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つんどく速報ライター☆イマガワです。

徳川家康・影武者説のバリエーションが、また1つ増えましたよ! 緻密な設定に裏打ちされた、電子書籍で楽しめる架空戦記小説をご紹介します。


二人家康二人家康 [Kindle版]
著者:仲路さとる
(2012-11-07)

 徳川家にまつわる数々の謎。
●なぜ、本能寺の変の時、家康は徳川四天王など重臣ばかり三十余名を引き連れて堺見物をしていたのか。
●なぜ、本能寺の変の時、家康が岡崎へもどる伊賀越えのルートが二つ存在するのか。
●なぜ、家康は桶狭間の合戦のとき、尾張への進軍途中に、わざわざ寄り道をしてまで母・於大を訪ねたのか。
●なぜ、家康と信長が同盟を結ぶとき、水野信元を交えた三人で誓書を浮かべた酒を一緒に飲み干したのか。
 その他、多くの謎に迫る。

※本書は、多数の史料を参考にしたうえで、著者の推測に基づいて作られた作品です。

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。



簡単に言うと、こんなお話


本書には、2人の家康が登場します。竹千代と梅千代です。父親が異なりますが、ふたりの母親は同じ。だから顔がよく似ています。以降、竹千代はマジ家康。梅千代はニセ家康と記述します。

ニセ家康こと梅千代の存在が、のちの『本能寺の変』に大いに関わっているというストーリーの歴史改変小説です。

水野氏の屈辱


『本能寺の変』の発端について、家康の祖父である松平清康の時代にまでさかのぼって書かれています。

三河地方に、水野忠政という武将がいました。この忠政には、美人の側室がいました。しかし、松平清康(家康の祖父)に寝取られてしまいます。ムカつきましたが、松平氏のバックには、強大な勢力である今川氏が控えていたので、泣き寝入りせざるを得ませんでした。

親の恨みを、子が晴らす


ちなみに水野忠政は、妻だけではなく、娘も松平氏に差し出しています。この娘が、2人の家康の母となる人物です。

寝取られた忠政には、息子がいました。水野信元です。今川氏や松平氏にムカついていた信元は、あてつけるようにして織田氏に寝返ります。

政略結婚として松平氏に嫁いでいた家康ママは離縁され、水野家に戻ってきます。そして、このバツイチ独身時代に、どこの馬の骨ともわからない男と通じ合い、梅千代ことニセ家康を身ごもります。ちなみに、このようなことは史実にありません。まことに大胆な歴史改変だといえます。

史実の人質事件を巧みに改変する


松平広忠という武将がいました。家康のパパです。ますます今川氏への忠誠を証明するために、幼いマジ家康を人質として差し出します。しかし、途中で誘拐されてしまい、今川氏の対抗勢力だった織田氏のもとで人質としての生活を余儀なくされます。これは史実でも有名な、家康の長い人質生活のはじまりです。

その当時、織田信長の父である信秀が当主をつとめていました。すでに寝返っていた水野信元は、妹が産んだニセ家康を、マジ家康と入れ替えてはどうかと提案します。母親が同じなので、顔はよく似ていました。マジ家康のほうを寺に隠して、いざという時の切り札にしようというのです。

大ボラを楽しめる本格歴史小説


こうして、マジ家康のほうは、浄慶(じょうけい)という名前の僧侶として育てられます。いっぽうのニセ家康は、織田家の人質である竹千代として扱われ、のちに松平家の当主となります。そして、本能寺の変の直後、ふたりは初めて対面することになるのですが……。

徳川家康には影武者がいた!? というテーマのフィクションは珍しくありませんが、本書『二人家康』は、すこし趣向が異なります。およそ20冊の文献をもとにして、ふたりの家康を入れ替えたまま、いかに史実どおりのタイムテーブルに沿って再構成してみせるかに挑んだ歴史改変小説です。

元ネタの書物は、初版500部だった


むかし、週刊少年ジャンプで『影武者徳川家康』というマンガが連載されていました。北斗の拳でおなじみの原哲夫さんが作画を担当した人気マンガです。

じつは、隆慶一郎の歴史小説をはじめ、家康影武者説を扱った小説の元ネタになったとされる書物が存在します。本書『二人家康』において、マジ家康が一時的に名乗った浄慶という名前も、その元ネタ本に登場します。

史疑 徳川家康事蹟 覆刻版+現代語訳史疑 徳川家康事蹟 覆刻版+現代語訳 [単行本]
著者:村岡 素一郎
出版:批評社
(2000-04)


1904年(明治37年)、福岡県出身の一般人によって初版500部だけ出版されたこの書籍が、徳川家康影武者説のネタ元だとされています。

柳田國男『遠野物語』が1910年(明治43年)に350部発行(参考リンク)ですから、明治という時代の豊かさはもちろんのこと、後世に多大な影響を及ぼす名著も、はじめは少部数しか刷られなかったのです。これらの事例は、現代のダイレクトパブリッシャー(個人作家)たちを勇気づけてくれます。

著者について


仲路さとるさん。『なかじ・さとる』と読みます。90年代から、学研M文庫にて架空戦記小説を書き続けている作家さんです。著作は50冊以上。どうりで設定が緻密なわけですね。代表作は『時空戦国志』『蓬莱伝』ほか多数。

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。

  • 二人家康
  • 著者:仲路さとる
  • 価格:315円
  • 読了にかかる時間:約3.5時間(個人差があります)
「歴史改変」度
★★★★☆(4)
「設定の緻密」度
★★★★☆(4)
「史実の整合性」度
★★★★☆(4)
「総合」
★★★★☆(4)



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