こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。
今回ご紹介するのは、現実ではお近づきになりたくない、ひと癖もふた癖もある人々が登場する短編集です。
つんどく速報ライター☆イマガワです。
今回ご紹介するのは、現実ではお近づきになりたくない、ひと癖もふた癖もある人々が登場する短編集です。
13匹目のバナナフィッシュ [Kindle版]
丸木戸サキ (著), マルキ・ド・サリー (はしがき)
出版: SADOMASOCHISM; 第二版版 (2013/3/28)
ノンジャンル短編小説から、不思議妖しいなさそうでありそうな小話【奇譚】シリーズ、男女の会話形式でストーリィが進む【彼氏と彼女】シリーズ、二人の女の子が恋を語る【彼女と彼女】シリーズ、二人の少年の微妙な関係を描く【彼氏と彼氏】シリーズを収録。
※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。
退屈なようで、けっして退屈ではない
本書『13匹目のバナナフィッシュ』は、ミステリやファンタジーなどのジャンル小説ではなく、いわゆる純文学誌に掲載されているような作風です。21編の短編および掌編小説が収録されています。
本来であれば、すべての作品タイトルを列挙して感想を述べたいところですが、レビュー記事の文字数には制限がありますので、出来の良い1作品だけをピックアップ紹介します。
短編小説『haco.』
はこ。通勤途中の道端にある古めかしい冷蔵庫のことを指しています。あるとき、じつは通電していることに気がつきます。
そもそも、コンセントはどこにある? いったい道端で何を冷やす必要があるというのか? まさか……バラバラ死体が!? などと、語り手の女性は妄想をはじめます。
たったそれだけの話ですが、冷蔵庫をはじめとして、走る人体収納箱こと通勤バスの有り様、ついには『窓のない箱』の実存的な意味についても思索をめぐらせたり、次から次へと飛躍するユニークな思考の軌跡を楽しむことができます。
本編中、友人の彼氏に対してほんの一瞬だけ色目を使ったように受け取れるシーンがありますが、想像するに、語り手の女性はいろいろ寂しいが故にこのような一人遊びに耽溺するに至ったのでは……などと勝手にこじつけたくなりました。
これは作品分析ではなく、いち読者としての素朴な感想です。(言い逃れ)
たった15分ほどで読み終えられる1作品の感想ですら、語ろうと思えばこれほど長くなってしまいます。本書『13匹目のバナナフィッシュ』には、今回レビューした作品を含めて、一筋縄ではいかない21編が収録されています。
いずれにせよ、著者の持ち味は、本書冒頭の『haco.』という作品に凝縮されています。解像度が高い観察眼と繊細な感性の持ち主であり、古めかしい冷蔵庫ひとつ取り上げて、じつに詳(つまび)らかに描写してみせます。
サリンジャーネタもあるよ
本書『13匹目のバナナフィッシュ』のあとがきにおいて、著者が喫煙者であることがほのめかされていますが、これまた勝手に納得。
物憂げな表情で紫煙をくゆらせるのがよく似合う、ルーティンな日常に飽いた女性オフィスワーカーのシルエットを思い浮かべました。単なる妄想ですが。
ちなみに、肝心の表題作である『13匹目のバナナフィッシュ』は、もちろん『サリンジャー』ネタであり、ご期待に違わない出来に仕上がっています。ファンの方はお見逃しなく。
Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)
- 13匹目のバナナフィッシュ
- 著者:丸木戸サキ 解説:マルキ・ド・サリー
- 価格:299円
- 読了にかかる時間:約1.5時間(個人差があります)
- 「表紙がいいね!」度
- ★★★★☆(4)
- 「解像」度
- ★★★★★(5)
- 「サリンジャー」度
- ★★★★☆(4)
- 「総合」
- ★★★★☆(4)
著者について
丸木戸サキさん(@marquisdes)。『まるきど・さき』と読みます。1981年生まれ。モットーは『楽しく生きる』。
著者本人のインタビューが読めます。→ 【KDP最前線】ようこそ掌編の箱庭へ「13匹目のバナナフィッシュ」を執筆した丸木戸サキさんにインタビュー | きんどるどうでしょう
あなたの一冊をレビューします
つんどく速報では、電子書籍のレビュー候補を受け付けています。
ご応募はこちらから。
おもしろい電子書籍を教えてください(自薦・他薦を問いません)bookdi.gger.jp に関するツイート
コメント