こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。

ざっくり言うと


・不登校男子が、リーゼントヘアーで高校デビュー!?
・カツアゲされて悔しくて、強い男になろうと決意する
・徳島県の底辺高校生活を題材にした青春小説

グッドライフ高崎望グッドライフ高崎望 [Kindle版]
牛野小雪 (著)
出版: 牛野小雪; 2版 (2014/3/28)

高崎望は一年半も学校へ行っていなかった。
15歳になればどうせ死ぬだろうとも思っていた。

そんな中で先生に勧められた上等高校を受験して合格する。
しかし、上等高校は不良の巣窟だった。望は果てしない不安を覚える。

彼は再び学校へ通えるようになるのか?
そして、不良の巣窟で生き残れるのか?

高崎望の人生3年3ヶ月を描く長編写実的青春小説。

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。

あらすじ


中学時代に不登校だった男子が、高校進学後、リーゼントヘアーで有名な先輩に出会い、あるときの屈辱的な事件を経たのち、強い男に生まれ変わることを決意して、リーゼントヘアーで登校しはじめる。

本書『グッドライフ高崎望』の主人公━━望くんは、リーゼント先輩こと井上さんに救われます。望くんが校内でカツアゲされているときに、ふたりは出会いました。

ジョジョの奇妙な冒険 第4部 モノクロ版 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
資料:リーゼントヘアー(ジョジョの奇妙な冒険 より)

望は彼の髪を見ながら言った。やっと見つけた話題だ。

「ああ、これか。これは強い男の証よ」
「強い男ですか?」
「おう、絶対に誰にも負けないという意気込み、その抱負。そう自分に言い聞かせるための気合よ。お前もやってみるか?」

グッドライフ高崎望』から引用。以下同じ

このとき。望くんは「いや、僕はちょっと……」と言って遠慮します。助けてもらったことには感謝しつつも、内心では「ダサい」と思っていたのでしょう。

望くんが本心からリーゼントヘアーに目覚めるきっかけは、他校の生徒━━外道高校の不良から受けたカツアゲです。暴力に屈して財布の中身を奪われ、肝心の警察がまったく頼りにならないという手痛い経験をした望くんは、決意します。

強 く な り た い !

リーゼント ≠ 不良


望くんの進学先は、不良学生の巣窟でした。
ただし、憧れのリーゼント先輩は不良ではありません。だけど髪型はリーゼントで、ケンカが強くて、弱い者イジメを見過ごせない男気の持ち主でした。

そもそも、望くんは不良が大嫌いです。つまり━━リーゼントにキメて登校するけれど、あくまでも正道を歩む。ユニークなポリシーです。

「親がこんな事をいうのもなんだが、もっと不良らしくしたらどうだ?」
(中略)
「勘違いしてるよ、父さん。俺は不良になったんじゃないから」
「だって不良だろ」
 父親は望の頭に目を向けた。
「強い男として生きる証明だよ」
 望はリーゼントを指差した。
「分からんな。どっちかにしろよ。真面目になるか、不良になるか。中途半端だぞ」

━━という、父親からの野暮なツッコミにも負ケズ。
毎日、腕立て伏せや腹筋を数百回もする肉体鍛錬を続けているうちに。望くんは、不良たちから売られたケンカには負けないようになります。

しかも。髪型はリーゼントですが、本人はいたって真面目な高校生活を送っているので、定期テストの成績は学年2位です。不登校だった中学時代が、まるでウソのよう。

「内」と「外」の3年間


本書『グッドライフ高崎望』では、リーゼントに目覚めた高校生の約3年間をじっくり描いています。

1年生編……リーゼント覚醒。肉体を鍛えはじめる。
2年生編……校内では一目置かれる男に。片想いの日々。
3年生編……人生最大のピンチ。リーゼント伝説ふたたび。


進級するたび━━月日を重ねるたびに、高崎望は目まぐるしく成長を遂げます。当然、不良やクラスメイトたちの望を見る目も変わります。不登校時代には考えもしなかった、幸福な甘酸っぱい恋愛も経験します。

しかし、変わらないものがあります。家族と過ごしている情景です。

父親は毎年おなじ教訓話を得意げに語り、母親はいつも望くんの身を案じていらぬ世話を焼こうとする。永遠に続いてくれる━━と錯覚してしまいそうな、幸も不幸もない、ニュートラルな感情でいられる時間が描かれています。

家庭の「外」における3年間は、リーゼント先輩や友人や恋人との出会いがあり、別れもあります。過酷な解体屋バイトに挑戦したり、多人数を相手にケンカを経験したり。激動の高校生活です。

しかし。家庭の「内」━━つまり、父親や母親と過ごす時間には、3年間あまり変化がありません。
毎年かならず、両親の結婚記念日や父親との渓流釣りのシーンが描かれます。自宅の台所では、望は毎日のように、学校の昼休みに食べるための弁当やツナサンドを作り続けるのです。

謎の設定『ドアを作る会社』


さて、ここからは━━本書の著者・牛野小雪ファンだけにお送りする、小ネタコーナーです。

 父親はドアを作る会社に勤めていて、その中でもドアを売る仕事をしていた。

グッドライフ高崎望』から引用。

という文章に接して、既視感にとらわれました。見覚えがある。なんだっけ。

━━思い出した! 著者の既刊ミステリ『蒲生田岬~夕方午後五時の彼氏~』に登場する端役の就職先もドアを作る会社でした。

「この前までは良い子が二人いたんだが、一人は看護士に、もう一人は何という会社だったか忘れたが……とにかくドアを作る会社へ行ってしまった」

蒲生田岬~夕方午後五時の彼氏~』から引用

ことばの響きが妙におかしくて覚えていたのです。
著者には『ドアノッカー』というタイトルの既刊ミステリもあります。

偶然とは思えないドアに対するこだわりは、著者の特殊性癖? あるいは、徳島地方には、ドア製造で有名な会社があるのかもしれません。

いずれせよ、次回作におけるドアを作る会社の扱いが楽しみでなりません。

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)


「青春」度
★★★★☆(4)
「ツナサン」度
★★★★☆(4)
「満足」度
★★★★☆(4)
「総合」
★★★★☆(4)


著者について


牛野小雪さん(@cowfieldtinysno)。『うしの・しょうせつ』と読みます。ペンネームの由来は『書く速さが牛のように遅いことと、丑年生まれのおうし座だから』とのこと。


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