こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。
・医療機器メーカーの未公開技術をめぐる陰謀
・時刻表トリックを逆手にとった巧妙な罠
・真犯人・トリック・アリバイ崩し。すべてが二段構えの驚き
本書『マリオネットの背中』は、正統派でありながら変化球を合わせもった時刻表トリックを含むミステリー小説です。
事件を解決するのは、日本各地に点在する警察署の名もなき刑事たち。
名探偵や一般人、あるいは、特殊能力やひらめきを備えた名物刑事などが幅をきかせがちな現代ミステリには少ない、なつかしいタイプの推理小説です。
時刻表を駆使するといえば鉄道網を利用したトリックですが、本書においては、それ以外の交通機関と移動手段を活用する複雑なアリバイ工作を披露しています。
医療機器メーカー『成和医療科学』の未公開技術の持ち出しをめぐる、逃亡劇&殺人事件です。
『成和医療科学』に在籍している小山隆一という技術社員が、人員整理の対象になります。
酒の席において、会社の理不尽な扱いを愚痴っていた小山。友人の根津義一は、ライバル企業への手土産を携えた転職(産業スパイとしての裏切り)をそそのかします。
単純ですこしノイローゼ気味の小山は、社外秘である未公開情報ディスクの窃盗を実行します。
が、その現場を夜回りのガードマンに目撃されてしまい、ディスクと同じ金庫に収められていた500万円を共に持ち出して、その勢いで出奔(逃亡)します。
未公開情報ディスクの件は機密事項ということもあり、盗難届を提出しませんでした。
しかし。このあと、小山は警察に追われる事態に陥ります━━殺人犯として。
新大阪に到着した新幹線のぞみ327号の車内において、根津(小山をそそのかした友人)の死体が発見されます。当日、潜伏先のホテルで小山と落ち合う予定でした。
殺された根津の席のそばに落ちていたミントタブレットケースからは、小山の指紋が検出されます。
根津の死亡推定時刻において、小山は『支援者』と称する人物の指示をうけて、ホテルから別のホテルへと移動していました。つまり━━小山にはアリバイがないのです。
この殺人事件は『支援者=真犯人』によって仕組まれた罠です。小山自身があたかも時刻表トリックを用いて根津を殺害したかのように見せかけるための。
単なる窃盗で逃げているつもりが、いつのまにか殺人犯として追われる事態に陥るわけです。小山は、精神的に追い詰められていきます。
驚くべきことに。主人公であるはずの小山が、物語中盤で死んでしまいます。
てっきり━━逃亡劇のすえに小山が真犯人をつきとめるストーリーだと思っていたので、すこし驚きました。
逃亡犯である小山が死んでしまった中盤以降は、全国各地の刑事たちの視点によってストーリーが進行します。
トリをつとめるのは三重県警の徳島警部補です。(ややこしい名前w)
潜伏先ホテルの一室において。硫化水素中毒によって死亡していた小山は、逃亡に疲れた末の自殺であると判断されますが━━警察は、地道な捜査によってそれを覆します。
このあと。新たに、関係者の死亡事件が発生して━━未公開情報ディスクの盗難に端を発する、東京/名古屋/大阪/三重/福岡にまたがる広域連続殺人事件の真相が明らかになっていくのです。
本書の真犯人(黒幕)は、終盤において主犯(根津や小山の殺害を指示した人物)を殺害します。
この多層構造こそが、本書のタイトル『マリオネットの背中』です。
徳島警部補は、主犯のアリバイ崩しだけでなく、その主犯を殺害した真犯人(いちばん悪いやつ)のアリバイ崩しにも挑まなければいけません。
犯人も二段構えなら、主人公も二段構えであり、クライマックスであるアリバイ崩しも二段構えという━━。
つぎつぎと繰り出されるどんでん返しの連続は、読んでいて小気味良いものでした。
本書のあとがきによれば、著者の西河恵光さんは西村京太郎や森村誠一を愛読してきたといいます。硬派な推理小説の書き手です。
おそらく。本書は、特に団塊の世代以降の読者に好まれる内容ではないでしょうか。私事で恐縮ですが、まさに1947年生まれの叔父が、こういう趣向の小説を今でもよく読んでいます。
Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)
「時刻表ミステリ」度 ★★★★☆(4) 「どんでん返し」度 ★★★★☆(4) 「満足」度 ★★★☆☆(3) 「総合」 ★★★☆☆(3)
西河恵光さん。『さいが・よしみつ』と読みます。1965年生まれ、東京都出身。幼少時代から推理小説に慣れ親しんでいる。森村誠一と西村京太郎を愛読してきた。
西河恵光のブログ
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つんどく速報ライター☆イマガワです。
ざっくり言うと
・医療機器メーカーの未公開技術をめぐる陰謀
・時刻表トリックを逆手にとった巧妙な罠
・真犯人・トリック・アリバイ崩し。すべてが二段構えの驚き
マリオネットの背中 [Kindle版]
西河恵光 (著)
出版: JSpace (2013/10/3)
会社の金庫から機密情報を盗み出した小山は、追手から逃げ切ることができるのか? そんな小山のことを陰で操る人物とは?
人間のエゴと裏切りが交差するサスペンス風ミステリー!
※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。
正統派の時刻表トリック
本書『マリオネットの背中』は、正統派でありながら変化球を合わせもった時刻表トリックを含むミステリー小説です。
事件を解決するのは、日本各地に点在する警察署の名もなき刑事たち。
名探偵や一般人、あるいは、特殊能力やひらめきを備えた名物刑事などが幅をきかせがちな現代ミステリには少ない、なつかしいタイプの推理小説です。
時刻表を駆使するといえば鉄道網を利用したトリックですが、本書においては、それ以外の交通機関と移動手段を活用する複雑なアリバイ工作を披露しています。
あらすじ
医療機器メーカー『成和医療科学』の未公開技術の持ち出しをめぐる、逃亡劇&殺人事件です。
『成和医療科学』に在籍している小山隆一という技術社員が、人員整理の対象になります。
酒の席において、会社の理不尽な扱いを愚痴っていた小山。友人の根津義一は、ライバル企業への手土産を携えた転職(産業スパイとしての裏切り)をそそのかします。
単純ですこしノイローゼ気味の小山は、社外秘である未公開情報ディスクの窃盗を実行します。
が、その現場を夜回りのガードマンに目撃されてしまい、ディスクと同じ金庫に収められていた500万円を共に持ち出して、その勢いで出奔(逃亡)します。
未公開情報ディスクの件は機密事項ということもあり、盗難届を提出しませんでした。
しかし。このあと、小山は警察に追われる事態に陥ります━━殺人犯として。
経緯
新大阪に到着した新幹線のぞみ327号の車内において、根津(小山をそそのかした友人)の死体が発見されます。当日、潜伏先のホテルで小山と落ち合う予定でした。
殺された根津の席のそばに落ちていたミントタブレットケースからは、小山の指紋が検出されます。
根津の死亡推定時刻において、小山は『支援者』と称する人物の指示をうけて、ホテルから別のホテルへと移動していました。つまり━━小山にはアリバイがないのです。
この殺人事件は『支援者=真犯人』によって仕組まれた罠です。小山自身があたかも時刻表トリックを用いて根津を殺害したかのように見せかけるための。
単なる窃盗で逃げているつもりが、いつのまにか殺人犯として追われる事態に陥るわけです。小山は、精神的に追い詰められていきます。
逃亡小説からの転換
驚くべきことに。主人公であるはずの小山が、物語中盤で死んでしまいます。
てっきり━━逃亡劇のすえに小山が真犯人をつきとめるストーリーだと思っていたので、すこし驚きました。
逃亡犯である小山が死んでしまった中盤以降は、全国各地の刑事たちの視点によってストーリーが進行します。
トリをつとめるのは三重県警の徳島警部補です。(ややこしい名前w)
潜伏先ホテルの一室において。硫化水素中毒によって死亡していた小山は、逃亡に疲れた末の自殺であると判断されますが━━警察は、地道な捜査によってそれを覆します。
このあと。新たに、関係者の死亡事件が発生して━━未公開情報ディスクの盗難に端を発する、東京/名古屋/大阪/三重/福岡にまたがる広域連続殺人事件の真相が明らかになっていくのです。
感想
本書の真犯人(黒幕)は、終盤において主犯(根津や小山の殺害を指示した人物)を殺害します。
この多層構造こそが、本書のタイトル『マリオネットの背中』です。
徳島警部補は、主犯のアリバイ崩しだけでなく、その主犯を殺害した真犯人(いちばん悪いやつ)のアリバイ崩しにも挑まなければいけません。
犯人も二段構えなら、主人公も二段構えであり、クライマックスであるアリバイ崩しも二段構えという━━。
つぎつぎと繰り出されるどんでん返しの連続は、読んでいて小気味良いものでした。
本書のあとがきによれば、著者の西河恵光さんは西村京太郎や森村誠一を愛読してきたといいます。硬派な推理小説の書き手です。
おそらく。本書は、特に団塊の世代以降の読者に好まれる内容ではないでしょうか。私事で恐縮ですが、まさに1947年生まれの叔父が、こういう趣向の小説を今でもよく読んでいます。
Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)
- マリオネットの背中
- 著者:西河恵光
- 価格:220円
- 読了にかかる時間:約2.5時間(個人差があります)
著者について
西河恵光さん。『さいが・よしみつ』と読みます。1965年生まれ、東京都出身。幼少時代から推理小説に慣れ親しんでいる。森村誠一と西村京太郎を愛読してきた。
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