こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。

ざっくり言うと


・素直になれないオンナたちの物語
・4編の短編小説を収録している
・10代のときに読みたかった……

センチメンタル(短編集)センチメンタル(短編集) [Kindle版]
塩澤源太 (著)
出版: 塩澤源太; 1版 (2013/11/21)

優しく切ない、思い出を抱えた女性たちの物語。

少女と青年の交流を描いた表題作「センチメンタル」
結婚や家族の絆を再発見する「かたち」
高校生の少女と二人の少年の夏休みを描いた「パルテノペ」
過去の傷を癒せない女性二人の物語「花壇のアトリエ」収録。

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。

恋をして、愛を求める動物


本書『センチメンタル(短編集)』は、愛を求めて得られなかった女性たちにまつわる、4つの短編小説をまとめた作品集です。

横恋慕の行きつく先、結婚前夜の父と娘、幼なじみ同士であるがゆえの苦悩、人生に疲れた"魔女"が棲むアトリエ━━など。定番のテーマを扱っていながら、著者ならではの表現手法によって新しい物語を作りだそうという意気込みを感じることができます。

丁寧なストーリーテリング


はじまりの物語は、少女が年上の男性に恋心をいだくものの結局は叶わぬことを思い知らされる『センチメンタル』。単純な失恋ではなく、相手の男性との対話によって、少女は成長のきっかけを得ることができます。

この表題作は、噛んで含めるがごとく丁寧に書かれています。冒頭収録の『センチメンタル』こそが、のちの3作品それぞれに対するアンサーであり処方箋の役割を果たしている。通読したあと、そのように解釈しました。

かたち』━━結婚式直前の数日間、義理の父娘における葛藤を描くという、わりと凝った内容です。表題作では感じさせなかった作者の地が垣間見えました。そうか、本来はこのような表現を好む人なのか、と。

パルテノペ』━━親友であり幼なじみでもある男女のもとに、不思議なオーラをまとった男子転校生がやってきて、長年続いていたはずの均衡が揺らぐさまを書いています。

最終話は『花壇のアトリエ』。人生をこじらせている女性━━いわば魔女と、恋愛をこじらせている女性━━魔女見習いのおはなしです。こじらせたまま生きていくしかない女と、こじらせつつある女。奇妙な師弟ふたりによる対話を楽しむことができる一編です。

こじらせの処方箋


先に言及したとおり、冒頭の『センチメンタル』という小説が、最終話の『花壇のアトリエ』に登場する人物たちへのアンサーの役割を果たしている。そのように解釈しました。粋(いき)な構成です。

花壇のアトリエ』に登場する魔女(こじらせ)が、十代の頃にせめて『センチメンタル』のような小説を読んでいれば、あるいは……。

本書『センチメンタル(短編集)』は、オトナが読んでも楽しめます。しかし10代の男子や女子にこそ読ませたい━━できれば10代のうちに読んでおきたかった物語だと思いました。

もはや精神衛生における予防医学の観点からもオススメな本です。遅くとも成人式前夜までに通読することによって、恋愛や人間関係をこじらせる確率がダンゼン低くなるはずです。

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)

「こじらせ特効薬」度
★★★★☆(4)
「カタチがおすすめ」度
★★★★☆(4)
「満足」度
★★★★☆(4)
「総合」
★★★★☆(4)



著者について


塩澤源太さん(@GentaInfo)。『しおざわ・げんた』と読みます。

1975年生まれ、東京都出身。日本大学藝術学部美術学科卒業。東京、上海、大連を拠点にWebのアートディレクションに携わりながら執筆活動も同時に行う。


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