こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。
日本版KDP開始直後の電子書籍界隈において『限界集落(ギリギリ)温泉』という漫画が話題になりました。
今回ご紹介するのは、くしくも『限界集落問題の解決』という同じテーマを扱った長編小説です。
つんどく速報ライター☆イマガワです。
日本版KDP開始直後の電子書籍界隈において『限界集落(ギリギリ)温泉』という漫画が話題になりました。
今回ご紹介するのは、くしくも『限界集落問題の解決』という同じテーマを扱った長編小説です。
こくいきさん [Kindle版]
橘川 真古一 (著)
出版: 橘川 真古一; 1版 (2013/8/10)
「山をおりませんか?」
集落の新リーダーであるはずだった伊紀佐和乃から発せられた言葉は集落営農を始めた姥捨集落のムラビト達を驚愕させた。
きれい事では片付けられない限界集落の現状と因習……すべては60年前から始まっていた。
山間の集落を舞台にした大河ミステリはやがて社会問題への一つの答えを指し示す――
※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。
もしも、この小説を誰かに勧めるならば
どのような表現を用いれば良いか? 考えた結果『もしドラ』のようなつもりで読めばいいと勧めることにしました。
本書のキーマン――中心人物となるのは、都会からやってきた農業経験ゼロの若い女性・伊紀佐和乃です。
佐和乃は、もともと保険代理店に務めていたのですが、いわれなき誤解が重なったことによって自主退職に追い込まれます。
そんな佐和乃が、本書の舞台となる限界(過疎)集落の農業体験研修に参加したことで、大勢の人々の運命が変転するのです。
実在する理論書をもとにした作品
『もしドラ』で例えるなら、佐和乃こそが『川島みなみ』です。映画では前田敦子さんが演じていましたね。
みなみちゃんの場合、ドラッカーの『マネジメント』を実践することで、高校野球のチームを良い方向へと導きました。
いっぽう本書の場合は、佐和乃が取得していた中小企業診断士の資格に加えて、実在する書物である『撤退の農村計画』のなかで説かれている方法論を用いて、高齢化が進んでいる過疎農村の諸問題が大きな解決へと導かれます。
撤退の農村計画
Kindleストアにおける本書の内容紹介において『ムラを滅ぼすという幽鬼』『山間の集落を舞台にした大河ミステリ』という文言が並んでいます。
しかしながら、ミステリやホラー要素は、この物語の本質ではありません。
「山をおりませんか?」
集落の新リーダーであるはずだった伊紀佐和乃から発せられた言葉は集落営農を始めた姥捨集落のムラビト達を驚愕させた。
Kindleストアの内容紹介における当該部分こそが、本書『こくいきさん』の主題です。
すなわち、限界集落住民による都市圏への集団移転を扱っています。
あくまでも推測なのですが、メインテーマである『限界集落問題』を生真面目に描いた小説は、一般的な読者の興味をひかないと判断したのかもしれませんね。
気持ちはわかりますし、企みは成功していると思うのですが、物語として飛躍しすぎている部分も見られ、いち読者としては混乱せざるを得ませんでした。
感想
『撤退の農村計画』という理論書に基いて、限界集落という舞台や、明確な役割をそなえた人物を配置しているところなどは、19世紀末のフランスにおける自然主義文学の手法を彷彿とさせます。
これは大袈裟に評しているのではなく、過疎農村あるいは限界集落という観点から、日本の『楽観的な未来』を描くために、実在する社会科学理論を用いたのはグッドアイデアだと思います。
やや雑然とした印象は拭えないものの、本書における『エンタメ+社会科学』という組み合わせは、新鮮な読書体験をもたらしてくれます。オススメです。
Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)
- こくいきさん
- 著者:橘川 真古一
- 価格:500円
- 読了にかかる時間:約4.5時間(個人差があります)
- 「社会派」度
- ★★★★☆(4)
- 「エンタメ」度
- ★★★★☆(4)
- 「後半の展開がカオス」度
- ★★★★☆(4)
- 「総合」
- ★★★★☆(4)
著者について
橘川真古一さん(@magoichiT)。『たちかわ・まごいち』と読みます。
あわせて読みたい
限界集落(ギリギリ)温泉第一巻 [Kindle版]
鈴木みそ (著)
出版: 鈴木みそ; 2版 (2013/1/5)
販売数や売上ばかりが話題になって、内容に関してはくわしく論じられないこの作品ですが、実は『こくいきさん』と同じテーマ、社会問題を扱っています。面白いですよ。
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