こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。

ざっくり言うと


・明智小五郎と同時代に活躍した女探偵ミステリ
・相棒は、さよなら絶望先生みたいな格好の青年助手
・表紙の雰囲気で油断させておいて、じつはシリアス展開

東京フラッパーガール 1東京フラッパーガール 1 [Kindle版]
杉浦絵里衣 (著), 宗像久嗣 (イラスト)
出版: FLAPPER LABEL; 1版 (2013/11/12)

昭和五年、東京。

伯爵令嬢・二宮環は自由な生活を夢見て家を飛び出し、女だてらに探偵事務所を開いているが、依頼といえば猫探しなどのつまらないものばかり。

ある日、カフェーの店長から「店の売上金を盗んで失踪した女給を探してほしい」と相談を受け、お目付役である書生の葛葉とともに調査に乗り出す。

やがて女給の行方をつかんだものの、手許にはすでに金はなかった。

彼女はなぜ金を盗んだのか? 大金はどこへ消えたのか? その背景には、誰もが予想できなかった陰謀が隠されていた──。

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。

レトロ風味な探偵小説


はじめ、表紙の鮮やかなイラストに目を奪われます。まさに昭和初期のモダンガールといった趣であり、てっきりエレベーターガールが主人公の小説だと思っていました。

表紙の彼女は、明智小五郎とおなじ職業――私立探偵です。本書『東京フラッパーガール 1』は、昭和5年の東京を舞台にしたミステリー小説です。

明智小五郎に憧れて……


二宮環(にのみや・たまき)は、女学校を卒業してまもない19歳。昼は探偵業、夜はカフェー(特殊喫茶)の女給をつとめるという変わり者。じつは、家出中の伯爵令嬢です。

世間知らずの女探偵は、実家から派遣されてきたお目付け役の青年を従えて、とある横領犯の追跡調査を引き受けます。手がかりを追っていくうちに、思いがけず、お嬢様のオママゴトでは済まされない事態に行き当たってしまい――。

重層的なテーマ


本書『東京フラッパーガール 1』は、単なるレトロ趣味のエンタメ小説ではありません。ネタバレは控えますが、あえて昭和5年の日本を題材にしているということが、練りこまれた幾つものテーマをとらえるための大きなヒントになっています。

昭和5年とは、一体どんな年だったのか? 史実にもあるとおり、ロンドン会議において日英米のあいだで軍縮条約が締結されました。それは内閣の専行によるものであり、統帥権(天皇大権)の干犯にあたるとして軍部は大反発します。

2年後の昭和7年には、青年将校たちが首相暗殺という凶行におよぶ『五・一五事件』が発生。

翌年には、軍部と行政府(内閣)の確執が決定的なものとなる『ゴーストップ事件』が起き、かの『二・二六事件』(昭和11年)という歴史的なクーデター未遂事件へとつながります。

時の内閣は不穏分子を抑止するため、同年に『軍部大臣現役武官制』という制度を復活させますが、これのせいで(以下、長くなるので省略)

とにかく、本書の舞台である『昭和5年(1930年)』というのは、国内において、本格的にキナ臭いものが漂いはじめた年なのです。

伏線回収がお見事


なにやら小難しいことを申し上げましたが、娯楽小説としての作り込みにも手抜かりはありません。

本編中の様々な場面において『これって伏線だろうなあ……』と思わせる事柄が、読み進めていくたびに驚きと共に消化されていきます。あたかも、順調にジグソーパズルが完成へと近づいていくような爽快感でした。読めばわかる!

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)

「昭和探偵浪漫譚」度
★★★★☆(4)
「お手本のような伏線回収」度
★★★★★(5)
「満足」度
★★★★☆(4)
「総合」
★★★★☆(4)



著者について


杉浦絵里衣さん(@erii_magaki)。『すぎうら・えりい』と読みます。昭和レトロ・ヴィクトリア朝などをこよなく愛しており、眼鏡男子が大好物だそうです。


宗像久嗣さん(@munakata106)。『むなかた・ひさつぐ』と読みます。公式ウェブサイトにおいて、美麗なイラストを鑑賞することができます。


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