こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。

ざっくり言うと


・グロテスク描写をふくむ
・臨場感のあるカット割りや演出が素晴らしい
・ホラー漫画でありながら、郷愁(ノスタルジア)を感じさせる

キシワタリ天涯地 1キシワタリ天涯地 1 [Kindle版]
寺田雅影丸 (著)
出版: 寺田雅影丸; 01版 (2014/1/12)

社会派青春ファンタジーホラーイラストストーリー怪奇漫画。

家庭の事情で天涯孤独になった16歳の少年春加瀬渉(はるかせわたる)は、小学生時代に身を寄せていた遠い親戚を頼ってその町を訪れるが、周縁の異変で町に入ることができない。

謎の老婆の導きでその町、旭寿町に至る道を踏み出すが、そこにはさらなる怪異が待っていた。
※形式は広い意味でマンガ、コミックに分類されます。絵物語、イラストストーリー、イラストノベルにも近い形式になっています。

※下記プレビューはPC向けです。

万人受けはしないけれど……


今回は、特別枠のセルフパブリッシング作品レビューをお送りします。
ぜひとも紹介したい思っていながら、あつかいが難しいために先延ばしになっていた、いわくつきの逸品です。

「ブキミな感じ、キモさが魅力」「マイナーな雰囲気が良い」「月刊ガロっぽい」「昆虫たちの姿を活き活きと描いている」
本書に対するほめ言葉を重ねるほどに、一般読者の共感から遠くなっていくような気がします。

本書『キシワタリ天涯地』シリーズは、読みごたえのあるホラー漫画……なのですが。
いつものように「この本、おもしろいですよ! 買って損なし」などと、気軽にオススメしにくい。

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キシワタリ天涯地』シリーズから引用。以下おなじ

本書は、わたしたちが慣れ親しんでいる作風や表現とはすこし異なります。読む人をえらぶ作品なので、その点をご了承ください。

あらすじ


何らかの出来事によって廃墟(はいきょ)と化した町に、16歳の少年が姿をあらわします。

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彼の名は、春加瀬渉(はるかせ・わたる)。すでに両親を亡くしています。

この廃墟━━埼玉県旭寿町には、かつて、渉(わたる)の親戚一家が住んでおり、小学生の頃に身を寄せていたことがあるようです。
現在は、親戚一家も行方不明(?)。天涯孤独(テンガイコドク)の身となった16歳の渉は、引き寄せられるかのように昔の仮住まいをたずねます。

そこで待っていたのは、やさしい親戚のオバサンや、可愛がってくれたイトコのお姉さんではなく━━不気味にうごめく異形な昆虫たちの群れでした。

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※自主規制。本編ではモザイクはありません。

住民の姿が消えて、そのかわり、見たこともない異形の昆虫たちが大量発生した。
無人であるはずの廃墟において、つねに視線を感じながら━━。天涯孤独の少年は「むかし」「いま」「幻想」「現実」の境界を行きつ戻りつしながら、がれきのなかをさまよいます。

感想


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この世ならざるものを感じさせる、やせこけた女。

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悲運の孤児をひそかに見守る、うつくしい天使。
少年を取り巻くキーパーソンたちは、ことごとく謎めいています。

キシワタリ天涯地』シリーズは、2014年6月27日現在━━1~5巻が発売中です。5冊あわせて、市販の青年コミック2巻分くらいの情報量。

ごらんのとおり分冊形式なのですが━━個人的な感想を言わせてもらえば「3~4冊を、1巻にまとめてイッキ読みできたほうが良い」と感じました。

本書のあらゆる場面が、不穏な気配に満ちています。
すぐれたスリラー演出と絶妙なカット割によって描写されているので、つぎの瞬間になにが起こるかわからない緊迫感を味わえます。

しかしながら、本書においては明かされていない設定や謎が多いため、分冊形式では続刊への興味がつながりにくいように思いました。
発表方法やパッケージ方式などは作者の自由なのですが━━今後、結合版あるいは完全版の選択肢があれば、もっと手に取りやすくなるかもしれません。

たとえば、当ブログでも以前レビューした『ショーガクセー×オブ×ザ×デッド!』の事例が参考になるかもしれません。元は分冊形式で発表していたセルフパブリッシング作品ですが、あのようなパッケージングは満足度が高いです。

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)


「昆虫ホラーまんが」度
★★★★☆(4)
「虫さん大好き超愛してる」度
★★★★☆(4)
「満足」度
★★★★☆(4)
「総合」
★★★★☆(4)


著者について


寺田雅影丸さん(@otora)。『てらだまさかげまる』と読みます。1962年、静岡県富士宮市生まれ。絵物語(イラストーリー)を極めたいと思っている。

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