こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。

今回ご紹介するのは、江戸時代のカルト教団に単身乗りこんで、ついには壊滅させたという "猛者" にまつわる歴史実録本です。



天明年間の文化人として名高い戯作者・平秩東作。

平賀源内・大田南畝らと親しく交わり、田沼意次政権をパトロンに据えて蝦夷地開拓などに励んだ彼は、かつて浄土真宗の異端である「御蔵門徒(おくらもんと)」と呼ばれる秘密宗教に潜入し、幕府の密偵としてその摘発に奔走した。

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。

あらすじ


本書『江戸のカルト・稲毛屋金右衛門の御蔵門徒潜入記』は、江戸中期における実在の人物が残した資料をもとに、在野の歴史研究家が筆をふるったノンフィクションです。

主人公――稲毛屋金右衛門(いなげや・きんえもん)の本業は煙草商ですが、平秩東作(へづつ・とうさく)というペンネームのほうが有名です。戯作者としての一面もあり、平賀源内や大田南畝(蜀山人)とも交流がありました。

そんな金右衛門が、うさんくさい隣人から勧誘を受けたことをきっかけに、カルト宗教に入信――ついには教団を壊滅にまで追いこみます。しつこいようですが、江戸中期において、実際にあった事件です。

謎のベールに包まれていた『御蔵門徒』


『御蔵門徒(おくらもんと)』は、浄土真宗の内部において、本山とは異なる教義を密かに伝えていた『秘事法門』と呼ばれる宗派のひとつです。キリスト教と同様に、当時の禁制宗教に該当します。

一説によれば、摘発直前には1万人以上の信者を擁していたとも伝えられており、密かに『蔵』のなかで宗教儀式をおこなうことから、そう呼ばれていました。

たまたま隣人が信者であり、いつか社会に害を為すであろうことを直感した金右衛門は、義憤に駆られます。そして、厳しい秘密主義をかいくぐり、『御蔵門徒』に入信することに成功するのです。

途中からは町奉行所のスパイ(隠密)を拝命したり、潜入捜査がバレそうになったりと、まさに『事実は小説より奇なり』を体現している内容です。

山師な生き方に憧れる


著者いわく、金右衛門は政商になって旨い汁を吸おうとしていた形跡もあるらしく、純粋な正義漢というわけではないのかも。晩年には、幕府の蝦夷地探索事業にも一枚噛んでいるので、ちゃっかり者であるのは間違いないようです。

ちなみに、井上ひさしの短篇集『京伝店の烟草入れ』において『平秩東作』という作品が存在します。内容は "処刑された御蔵門徒の遺児が、すでに他界していた金右衛門の家に押しかける" というもの。本書とあわせて読みたい1冊です。

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)

「読みごたえ」度
★★★★☆(4)
「江戸時代トリビア」度
★★★★☆(4)
「次回作も期待できる」度
★★★★★(5)
「総合」
★★★★☆(4)



著者について


平賀泥水さん(@gasyodo)。『ひらが・でいすい』と読みます。在野史家。全国歴史研究会、南朝歴史研究会所属。


あなたの一冊をレビューします


つんどく速報では、電子書籍のレビュー候補を受け付けています。
ご応募はこちらから。
おもしろい電子書籍を教えてください(自薦・他薦を問いません)

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット