こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。

ざっくり言うと


・右手の親指1本だけで、電子書籍を作成・販売している
・著者は、筋ジストロフィー症のブロガー
・現在も、人工呼吸器をつけて24時間をベッドの上で過ごしている

人工呼吸器をしている筋ジス患者のエッセイ人工呼吸器をしている筋ジス患者のエッセイ [Kindle版]
のり (著)
出版: のり (2014/4/23)

二十四時間、人工呼吸器をしている筋ジス患者“のり”のエッセイ。ブログ『nori note』のエッセイをまとめて著書にしました。

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。

24時間 人工呼吸器が必要


著者であるのりさんは、1971年生まれの43歳・男性。『筋ジストロフィー症デュシェンヌ型』という重い病気をかかえて暮らしています。
1980年から入院しており、起きているときも眠っているときも人工呼吸器ですごしているそうです。

本書は、ブログ『nori note』の厳選エッセイをまとめた電子書籍です。

著者は、パソコンをつかってWordPressでブログを更新しています。
筋力が極端に低下しているため病院のベッドに寝たきりの状態ですが、わずかに動く右手親指をつかったスイッチ操作により、マウスを動かしたり、スクリーンキーボード入力を実現しています。

セルフパブリッシング本の出版は、ブログテキストを『一太郎』にコピー&ペーストしたのち電子書籍形式に変換。KDP(キンドル・ダイレクト・パブリッシング)をとおしてKindleストアで販売することに成功しました。

親指1本でも働きたい


恥ずかしいけれど僕には社会経験がない、つまり働いたことがないのだ。

病院では多くのスタッフの方々が働いているが、僕は横目で観ながら働くって、とても崇高で、なんて人間らしいものだと思うばかりだ。

人工呼吸器をしている筋ジス患者のエッセイ』から引用。以下おなじ

小学生のころに入院生活がはじまり、養護学校で高校までの学問を修めました。しかし『筋ジストロフィー症デュシェンヌ型』の進行により、ふつうに働くことは難しい。

いまは、右手親指だけで可能な「ことばをつづる」ことを軸にして、著者は(プロ?)ブロガーになりたいと考えているようです。
WordPressをみずからインストールしてカスタマイズ運用したり、Twitterや、話題のnote.muまで使いこなしています。

僕の書き物を通して何かを依頼され、ベッド上で仕事ができるようになりたい。

著者は、病院で仕事をすることを実現したいと切実に願い、その思いを毎日ブログに書きとめています。ほかにも━━

・哲学は病院で作られた
・引きこもる勇気
・病院での公平性
・命の重み
・こんにちは、新人看護婦さん
・障害者は誰かの力で成り立っていると佐村河内は思っている
・かさぶたのような過去の僕
・のんきに寿命を考える必要はない

本書目次から抜粋。全32項目を収録

何十年もずっと病院のベッドの上ですごしている者━━ならではの視点にもとづいた建設的な意見は、たとえ医療従事者でなくとも、人生をすごす上での気づきを与えてくれます。

感想


本書『人工呼吸器をしている筋ジス患者のエッセイ』の著者であるのりさんの存在を知ったとき、驚きました。右手の親指だけを使って「Kindleストアで本を販売している」というのですから。
大げさにいえば、指1本でツキノワグマを倒す━━みたいな衝撃を受けました Σ(゚Д゚)

まったく想定していなかったタイプのセルフパブリッシング著者です。
「指1本でブログを書く、SNSに参加する」という事例ならば想像できますが、まさかKDPを使いこなすなんて……。

のりさんが実践してみせたとおり、KDPなどを利用した電子書籍の出版は、うごく指が1本あれば可能です。
必要なソフトウェアや情報は、すべてインターネットで入手できる。マウスを操作して、パソコンのスクリーンキーボードで文字入力する。理屈のうえでは可能です。

セルフパブリッシングは、誰にでも可能。でも、カンタンだけど難しい。
なぜなら、五体満足の書き手たちでさえ、KDPに挑戦したものの刊行までたどりつけなかったり、刊行後のフォーマットトラブルを解決できずにあきらめてしまったり。そのような事例がたくさんあるからです。

セルフパブリッシングとは、分別なき出版の自由化です。タダみたいな必要経費のみで、誰もが自分の主義主張をパッケージングした『本』を世に問うことができる。

『本』であることが重要なのです。「おもしろいブログ」よりも「おもしろい人が書いた本」のほうが、より多くの人々の興味をひきやすい。
どちらも文字情報であって、いまは本という形式に慣れ親しんでいる人が多い━━それだけのことにすぎませんが、セルフパブリッシングにおけるささやかな効用です。

本書に出会って、セルフパブリッシングの本質を見つめ直すことができました。

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)


「闘病記」度
★★★☆☆(3)
「前向きエッセイ」度
★★★★☆(4)
「満足」度
★★★★☆(4)
「総合」
★★★★☆(4)


著者について


のりさん(@nori_note)。ブログ『nori note 入院している筋ジス患者のエッセイ。』を、コツコツと更新中。

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