまつわる12のエピソードを選出して再構成したダイジェスト版『遠野物語』。
出来あがったのは、妖怪でも昔話でもなく、現代とかわらない感性を持った百年前の人間の姿でした――。

日本文学の名作、柳田國男の『遠野物語』にかつて挑み、読み切ることができなかった人にこそ読んでほしい“女たち”の遠野物語。解説は、岩手県遠野市出身の佐々木大輔が務めさせていただきます。

■もくじ
1. 大海嘯で死んだ妻 … 19世紀末の三陸大津波の記憶とNTR(寝取られ)
2. 邪宗の念仏者 … オシラサマを語ったおばあさんは、まじないで蛇を殺し鳥を落とす
3. 鎌で切られし姑 … 「発言小町」向きの嫁姑問題。オチはつげ義春的
4. 山女の夫が形見を取り返しにくる話 … そんな簡単に人を撃つな
5. 山人の妻となった女 … 誘拐されたり人質になったりした人が犯人に恋するあれ
6. 斧を拾いし娘との約束 … あちちあち。なにしてんだろうか
7. 待てちゃア … それは「太陽のマテ茶」
8. 死助の山のカッコ花 … パズドラやLINE POPに夢中になるのと変わらない百年前の風景
9. おばあさんが来た! … ドリフ的です
10. 川童を産む … 妖怪の話、ではなくて単なるゴシップ
11. サムトの婆 … 夢を語って上京したきり盆暮れにも帰ってこない音信不通の親戚のようなもの
12. マヨイガの赤き椀を拾いし女 … 大人の階段のぼる?♪

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。



遠野物語は自費出版本だった


遠野物語は、明治43年(1910年)に、柳田國男の自費で出版されました。発行された350部すべてに番号が振られており、何番の本を誰が買ったのか、その名簿が残っています。

001番 佐々木喜善(ネタ提供者)
002番 柳田國男(*´∀`)
022番 早稲田大学図書館
258番 芥川龍之介
282番 南方熊楠
291番 周作人(魯迅の弟)

他にも、島崎藤村、田山花袋、泉鏡花に献本をしています。

のちに再評価の流れに一役買うことになる折口信夫(国学・民俗学の権威)は、『遠野物語』の初版本を、神保町の古本屋で見つけます。本人いわく「5銭(定価の1/10の価格)で売られていて、ほとんど読んだ形跡がなかった」そうです。

いまでは民俗学の権威として名高い『遠野物語』も、はじめは少部数の自費出版本だったこともあって、一部の人間にしか知られていませんでした。

柳田國男の本職は『官僚』


東京帝国大学法科卒。農商務省に配属され、東北の農村の調査をおこなっていました。『遠野』は岩手県にある在所なので、職業も『遠野物語』が誕生するための重要な要素だったようです。

柳田は、のちに内閣法制局に配属されて、日韓併合条約の起草にも関わったとも言われています。昭和21年の日本国憲法の審議にも立ち会っており、まさに華麗なる経歴の持ち主ですね。

女たちの遠野物語について


1910年(明治43年)に発行された自費出版物を、その103年後、著作権保護期間が過ぎたことを好機に、独自のカテゴライズと解説を加えて『セルフ/ダイレクトパブリッシング』したのが、今回取り上げた本書です。

片や明治政府の官僚、片や平成のIT企業のウェブディレクターという、まさに隔世の感をあらわす取り合わせです。加えて言うならば、100年の時を経て、いかに個人の思想や意見を広く発信するためのハードルが下がったかを象徴するKDP本だと思いました。

著者について


佐々木大輔さん(@sasakill)。出身は、岩手県遠野市。NHN Japan 株式会社に所属。『ダイレクト文藝マガジン』の発行人であり、当ブログ『つんどく速報』の編集長です。

昨年の11月に上梓された『セルフパブリッシング狂時代』は、今後もアップデートを重ねていくようなので、未読の方はぜひ手にとってみてください。

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。

「女に翻弄されてる」度
★★★★☆(4)
「解説本」度
★★★☆☆(3)
「佐々木一族の逆襲」度
★★★★☆(4)
「総合」
★★★☆☆(3)

参考になる本


この『女たちの遠野物語』をレビューするにあたり、2冊の本を取り寄せて予習しました。
ちなみに『拾遺』には プロペラ飛行機が遠野に初めてキタ━(゚∀゚)━! という話も収録されています。『遠野物語』という書物の、意外な一面を見ることができるので是非。

『遠野物語』を読み解く (平凡社新書 460) [新書]
遠野物語―付・遠野物語拾遺 (角川ソフィア文庫) [文庫]



表紙イラストについて


レビューした『女たちの遠野物語』には、高品質な表紙イラストが採用されていますが、これには秘密があります。

【新刊】「女たちの遠野物語」佐々木大輔(著)の表紙制作を担当しました。 | きんどるどうでしょう

プロのイラストレーターにKDP本の表紙イラストを依頼できる企画があり、それを利用したのです。

主催したのは、キンドルストアのニュースサイト『きんどるどうでしょう』。試験的な企画だったようですが、こういうサービスが増えれば、KDP作家にとっては心強いですね。

あなたの一冊をレビューします


キンドる速報では、電子書籍のレビュー候補を受け付けています。
ご応募はこちらから。
おもしろい電子書籍を教えてください(自薦・他薦を問いません)

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット