こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。

ざっくり言うと


・地獄のコンビニチェーンを告発した小説の第3弾
・大学生バイト・通称『不死鳥』がクビになる
・シリーズ第3弾。興味がわいたら、ぜひ第1巻を

コンビニの戦士達 外伝コンビニの戦士達 外伝 [Kindle版]
幻夜軌跡 (著), 浦賀瑛徳 (イラスト)
出版: のぎのぎ出版; 1版 (2014/1/14)

コンビニに派遣があることを知っていたか?

コンビニ戦争の中心である都内のコンビニは、いつだって派遣を必要としている。自分のいた店をクビになった不死鳥は、派遣スタッフに登録をした。
不死鳥は傭兵としていくつもの戦場を渡り歩く中で、コンビニ唯一のヒロインと出会う。

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。

シリーズ概要


本書『コンビニの戦士達 外伝』は、シリーズ通算の第3巻です。初見の読者に対して、どのように薦めるべきか……。

小説『コンビニの戦士達』シリーズは、地獄のコンビニチェーン・ヘルマートで働くアルバイト店員たちの群像劇です。『序章』が第1巻、『本篇』が第2巻、今回の『外伝』が最新巻。

第1巻は、コンビニバイトあるあるネタ。第2巻は、コンビニ業界のモラルハザードやブラック企業の内情をドラマチックに仕上げた、現代のプロレタリア文学です。

『コンビニの戦士達』シリーズの登場人物たちには、それぞれユニークなアダ名がついています。例を挙げると━━

『バックレ』……勤務シフトのドタキャン常習犯
『守護神』……欠員の際、どんなときでも駆けつける
『アイドル』……役立たずの女子高生バイト
『天下取り』……バカ。世間知らず
『男食い』……三股しているという噂がある
『人間嫌い』……レジ業務を絶対に担当しない
ほか、総勢20名以上

第3作目である『外伝』の主人公は、不死鳥というアダ名の大学生アルバイトです。物語は、彼がヘルマートを解雇される━━クビになるところから始まります。

伝説の終焉


不死鳥(ふしちょう)。アダ名の由来は『クビになりそうで、ならない』というもの。
勤務シフトのドタキャンや遅刻の常習犯。いつもサボることばかり考えており、時には泥酔状態で出勤するという━━学生バイトの悪しき特徴を寄せ集めたような野郎です。

不死鳥は、プライドがゼロです。クビをほのめかされるたびに、土下座して最悪の事態を切り抜けてきました。
すべては彼の人柄や強運のおかげ……と思いきや、当時の店長が甘かっただけ。新しい店長は、あっさりとクビを宣告します。

不死鳥伝説、終了。とはいえ、要領だけは良い男です。すぐに次のアルバイトを見つけます。

新しい職場はコンビニでした。しかも、前職とおなじ『ヘルマート』です。
不死鳥は、コンビニ専門の人材派遣会社に登録して、臨時スタッフとして都内や近郊の様々な店舗で働くことになります。

コンビニバイトの人材派遣


コンビニ業界における搾取は、フランチャイズシステムだけではないのかもしれません。
前作『コンビニの戦士達 本篇』に引き続き、『外伝』においても、架空のコンビニチェーン・ヘルマートに仮託することで社会悪を告発しています。

不死鳥が登録した人材派遣会社は、ヘルマートの子会社。つまり、ロイヤリティ以外にも、派遣請負手数料の名目で、フランチャイズ加盟店からカネを徴収するためのシステムです。(注:あくまでも、フィクション内における設定)

加盟店搾取の実情なんて、いち学生バイトにはどうでも良いことです。むしろ、時給は以前よりもアップしました。派遣バイトは、常勤バイトよりも割増されるのが一般的だからです。
怠惰でズル賢い不死鳥は「前の店をクビになって良かった」と喜びます。しかし……それは大きな思い違いでした。

不死鳥伝説ふたたび


時給は良い。ただし、働きにくさは前の職場とは比べ物にならないほどヒドイ。

第一に、サボれない。派遣先にとっては、通常時給の2倍以上の経費を支払っているため、不死鳥は徹底的にコキ使われます。そもそも、彼はマトモにコンビニ業務をおこなったことがないので苦労するのは当たり前でした。

派遣バイトに対する差別的な態度にも悩まされます。それは一種のイジメであり、不死鳥は、陰湿な常勤バイトたちに仕事を押し付けられます。

しかも、派遣バイトのなかにもヒエラルキーがあり、常勤バイトにうまく取り入ることに成功した派遣スタッフは、まるで常勤バイトであるかのように振る舞い、不死鳥イジメに加担します。イヤ~なエピソードです。

ここで、本書『コンビニの戦士達 外伝』の表紙イラストをご覧ください。

コンビニの戦士達 外伝

この青年が、不死鳥です。過酷な職場で働かざるをえない派遣スタッフ━━まさに戦場を駆けめぐる傭兵のごとく。行き当たりばったり、小狡いだけが取り柄であった学生バイトが、歴戦の末に戦場の狼へと成長していく過程は、とても読みごたえがありました。

追随を許さないオンリーワン


シリーズ3作目のレビュー。案の定、長文になってしまいました。
今回、感想を書くにあたって第1~2巻を読み返したのですが━━やはり面白い!

コンビニにおける業務内容や作業工程をストイックに延々と描写する文体は、くどいようにも思いますが……やはり本編において欠かせないものです。
いかに非人間的な仕事量と業務内容によって24時間365日営業が成り立っているのか。読み終わったあとに、しみじみ感じさせられます。省略しない美学。

前の2作品においては、端役&単なるクズ野郎だった不死鳥ですが、意外なほどのガッツを見せます。転んでも、ただでは起きません。

都内でいちばん忙しい店に派遣された際には、自分の役立たずっぷりに打ちひしがれますが……。不死鳥は、けっして心折れることなく、そのあと数々の派遣先において研鑽を積み重ねて、ふたたび最難関店舗への派遣をみずから志願します。
はたして、最終決戦の結果は如何に!?

ところで、次回作(シリーズ第4弾)もあるらしく、アジア編だそうです。以前、著者のツイートで「台湾なう」ってありましたが……。


ようやく合点がいきました。刊行を楽しみにしています。

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)

  • コンビニの戦士達 外伝
  • 著者:幻夜軌跡 イラスト:浦賀瑛徳
  • 価格:200円
  • 読了にかかる時間:約3時間(個人差があります)

「社会派」度
★★★★☆(4)
「期待」度
★★★★★(5)
「満足」度
★★★★☆(4)
「総合」
★★★★☆(4)


著者について


幻夜軌跡さん(@Osefly)。『まぼやのきせき』と読みます。1984年東京生まれ。大学在学中から小説のことを考えて書き続けてきたそうです。


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