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つんどく速報ライター☆イマガワです。
・ミステリ作家の家族が殺される。つぎは自分の番だ
・新生児13人殺しの犯人は、声高らかに笑う
・表現規制をあざわらう短編小説集
つんどく速報ライター☆イマガワです。
ざっくり言うと
・ミステリ作家の家族が殺される。つぎは自分の番だ
・新生児13人殺しの犯人は、声高らかに笑う
・表現規制をあざわらう短編小説集
禁忌破り [Kindle版]
D坂ノボル (著)
出版: D坂書房 (2014/5/6)
ミステリ×SF×サイコ・ホラー!
マスコミや世論からの猛バッシングを受けて断筆に追い込まれたミステリ小説家。窮地に陥った作家をさらに追い詰めるかのような殺人事件が、彼の周囲で起こり始める。
次第に全国規模に拡散しながら連鎖していく謎が謎を呼ぶ連続猟奇殺人。犯人の真意は? 正体は? 一連の事件の恐るべきミッシング・リンクとは?
いろんな意味で紙媒体には永遠に載らないであろうkindle媒体ならではのもっとも危険な表題作のほか、
狂っているのは犯人か? 世界か? 突如、病院の新生児室に侵入し、無惨にも十三人の赤ん坊を皆殺しにした産科医を巡る戦慄のホワイダニット・ミステリ、ミステリーズ!新人賞一次選考通過作「WELCOME TO THE PARADISE」を同時収録!
※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。
連続猟奇殺人と新生児殺し
本書『禁忌破り』は、2編の短編小説を収録しています。ジャンルは、サイコ・ミステリです。
表題作『禁忌破り』。問題作で世間を騒がせたのち、断筆に追いこまれた元ミステリ作家。その家族が、つぎつぎと猟奇的な方法で殺される。
最有力容疑者だったはずの人物の死体が見つかり、連続猟奇殺人は全国規模で広がっていく。みえない犯人像。はたして、元ミステリ作家は生き残ることができるのか?
『WELCOME TO THE PARADISE』。殺人産科医ホワーティーは叫んだ。「この世に生を受けるということが、すべての悲劇の始まりだ!」と。
アメリカ合衆国・産科医のホワーティーは、とりだしたばかりの新生児を床にたたききつけて殺害したあと、院内の新生児室に乱入して、11人の赤ちゃんを泣き叫んでいるのも構わずに窓から放り捨てた。
取調官であるメラー警部補の瞳には━━あろうことか共感の色が浮かんでいた。
ハードボイルド文体によって語られる、新生児殺しにこめられた真のメッセージとは?
今回のレビューでは、表題作の『禁忌破り(きんき・やぶり)』を、くわしく紹介します。
とつぜんの婚約解消
圭治(けいじ)という男性が、元恋人にむけて、婚約を一方的に取り消したことを謝っている。そんな手紙の文章から、物語がはじまります。
きっときみは、僕を恨んでいるだろう。突然、一方的に婚約を破棄したんだから。当然だ。
(中略)
あの夜、きみは、僕に別れの理由を訊ねた。気丈そうなおおきな眼に、うっすらと涙を湛えながら。
胸が痛んだ。傷まないわけがない。身寄りのないきみの身の上は知っている。きみの抱えている病についても。見捨てられたときみが思っても、むりはないんだ。
『禁忌破り』から引用。以下おなじ
別れをつげられた婚約者は、ひどく傷つきました。
しかし、圭治はウソをついてでも、彼女を遠ざける必要があったのです。
美しい生首
圭治は、猟奇殺人事件に巻きこまれていました。
圭治の父親が殺される。釣り糸をつかって、自宅の物干し竿で首つり死体として発見されます。
圭治の母親が殺される。クロスボウの矢が、頭部にいくつも刺さって見つかりました。
圭治のお姉さんが行方不明になる。しばらくして生首が小包として送られてきます。
お姉さんの生首は━━美しい剥製(はくせい)に加工されていたのです。首から下を失ってしまったのに、お姉さんは微笑んでいました。
元ストーカーの影
「次は、自分の番だ」。圭治は、犯人に心当たりがありました。
もっとも疑わしいのは、圭治にいやがらせを繰り返していたストーカーです。名前は、前槻精白(まえつき・せいはく)。つい最近、3年の刑期を終えて出所したばかり。
じつをいうと、圭治はミステリ作家です。
『生活保護コロシアム』という問題作を発表したとき、人権団体から抗議をうけて、世間のバッシングが高まり、圭治は断筆に追いこまれました。本は、発禁処分を受けます。
容疑者の死
事件の担当者である河豚田(ふぐた)刑事は、出所した元ストーカーの事情聴取に向かいます━━が、最有力容疑者もまた、連続猟奇殺人事件の被害者だったのです。
トラバサミ。野生動物をとらえるときに使うバネつきの器具です。
元ストーカーは、そのトラバサミで頭部をグチャグチャにくだかれて死んでいました。さらに全身の皮をはがされており、あきらかな他殺です。
つぎは自分の番にちがいないと覚悟していた圭治をよそに、全国でおなじような猟奇殺人事件がつぎつぎと発生します。
被害者たちの共通点に思いをめぐらせた圭治は、ついに確信します。
もはや警察は、これからも起こり続けるであろう連続猟奇殺人事件を止めることはできない!
なぜ、元ミステリ作家はとつぜん婚約を破棄して別れをつげたのか? かつての恋人にあてた手紙の最後━━物語の結末において、おどろきの真相が明かされています。
感想
本編中では発禁処分になったという『生活保護コロシアム』ですが、筒井康隆なら特別あつかいを受けられるかもしれません。
わが国において、不謹慎(ふきんしん)小説&断筆といえば、筒井康隆です。『時をかける少女』の原作者としても有名。
1993年に、教科書に採用された小説内の差別表現に対して抗議をうけたあと、出版社が無断で教科書から作品を削除してしまい。「プッツン」した筒井康隆は、断筆を宣言しました。
執筆再開は、4年後の1997年です。断筆を解除するにあたって、筒井康隆は『用語の改変はしない』という契約書を、あらためて新聞社や大手出版社と取り交わします。いまだに語りつがれる快挙です。
2006年に発表した『銀嶺の果て』という長編小説は、70歳をむかえた老人たちに殺しあいの義務(老人相互処刑制度 シルバー・バトル)を課して、日本の高齢化問題を一挙に解消しようという問題作です。
本書『禁忌破り』は、そんな筒井康隆の批評精神を受け継いでいる作品といっても過言ではありません。不謹慎小説が好きな人やツツイストには必読の1冊です。
Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)
- 禁忌破り
- 著者:D坂ノボル
- 価格:280円
- 読了にかかる時間:約1時間(個人差があります)
「サイコ・ホラー」度 ★★★★☆(4) 「問題提起」度 ★★★★☆(4) 「満足」度 ★★★★★(5) 「総合」 ★★★★☆(4)
著者について
D坂ノボルさん(@DzakaNovol)。『でぃーざか・のぼる』と読みます。近畿大学文芸学部卒 。野性時代フロンティア文学賞最終候補、ジャンプ小説新人賞最終候補などの投稿実績があります。
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串刺し教授(新潮文庫) [Kindle版]
筒井 康隆 (著)
出版: 新潮社 (2014/4/25)
この短編集には『シナリオ・時をかける少女』という不謹慎小説が収録されています。
作者である筒井康隆自身が、あの名作ジュブナイルをめちゃくちゃな内容に改変すると、どうなるか? 抱腹絶倒のセルフパロディ。
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