こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。
・『天顕祭(てんけんさい)』という知られざる名作コミックが存在する
・放射能汚染、日本神話のヤマタノオロチ伝説が題材
・コミティア100で発表した番外編まんが
つんどく速報ライター☆イマガワです。
ざっくり言うと
・『天顕祭(てんけんさい)』という知られざる名作コミックが存在する
・放射能汚染、日本神話のヤマタノオロチ伝説が題材
・コミティア100で発表した番外編まんが
菩薩の山 (天顕祭) [Kindle版]
白井弓子 (著)
出版: 秋元なおと(編集); 2版 (2013/7/19)
『天顕祭』の主人公達が生まれるずっと昔。「汚れた戦争」を生き延びたひとつの菩薩像があった。
菩薩像が過ごした長い長い年月を、セリフのないマンガで描いた番外編。
33ページ。本文白黒。
※下記プレビューはPC向けです。
伝奇ロマンファンタジーの傑作
本書『菩薩の山』は、まんが『天顕祭』の番外編です。
『天顕祭 (New COMICS)』 352ページ
現在では商業出版物として流通していますが━━もともとは、コミティアで発表していたオリジナル作品です。
『天顕祭』は、2007年に快挙をなしとげます。
文化庁メディア芸術祭マンガ部門にて、同人誌としては初めての奨励賞を受賞しました。加筆修正をほどこしたものを出版社から発売したのは、そのあとの出来事です。
2008年時点における『天顕祭』発行部数は、8刷60,000部以上。
小説『狐笛のかなた』の挿絵を担当した縁により、上橋菜穂子さんが「久々に熱く濃いもので胸を貫くような漫画に出会った。傑作です」という帯コメントを寄せています。
『天顕祭』あらすじ
本筋は、クシナダ姫を救うスサノオノミコト━━日本神話におけるヤマタノオロチ伝説の翻案です。
かつて汚れた戦争があった。男だらけの復興現場に紅一点、女性の鳶(とび)職人━━木島咲(きしま・さき)の姿があった。咲は「望まない結婚をするのがイヤで故郷から逃げてきた」という。
『天顕祭』から引用。以下おなじ
ただの家出少女ではなかった。咲は、いわばクシナダ姫だった。
天顕祭は毎年おこなわれるが、いつもは人形をおそなえするだけで済む。しかし、50年にいちどの大祭では生身のクシナダ姫を捧げる儀式がおこなわれる。
天顕さん(ヤマタノオロチ)の機嫌を損ねれば大災厄に見舞われるという伝説を信じている者たちが、今回の人身御供(ひとみごくう)である咲を連れ戻そうとする。
世界観は、広範な汚染に見舞われている架空の日本。本編における汚染物質の記述は『フカシ』━━不可視、目にみえない有害で危険な……。どう考えても……。
原発、核兵器、放射能という単語はいっさい登場しません。でも、これって除染作業やガイガーカウンターのことだろうなあ……というように。
一連の報道でわたしたちが見慣れている光景があったり、まんが『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』を読んだことのある人は、既視感を感じるはずです。
しつこいようですが『天顕祭』は2011年より前の作品です。
現実に起きた大惨事の記憶が、それ以前に作り出されたはずの虚構(フィクション)の理解をうながす━━という、あたかも脳内がタイムパラドックスを起こしているかのような読書体験を味わえます。
『菩薩の山』あらすじ
投下された汚れた爆弾によって延焼をこうむった仏像にフォーカスを当てて、その変遷を描いています。
『菩薩の山 (天顕祭)』から引用
2012年開催の記念すべき『コミティア100』にあわせて制作したものだそうです。
感想
繰り返しになりますが、本編である『天顕祭』は、同人誌即売会において2011年3月より前に発表していたものであり、いわゆるフィクションが現実を先取りしたと評される作品群のひとつです。
とはいうものの━━ことさらに放射能の恐ろしさや反核・反原発を主張しているわけではありません。(そういう目的で描いてない)
あくまでも、神楽(かぐら)という実在する祭事のにぎわいから着想を得て、『ナウシカ』的な世界観の上でヤマタノオロチ伝説の翻案を試みたものであり、フラットな気持ちで読んだほうが『天顕祭』という作品を楽しめると思います。
クシナダ姫を救うために奮闘するスサノオノミコト━━すなわち勇者に相当する蛮勇と強靭な肉体をあわせもつ職業人として、消防士でもなければ自衛官でもない鳶職人を選んだのは作者の慧眼としか言いようがありません。
鳶職にまつわる設定や小道具が、伝奇ロマンでありSFファンタジーでもある本書のオリジナリティを際立たせています。
ちなみに。女性鳶は、くの一や女性トラック運転手などにも通じるマニア的な萌え要素を感じさせることを付け加えておきます。
Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)
- 菩薩の山 (天顕祭)
- 著者:白井弓子
- 価格:100円
- 読了にかかる時間:約15分(個人差があります)
「本編を読もう!」度 ★★★★★(5) 「サイレント」度 ★★★★☆(4) 「満足」度 ★★★★☆(4) 「総合」 ★★★★☆(4)
著者について
白井弓子さん(@yumish)。『しらい・ゆみこ』と読みます。1967年生まれ、愛媛県出身。同人サークル名は『メタ・パラダイム』。商業作品は『WOMBS』や『ラフナス』など。
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