こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。

好きな噺は『子ほめ』と『千早振る』。今回ご紹介するのは、落語を元ネタにしたパロディ小説です。

落語り帳 春寄席 (落語り帳シリーズ)落語り帳 春寄席 (落語り帳シリーズ) [Kindle版]
著者:十千しゃなお イラスト:なしこ
出版:十千しゃなお
(2013-06-13)

大人気(勝手に言ってるだけ)落語パロディシリーズの初総集編。

【下敷きにしている古典落語リスト】
饅頭怖い,寿限無,目黒のさんま,風が吹けば桶屋が儲かる,試し酒,井戸の茶碗,開帳の雪隠,三都三人絵師,あたご山,長短,金の味,朝顔,朝友,いびき駕籠屋

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。


落語+女子高生


有名な噺(はなし)のシチュエーションを、現代日本の女子高生たちに置き換えて再演したらどうなるのか?

そんな大胆な着想によって書かれた、涙あり笑いありのショートストーリー集です。

ファミレスで寿限無を再現!


本書における野心的な試みの成果を、もっとも如実にあらわしているのが『赴亜味例巣』という題名の作品です。これは……

寿限無、寿限無 五劫の擦り切れ 海砂利水魚の 水行末 雲来末 風来末 食う寝る処に住む処……(以下略)

というフレーズが有名な古典落語『寿限無』を下敷きにしたコミカルなストーリーです。本書に収録されている全16作品のなかで頭ひとつ飛び抜けているので、ご紹介します。

赴亜味例巣(ふぁみれす)のあらすじ


メインヒロインは2人。亜美(あみ)と楓(かえで)。2人は親友であり、どちらも女子高生です。

亜美がファミレスでバイトをすることになったので、楓が偵察ついでに店に遊びに来ます。そして、悪ノリを生きがいにしている楓は、イジワルな注文をしはじめます。

楓「とりあえずライス二つ」

亜美「はい、ライスがお二つ」

楓「違う違う! ダメだよぉ、もっとリズミカルに言わないと。ライス二つだけじゃなくてライスライス」

このセリフの掛け合いがはじまった瞬間、おもわず鳥肌が立ちました。元ネタの『寿限無』を知っている人なら、この感覚を理解できるはずです。

このやりとりの後、延々と無茶な追加注文とメニュー復唱が繰り返されるシーンは、本家『寿限無』に勝るとも劣らないほど、とち狂った迫力を感じさせます。ちなみに最後のほうでは、以下のような仕上がりに。

「ああもう! ライス、ライス、ごぼうの煮付け、海鮮サラダに水餃子、焼き餃子に揚げ餃子、海老とエリンギのブロシェット、ミートスパにタラコスパ、アイス、アイス、アイスのシュークリーム、シュークリームの苺味、苺味のパンナコッタ、パンバイキングのドリンクバー。以上でよろしいですか?」

これはヤバイ(笑) この1作を読むためだけに購入しても良いというくらい『赴亜味例巣』は、落語のパロディとして大成功している小説です。

感想


収録されているのは全16作品。そのうち落語をもとにしているのは1314作品。オチを理解するための親切な解説付きなので、落語をよく知らない人でも楽しめます。

オチが成立している話もあれば、パロディがうまくいかず『さむい』読後感のものも若干ありますが……それはご愛敬ということで。

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)

「落語」度
★★★★☆(4)
「パロディ」度
★★★★☆(4)
「次巻こそは新キャラ希望」度
★★★☆☆(3)
「総合」
★★★☆☆(3)



著者について


十千しゃなおさん(@tosensya)。『とおせんしゃなお』と読みます。競走馬のトーセンシャナオーが由来。

Amazon著者ページによると『成K大学在学中の4年生(プラス1)』だそうです。既刊作品は『自殺喫茶』『すすめ!!外道院三姉妹』など。

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