こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。
※次の人は、本書を読む前に医師に相談してください。
(1) 広義のIT業界で働いた経験がある人
(2) (1)に該当する、かつて事業家・起業家・経営者だった人
(3) 経営不振に乗じて会社を乗っ取られた経験がある人
( 現在の症状が悪化したり、心的外傷を再発するおそれがあります )
つんどく速報ライター☆イマガワです。
※次の人は、本書を読む前に医師に相談してください。
(1) 広義のIT業界で働いた経験がある人
(2) (1)に該当する、かつて事業家・起業家・経営者だった人
(3) 経営不振に乗じて会社を乗っ取られた経験がある人
( 現在の症状が悪化したり、心的外傷を再発するおそれがあります )
ゆっくりとオレンジが潰れる [Kindle版]
著者:小林楓
(2013-06-04)
ひとりのIT起業家が受けとった奇妙なメール。それは自分の足跡を振り返る旅への入り口だった。……ピンチョン、ジョイス、ニーチェから夏目漱石まで。それらが縦横に接合され、めくるめく猥雑な言葉のトランスへと読者を誘う……
装画・表紙デザイン:佐藤直樹(ASYL)/電子版制作:深沢英次(@pictex)
文字数・約5万字(Kindke PEの標準フォントサイズで約190ページ)
本書は深沢英次(@pictex)が制作・販売しています。
※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。
会社を乗っ取られたIT起業家の嘆き
優秀な友人たちに誘われたことをきっかけにして、ベンチャー企業の共同創業者として名を連ねたのち、それなりに成功を収めたものの、経営不振に乗じて会社を乗っ取られてしまう。
役員の席は追われたが、株価対策のためなのか、いまだに社内の片隅で飼い殺しにされていた。そんな元経営者で哀れなバツイチアラフォー男の負け犬生活が書かれた小説。これで、だいたいあってる。
単に、あらすじだけを、なぞるだけならば。
生気を失っても、人は死ぬことができない
男の名前は a071fz という。英数字の羅列だが、たしかに生身の人間である。40歳。バツイチ。養育義務を負わなければいけない娘が1人いる。
潮の変わり目を読みあやまり、挙げ句、時流をうまく乗りこなした若い起業家たちに会社を乗っ取られ、a071fzの事業家としての人生は終わった。
そのまま会社から放り出されて一文無しになっていれば、ふたたび奮起できたかもしれない。だが、株価対策なのか世間への体裁を保つためなのか、乗っ取り屋たちは生かさず殺さずでa071fzを飼い殺しのままにする。
乗っ取り屋がヘッドハントしてきた元外資系金融会社の傍若無人な男は、のたまう。
「オジサンさ、もう今期末は本当にピンチだよ。あんたたちの放漫経営のツケってのかな。なに、アレ? 負の遺産ってやつ? またひとつ事業を畳んで特別損失の計上だってよ」
乗っ取り屋たちは、赤字を子会社にかぶせ、財務諸表の体裁を整えたあとに裏口上場でIPO(新規株式公開)して売り抜けるつもりでいる、とんでもない連中。
かつての仲間も、家族も、すべて失った
誇りを奪われたうえに、妻は娘をつれてa071fzの元を去っていった。こんなみじめな思いまでして生きていたくない。けれども、思い切ってみずから命を絶つ勇気もない。
自殺してしまった仲間が書いたアルゴリズムの美しさに詩情を感じたことを懐かしく思い、希望と矜持に満ちあふれていた過去の日々に思いを馳せるが、そんなことで気持ちが慰められるはずもなかった。
起業家たちの夕暮れ
靄(もや)がかった他人の視覚を追体験している感じ。もはや恍惚とした意識のなかでしか日々を送れない、すでに若さと矜持を失ってしまった元経営者の独白小説。これはやばい。
一昔前。あの時代。『世界を変える』『社会に貢献したい』……そんなお題目など知るかとばかりに、爆発的な成長を予感させるIT分野にすべてを賭けて、ひたすら事業欲の趣くままに生きていた、野心あふれる人々の後日譚としても読むことができます。
もはや恍惚の人となったa071fzの断片化した意識こそが、冒頭の100項目以上のインデックス(目次)であり、本書をいっそう楽しむための仕掛けです。読めばわかる!
Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)
- ゆっくりとオレンジが潰れる
- 著者:小林楓
- 価格:350円
- 読了にかかる時間:約1.5時間(個人差があります)
- 「IT業界の影」度
- ★★★★★(5)
- 「幻想文学」度
- ★★★★★(5)
- 「Who are you?」度
- ★★★★★(5)
- 「総合」
- ★★★★★(5)
著者について
小林楓さん(who kobayashi)。『こばやし・ふう』と読みます。ブログ黎明期より名無しで活動してきたネット作家。古今東西の文芸読みであり、作品は一部で話題に。新聞等でも時事評論を寄稿。
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