こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。
・私怨による復讐が合法化された未来
・重層的な世界観と軽快なストーリーの妙
・死刑を含む刑罰制度の問題点にまつわる明快な回答
つんどく速報ライター☆イマガワです。
ざっくり言うと
・私怨による復讐が合法化された未来
・重層的な世界観と軽快なストーリーの妙
・死刑を含む刑罰制度の問題点にまつわる明快な回答
<あらすじ>
新仇討ち法が施行された2045年、女子高生の二階堂凛はプロの辻斬りにたった一人の肉親である姉を殺され、仇討ちを決意する。
偶然訪れた「討ち屋」は、幻の流派、天心陰流の使い手・芹沢兄妹が営む芹沢事務所だった。
孤高の武術家・芹沢無二、天真爛漫な妹の茜、美貌の甲賀忍者・望月薫らに助けられ、 凛は刀を手に、仇との戦いに挑む。
<こんな方にお薦め!>
・ジャンプ黄金期の漫画が大好き。
・侍や忍者に無条件で萌える、でも古くさい世界観はイヤ!
・SFや近未来設定は好きだけど専門知識が必要なのは無理かも…。
・いろんなキャラクターが登場する小説が好き。
※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。
あだうち大国ニッポン
アイトラッキングポインタ・3Dホログラム・音声入力の三拍子揃ったGoogle Glassのような機能を備えるウェアラブルコンピュータが普及している近未来の日本。
なぜか仇討ちが合法化しています。経緯は、以下のとおり。
第二次関東大震災が発生→東京は壊滅→治安悪化→スラム化した旧東京をウォール(巨大な壁と関所)で隔離→いっそのこと犯罪者たちを一箇所に集めよう。
ウォール内に警察は関知しないよ→逃亡犯たちの駆け込み寺になる→ただし、犯罪者はいちど入ったら出られない仕組み→旧東京以外の治安が回復……しかし。
「逃げ得だ!」犯罪被害者遺族たちが反発→メンドクセ。警察は忙しい→この際だから、自己責任でどうぞ→仇討ちが合法化。
ただし、私怨による殺人が自由化されたわけではありません。仇討ちを希望する者は、事前に、警察へ届け出たのち受理してもらう必要があります。(1対1の決闘も選択可)
復讐のクラウドファンディング
仇討ちの合法化によって、周辺ビジネスもにぎわいをみせています。特に、本編に登場する『仇討ち.com』というウェブサイトの仕組みがおもしろい。
会員登録したのちに各種情報を登録すると、AKB48のような推しメン指名を得ることができます。その仇討ちに賛同する人たち(フォロワー)であり、場合によっては助言や情報や金銭的援助を得ることができます。
賛同者たちの支持を得続けるためには、オフ会を開催したり頻繁なブログ更新などの努力が欠かせません。
仇討ち当事者が、若い女性である場合。肉体の提供を条件に、数百万円にのぼる仇討ち代行料の一部あるいは全部を肩代わりしようという邪なフォロワーもいるとか。
その後、『討ち屋』とよばれる仇討ち代行業者の最寄り検索をおこない、いくつか候補を選んで依頼先を決めるという流れです。
ちなみに。本書『未来撃剣浪漫譚 ADAUCHI』の大筋は、販売ページにおける内容説明のとおりです。姉を殺されてしまった高校生の妹が、専門家の助けを借りながら、あくまでも自らの命を賭して仇討ちに挑みます。
八幡なら『ADAUCHI』を読め!
著者の作品は以前にもレビューしていますが、この作品がピカイチです。作家・八幡謙介が秘めているポテンシャルをもっとも感じることができます。
たとえるならば『Gene Mapper』や『関東心霊庁シリーズ』などに匹敵する豊穣な世界観を有しており、『ゴースト≠ノイズ(リダクション)』を読み終えた直後と同様の手応えを感じました。
著者におかれましては、ぜひとも『ADAUCHI』のアイデアと世界観をしゃぶりつくして頂きたい。長編シリーズのみならず、たとえば『鬼平犯科帳』や『剣客商売』のような短編連作シリーズ形式でも読みたいです。
本書には、様々な良作エピソードが発生しうる肥沃さを認めることができます。読者として応援していきたい、じっくり育てていきたいと思わせるタイトルです。
Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)
- 未来撃剣浪漫譚 ADAUCHI
- 著者:八幡謙介
- 価格:99円
- 読了にかかる時間:約4時間(個人差があります)
「整合性ある世界観」度 ★★★★★(5) 「ポテンシャル」度 ★★★★★(5) 「山田進への期待」度 ★★★★★(5) 「総合」 ★★★★★(5)
著者について
八幡謙介さん(@kensukeyahata)。『やはた・けんすけ』と読みます。ギター講師、作家。アメリカやオランダ等における音楽修業経験あり。バークリー音楽大学に通っていたという経歴の持ち主です。
『ADAUCHI』本編においても、トラム(路面電車?)・公娼制度の復活・大麻の合法化などが登場します。これらオランダ滞在時の見聞を活かしたとおぼしきアイデアも見どころのひとつです。
続編が好評発売中
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