こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。
・難易度高め。観念的なミステリー小説
・かなりグロいシーン有り
・サリンジャーが好きな人は謎解きが捗る!?
つんどく速報ライター☆イマガワです。
ざっくり言うと
・難易度高め。観念的なミステリー小説
・かなりグロいシーン有り
・サリンジャーが好きな人は謎解きが捗る!?
血を研ぐ [Kindle版]
大島圭一郎 (著), 内田努 (著)
出版: 「愛は豚に喰わせろ」製作委員会; 2版 (2013/7/10)
新感覚ミステリーがここに誕生!
暗い闇に襲われていく少女が主人公の奇数章と、
少年たちの心の闇が炙り出されていく偶数章。
無関係にも見える二つの物語はやがてある地点で収束し……。
スプラッターと推理小説が融合し、いま新たな世界が誕生する。
※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。
サルトルも書いていた
本書『血を研ぐ』は、ミステリかつ監禁&脱出ゲーム要素を含みます。もう飽きた……という声が聞こえてきそうです。
ごもっとも。おっしゃるとおり。
2013年におけるKindleストアの話題作『お前たちの中に鬼がいる』をはじめ、つい先日ご紹介した『強請屋ドットコム』収録の『ROOMS』も、監禁&脱出ものでした。
数人をひとつの部屋に閉じこめて、それぞれの心理や行動を描いてみせる━━古くは『出口なし』(1944年初演)という戯曲があるそうです。作者は、フランスの哲学者であるジャン=ポール・サルトル。
有名どころである『CUBE』や『SAW』を筆頭に、国内外の数々の小説やゲーム等は、もはや監禁&脱出フィクションがお題の大喜利の回答にすぎないのかもしれません。
新たなる挑戦
本書『血を研ぐ』は、ミステリ小説です。気絶したのちに目覚めた男女が、見知らぬ部屋に監禁されています。そして。脱出するためにジタバタします。
ただし。先行作品との差別化が図られています。当ブログにおける監禁&脱出ネタかぶり3作目ではありますが、興味ぶかいバリエーションだったので紹介させていただきます。
全10章。奇数章と偶数章。ふたりの作家が、それぞれ5章ずつを担当しています。ひとつの原案に沿って、ある意図を実現するために、手分けをして書いているわけです。
奇数章は、監禁&脱出パート。ふたりの若い男女。気絶する直前の記憶がありません。ふたたび目覚めたとき。彼と彼女は血だらけでした。そこは出口のない部屋。互いに協力して、脱出を試みます。
偶数章は、男子高校生パート。健太は、優秀な弟にコンプレックスを抱いています。臆病なくせに、他人を見くだす悪い癖があります。いじめられっ子です。ある文学作品を心の拠り所にして生きています。
全10章の共通点は……
奇数章━━監禁場所のコンクリート壁は、血文字で汚されていました。
Seymour
The Young Folks
Normandy
A Boy in France
Blue Memory
The Stranger
Zooey
Teddy
The Hang of It
A Girl I knew
わかりますか? ピンと来ない人のために。ヒントを。
The Catcher in the Rye
いかがでしょうか?
答え合わせ。血文字のすべては、作家のJ.D.サリンジャーに関わりのあるものです。
米軍兵士としてノルマンディー上陸作戦に参加。『ライ麦畑でつかまえて』,『フラニーとゾーイー 』,『シーモア』。それ以外の原題は、あまり馴染みのない『若者たち』や『倒錯の森』という短編集に収録されている作品です。
じつをいうと。監禁されている2人の男女は、サリンジャー作品に敬意を払わなかった。という経験の持ち主たちであることが、のちに明らかになります。
偶数章━━いじめられっ子である健太の愛読書。それはJ.D.サリンジャーでした。いちばんのお気に入りは『The Catcher in the Rye』。野崎孝・訳、村上春樹・訳。その両方を揃えては何遍も読み返しています。
健太は、強いシンパシーを感じています。この世のインチキなもの全てを唾棄してみせるホールデンに。『The Catcher in the Rye』の主人公です。健太の熱狂は、健太自身のみならず、いじめっ子の精神にも影響を与えはじめます。
難易度高め。解けないかも
奇数章と偶数章。当レビューでは、本書の意図にしたがって色分けしました。血と水、動と静、激情と無感情━━姉妹と兄弟。はっきり言って、暴力的で残酷でグロテスクな描写が満載です。
幾度も語られる、熱病ともいえるほどのサリンジャー作品への没頭。ほのめかされる、医薬・伝染病研究施設における謎の地下施設。
サリンジャーと伝染性ウィルス。くしくも、ある条件下におけるヒトへの感性力が強いという共通点をもっています。このあたりがカギです。
野心的なふたりの作家が書き切った凄惨かつ観念的な新感覚ミステリー小説を、どうぞお楽しみください。
Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)
- 血を研ぐ
- 著者:大島圭一郎,内田努
- 価格:100円
- 読了にかかる時間:約2時間(個人差があります)
- 「サリンジャー」度
- ★★★★★(5)
- 「グロテスク」度
- ★★★★☆(4)
- 「満足」度
- ★★★★☆(4)
- 「総合」
- ★★★★☆(4)
著者について
大島圭一郎さん。『おおしま・けいいちろう』と読みます。内田努さん。『うちだ・つとむ』と読みます。本書の初版を文学フリマに出展した記録はあるものの、謎です。
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