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つんどく速報ライター☆イマガワです。
・幽霊探偵ミステリ
・殺人犯は、自分の妻
・ハウダニット(密室殺人の方法)が焦点
つんどく速報ライター☆イマガワです。
ざっくり言うと
・幽霊探偵ミステリ
・殺人犯は、自分の妻
・ハウダニット(密室殺人の方法)が焦点
夢見る幽霊 [Kindle版]
純丘曜彰 (著)
出版: 瓦塔院出版; 電子初版 (2014/2/27)
妻に殺されてしまった間抜けな男が、成仏できずに幽霊になってしまった理由を始末すべく、女子高生の幽霊や飛行機機長の幽霊、その他の変な連中たちと右往左往するオバカオバケミステリ。
※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。
幽霊が主人公
本書『夢見る幽霊』は、存命時の鮎川哲也賞に応募すれば、佳作くらいには引っ掛かったかもしれない、良質の推理小説です。きっと鮎川先生なら認めてくれた……はず。
私は殺された。殺したのは別居中の妻だ。だが、どうやって殺されたのかわからないのが心残りで、幽霊になってしまった。
『夢見る幽霊』から引用。以下同じ
何者かに殺害された主人公が、幽霊になる。成仏するために、殺人犯を探す、あるいはトリックを解明する━━このアイデアには、いくつもの先行作品が存在します。(映画『ゴースト/ニューヨークの幻』、石田衣良『エンジェル』、有栖川有栖『幽霊刑事』など)
でも、オリジナリティがある。設定だけを流し見て、読者が手に取らないのは勿体ない。読み終えたあとにそう思ったので、レビューすることに決めました。
キマりすぎている伏線の数々
密室殺人です。とにかく、伏線が効いています。その配置や間隔が絶妙であり、序盤や中盤に仕掛けられている数々の伏線が、終盤において、そつなく回収されていくのです。
もしも。本書『夢見る幽霊』における伏線地点と回収地点を線で繋いだら━━美しい形状の星座が浮かび上がるのではないかと思わせる、じつに整然とした配置です。
ラストに向かって読み進めていけば━━「あった!」ペラッペラッ「あ! また見つけた。こういう事だったのか!」というご褒美が得られます。
おバカだけど……感動のラスト
とにかく『おバカ』な内容です。体裁はミステリですが、主人公が幽霊であり、助手役のヒロインも幽霊なら、その他の登場人物の大半もこの世ならざる者たちです。
オバカでオバケな極めつけは、『YS-11』という国産旅客機に地上の幽霊たちをギュウギュウ詰めにして、全部まとめて天国に連れて行く━━という大騒動があったり。まさに『おバカ小説』の看板に偽りなしです。
「いや、ちょっと待ってくれ。これは、たしかにYS11だが、機体番号がJA8610じゃない。8709だ」
「どっちでもいいじゃないですか、機長」
「しかし、動態保存されているのは、一九六五年製の量産初号機の8610だけのはずだから」
「というと?」
「この8709は、六八年に八四機目として作られ、しばらくブラジルの空で活躍した後、七七年に東亜国内航空に買い戻されて、「よろん」の愛称で、リゾート旅行ブームを支えた名機だったんだ。そして、YS11の中でも、最後の最後まで、きちんと飛んでいた。なのに、新規格不適合ということで、二〇〇七年、登録を抹消されてしまった。つまり、この8709は、もう、この世には存在しないことになっているんだ」
ど ー で も い い か も \(^o^)/
ちなみに。『YS-11のオバケ』を操縦するのは、主人公ではありません。本職の操縦士━━航行中に心筋梗塞で急死した機長パイロットです。
絶命した瞬間……つまり幽霊になった途端に操縦席をすり抜けて、空から落っこちてきました。主人公と初めて顔を合わせることになった一幕です。バカバカしい(笑)
いったい何がやりたいのか━━ミステリ? ファンタジー? ドタバタコメディ? その答えは……全部でしょうね、きっと。しかも、このフザけた構想は……驚くべきことに大成功をおさめています。ホントに。読めばわかりますから。
あの有名作家っぽい人も登場
じつは、気になる登場人物がいるんですよね……。作中において『超常現象に重点を置いたミステリ』を書いており、和服がトレードマークのベストセラー作家です。
風体といい、容貌といい、一言でいって、それこそ妖怪だ。
真ん中分けの髪は長く伸ばし、紫色に染めている。(中略) そいつがいかにも高級そうな和服のたもとに両手を突っ込み、高下駄の歯をカタカタ鳴らし、イライラしている。ふところから両切りの缶ピースを取り出し、スパスパやり始めた。
和服の推理作家『萬秋門院』は、実を言うと、夫を殺害した犯人である妻とただならぬ関係にあります……アッー! これ以上は書けません。ネタバレになっちゃう。
とにかく。おバカな内容ですが、先述したように優れたミステリとしても評価できる一作です。皆さんが想像している以上に『本格』としての体裁を成しています。
Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)
著者について
純丘曜彰さん(@prof_dr_sumioka)。『てるおか・すみあき』と読みます。東京大学文学部卒。大阪芸術大学芸術学部哲学教授。美術博士(東京藝術大学、美学)、文学修士(東京大学、哲学)。
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