こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。
・ホミサイド=殺人。人殺しが容認されている社会
・なぜなら、死んでも仮想世界でコンティニュー可能だから
・殺したはずの女が、セキュリティを乗り越えて現実を侵食しはじめる
大筋は、死者に復讐される話です。殺したはずの人間がよみがえり、襲いかかってくる恐怖。そんな古典的なモチーフを、SF要素と奇想によって脚色しています。
とくに、架空社会における制度設計が巧みです。殺人が罪に問われない社会というワンアイデアを基に書いていますが、法螺話をそれと感じさせない描写の数々や筋運びは、一読の価値ありです。
本書『デイズ・オヴ・ホミサイド』では、殺人を咎められることはありません。ただし、殺してしまったら3日以内に役所へ 殺人届 を提出することが条件です。なぜか?
死んだヒトを、仮想世界で復活させるためです。
量子コンピューター技術の飛躍的な進歩によって、ヒトの存在(遺伝子情報や固有の記憶)をロスレス変換できるようになりました。
すさまじい計算能力によって、映画『マトリックス』のごとき仮想世界も実現しています。たいていの企業は、あっちの世界にも支社があるので、殺されたあとも転勤扱いで働くことができます。
たとえば、お父さんが通り魔やオヤジ狩りで殺されたとしても、現実世界に残された家族たちが路頭に迷うことはありません。すばらしいシステムですね。
いつか殺されるときに備えて、市民全員には定期的な全身全記憶スキャンが義務付けられています。ハードディスクの定期バックアップみたいなものです。
個体識別のために、IDカードの常時携行も欠かせません。殺害されたときにカードを持っていなければ、いろいろと面倒なことになります。
主人公の加藤芳雄は、満員電車のなかで足を踏まれてしまい、ついカッとなって相手を殺してしまいます。
ユニークなのは、このときの乗客や駅員の反応です。ヒトが死んで、血が大量に飛び散っているというのに、せいぜい酔っぱらいが車内でゲロを吐いてしまった程度の認識です。
殺したって、殺されたって。バックアップがあるから大丈夫。そう。『デイズ・オヴ・ホミサイド』ならね。
物語の中盤。主人公の加藤が殺してしまった若い女――吉田美枝子が、なんらかの手段をもちいて『リング』における貞子のごとく襲いかかってきます。
死者(仮想世界の住人)と生者は、テレビ電話で会話することができます。しかし、仮想世界から現実に干渉することはもちろんのこと、いちど死んだ人間が現実へ戻ってくることなど絶対不可能なはず。
それなのに、殺したはずの美枝子が、加藤の前へ幾度となく姿をあらわします。繰り返される亡者の襲撃。はたして、美枝子はどのような方法で現実世界に干渉しているのか?
本編のいたるところで殺人描写が飛び交っているので、もしかすると、アレの敷居が下がってしまうかもしれません。読み終えたあと、はじめに出会った人をノリで……さないよう。くれぐれも気をつけてくださいね。
コロシ。
ダメ。ゼッタイ。
Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)
弾射音さん(@danshannon88)。『だんしゃのん』と読みます。1959年、名古屋市生まれ。1998年、第一回インターネット文芸新人賞。受賞作は、青空文庫において公開中。→ 作家別作品リスト:弾 射音
ちなみに本書は、ゴマブックスの電子書籍出版支援サービス『BookSpace(ブックスペース)』を利用しています。
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つんどく速報ライター☆イマガワです。
ざっくり言うと
・ホミサイド=殺人。人殺しが容認されている社会
・なぜなら、死んでも仮想世界でコンティニュー可能だから
・殺したはずの女が、セキュリティを乗り越えて現実を侵食しはじめる
デイズ・オヴ・ホミサイド [Kindle版]
弾射音 (著)
出版: BookSpace (2013/12/11)
どうして人を殺すのが悪いことかわからないって? じゃあ、こんな話はどうだ?……殺人が犯罪ではない近未来。人々はいとも簡単に殺し合い、死んでいく。
加藤芳雄はある日、吉田美枝子を地下鉄内で殺す。政府のコンピューター内に蘇った吉田美枝子は、逆に芳雄を殺そうと反撃に打って出る。
何十人もの吉田美枝子に襲われ、何度も記憶をなくして、芳雄は、次第に精神を崩壊させていく。そしてついに、吉田美枝子は芳雄の呪わしい運命の真相を明かすのだった。SFのかたちを借りて、生命の尊厳を問う。
※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。
殺人が罪に問われない社会
大筋は、死者に復讐される話です。殺したはずの人間がよみがえり、襲いかかってくる恐怖。そんな古典的なモチーフを、SF要素と奇想によって脚色しています。
とくに、架空社会における制度設計が巧みです。殺人が罪に問われない社会というワンアイデアを基に書いていますが、法螺話をそれと感じさせない描写の数々や筋運びは、一読の価値ありです。
生命のロスレス変換
本書『デイズ・オヴ・ホミサイド』では、殺人を咎められることはありません。ただし、殺してしまったら3日以内に役所へ 殺人届 を提出することが条件です。なぜか?
死んだヒトを、仮想世界で復活させるためです。
量子コンピューター技術の飛躍的な進歩によって、ヒトの存在(遺伝子情報や固有の記憶)をロスレス変換できるようになりました。
すさまじい計算能力によって、映画『マトリックス』のごとき仮想世界も実現しています。たいていの企業は、あっちの世界にも支社があるので、殺されたあとも転勤扱いで働くことができます。
たとえば、お父さんが通り魔やオヤジ狩りで殺されたとしても、現実世界に残された家族たちが路頭に迷うことはありません。すばらしいシステムですね。
殺人のある日常
いつか殺されるときに備えて、市民全員には定期的な全身全記憶スキャンが義務付けられています。ハードディスクの定期バックアップみたいなものです。
個体識別のために、IDカードの常時携行も欠かせません。殺害されたときにカードを持っていなければ、いろいろと面倒なことになります。
主人公の加藤芳雄は、満員電車のなかで足を踏まれてしまい、ついカッとなって相手を殺してしまいます。
ユニークなのは、このときの乗客や駅員の反応です。ヒトが死んで、血が大量に飛び散っているというのに、せいぜい酔っぱらいが車内でゲロを吐いてしまった程度の認識です。
殺したって、殺されたって。バックアップがあるから大丈夫。そう。『デイズ・オヴ・ホミサイド』ならね。
科学が倫理をくつがえす
物語の中盤。主人公の加藤が殺してしまった若い女――吉田美枝子が、なんらかの手段をもちいて『リング』における貞子のごとく襲いかかってきます。
死者(仮想世界の住人)と生者は、テレビ電話で会話することができます。しかし、仮想世界から現実に干渉することはもちろんのこと、いちど死んだ人間が現実へ戻ってくることなど絶対不可能なはず。
それなのに、殺したはずの美枝子が、加藤の前へ幾度となく姿をあらわします。繰り返される亡者の襲撃。はたして、美枝子はどのような方法で現実世界に干渉しているのか?
本編のいたるところで殺人描写が飛び交っているので、もしかすると、アレの敷居が下がってしまうかもしれません。読み終えたあと、はじめに出会った人をノリで……さないよう。くれぐれも気をつけてくださいね。
コロシ。
ダメ。ゼッタイ。
Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)
- デイズ・オヴ・ホミサイド
- 著者:弾射音
- 価格:250円
- 読了にかかる時間:約3.5時間(個人差があります)
- 「SF」度
- ★★★★☆(4)
- 「キレる人類たち」度
- ★★★★☆(4)
- 「満足」度
- ★★★★☆(4)
- 「総合」
- ★★★★☆(4)
著者について
弾射音さん(@danshannon88)。『だんしゃのん』と読みます。1959年、名古屋市生まれ。1998年、第一回インターネット文芸新人賞。受賞作は、青空文庫において公開中。→ 作家別作品リスト:弾 射音
ちなみに本書は、ゴマブックスの電子書籍出版支援サービス『BookSpace(ブックスペース)』を利用しています。
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