こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。

ざっくり言うと


・『念写』をテーマにした、オカルト風味のミステリー小説
・と見せかけて、ひっかけの可能性もあり!?
・徳島県が舞台。

蒲生田岬~夕方午後五時の彼氏~蒲生田岬~夕方午後五時の彼氏~ [Kindle版]
牛野小雪 (著)
出版: 牛野小雪; 1版 (2013/11/25)

絶対に忘れられない人がいる。これから先もずっと。

秀子と奈津美は電撃の友情で結ばれた二人。これから先もずっとこの友情が続くと思っていた。

彼氏の正人とはもう一年半の付き合いだけれど、この先二人がどうなるかはハッキリしない。
 
時々届く変なメール。ちょっと頼りない彼。そして事件は起こった。

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。

ジャンル


あえてカテゴライズするならば、オカルト風味のミステリです。怨霊系ではなく、超常現象寄りのオカルトあるいはホラー要素を含みます。

ほんの些細で不可解な出来事をきっかけに、平穏だった日常がすこしずつ壊れていく。その様子をドキドキしながら読み進めていくタイプの小説です。

恐怖や不安をあおる一辺倒ではなく、ささやかな謎解きを含みます。本書の冒頭に、挑戦的な『まえがき』が収録されているので引用します。

念写(ねんしゃ)

心のなかで強く思った事、見た事を映し出す現象。

時には月の裏側、未来の出来事など、自分が経験したこと以外の物を写す事がある。

写す物は写真フィルムが一般的だが、パン、ケーキ、壁、紙、人肌に念写された事もある。

特別な能力者は意図して念写をするが、本人がその能力に気付いていない場合、意図せずに念写してしまう事があるかもしれない。

挑発的だと思いませんか? 大きな釣り針にも見える念写というヒントを、素直に受け取るべきか否か。ウブな読者ならば、重大な仕掛けに気づかないまま読み終えてしまうでしょう。

思わせぶりな『まえがき』の記述にとらわれすぎると、本書『蒲生田岬~夕方午後五時の彼氏~』のすべてを理解することはできません。

あらすじ


舞台は、徳島県です。タイトルの『蒲生田岬(かもだみさき/がもうだみさき)』は、四国最東端に位置します。

主人公の名前は、秀子。平凡な女子大生。派手すぎず地味すぎず。恋人の正人は、いつも何か隠し事をしている様子です。

あるとき、秀子の携帯電話に迷惑メールが届きます。メールには画像が添付されており、写っているのは黒髪の若い女性でした。

中身はよくある出会い系サイトへの誘導メールであり、本文には白々しいキャッチコピーとURLが表示されているだけです。

愛ラブメールは二人の恋を応援します!

彼女とメールをしたい人はこのサイトへ! 運命の出会いはここから始まる!

いまどき珍しくもない、1通の迷惑メール。これがきっかけで、秀子や周囲の人々の平穏が、音を立てて崩れていくのです。

感想


通読した――つまり、物語の結末を確かめたのに、妙なモヤモヤ感が残りました。おかしい。登場人物たちにまつわる重大な何かを見逃しているような気がしたのです。

試しに、もういちど冒頭から読み返してみると……案の定、それらしき記述を発見しました。書いてあったのです。はっきりと。モヤモヤの答えが。

物語が進行していくなかで、秀子のケータイが受信する迷惑メールは増えていきます。

送信アドレス不明のメールには、かならず写真が添付されていました。そこに写っている見知らぬ女性たちや見覚えのない風景こそが、本書の謎を解くためのカギなのです。

難易度は、中の上。そこそこ手強い。あなたは、この小説に隠された真実を見つけられますか?

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)

「徳島」度
★★★★★(5)
「二重の仕掛け」度
★★★★☆(4)
「満足」度
★★★★☆(4)
「総合」
★★★★☆(4)



著者について


牛野小雪さん(@cowfieldtinysno)。『うしの・しょうせつ』と読みます。ペンネームの由来は『書く速さが牛のように遅いことと、丑年生まれのおうし座だから』とのこと。

荒削りでもいいから、有望株な個人作家の小説を読みたい――。そんな山師根性の読者には、迷うことなくオススメします。牛野さんは、見過ごせない魅力の持ち主です。

ひとつは、牛野節と呼んでも差し支えない独特の文体が挙げられます。"あえて省略しないセンス"と申しましょうか。登場人物の行動や会話を淡々と敷き詰めていく文体は、どこか山崎豊子のクドイ感じを彷彿とさせます。(褒めている)

いままで、第1作『火星へ行こう君の夢がそこにある』、第2作『ドアノッカー』と読んできましたが、いよいよクセになりそうです。

けっして心地良いわけではありませんが、この著者特有の『焦らし文体』は、ミステリー風味のホラー小説にはうってつけだと思います。やけに焦らすなーと思いつつも、先が気になるのでクネクネしながら読み進める感じ。

もうひとつの特徴は、不条理なまでに専横的な警察官たちです。弱気な若い女性を言葉の暴力によって責め苛んでいく過程を読んでいると、率直に言ってゾクゾクしました。あるはずのないサディズムを引き出される体験です。

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ドアノッカードアノッカー [Kindle版]
牛野小雪 (著)
出版: 牛野小雪; 4版 (2013/7/31)

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解けるものなら解いてみろ! 超難問のミステリ風ホラー小説『ドアノッカー』


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