こんにちは!
つんどく速報ライター☆イマガワです。

ざっくり言うと


・わいせつ行為でカノジョができた!
・痴漢から始まる恋もある
・エロティックな鉄道小説

南武枝線南武枝線
牟礼鯨(著)
出版: 西瓜鯨油社 (2013-11-22)

痴漢から始まる恋もある。

痴漢で出会った嘘つきとサイコパス。
嘘つきの始めた「新日程」が南武支線を怪異させる。
記憶を喪う鉄道幻想譚。

※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。

痴漢ではじまる恋もある


本書『南武枝線』は、痴漢からはじまる恋の物語です。

夜の南武線川崎行きの普通列車。男は、女子高生・彩香のスカートのすそをたくしあげてパンツの中に手を入れます。

「さみしそうな人」

確かにそう彩香は言った。痴漢ではじまる恋もある。その瞬間に僕は誰にも押し止めることのできない恋に陥ちた。

南武枝線』から引用。以下おなじ

これが、2人の出会いです。

愛をもとめて鉄道沿線をさまよう男


すこしのあいだ付き合ったものの、男は捨てられてしまいます。

あんなに愛しあったのに……納得できない。また、会いたい。
でも彩香のケータイにはつながらず、通っている学校や住んでいる場所もわかりません。

男は、思いつきます。いつか彩香と交わした会話のなかに出てきた「父親が暮らしているマンション」を。正確な住所は教えてもらえなかったものの、その場所を探り当てれば会えるかもしれない。

いつか彩香が口にしていた『武蔵なんとか』という駅名だけを頼りにして、鉄道沿線をさまよう日々がはじまります。

感想


本書『南武枝線』の主人公は、チカン野郎です。内容紹介によれば『サイコパス』となっています。別れたモトカノの居場所をつきとめようとしているわけですから『ストーカー』と言うこともできるでしょう。

ごらんのとおりの反社会的気質な主人公ですが……ちょっと共感できる部分もありました。とくに、うろおぼえの鉄道駅名をたよりにして相手が暮らしている地域に足を運ぶ━━という欲求や行動です。これ、なんとなくわかります。

東京ほどではなくても、人口200万人以上の地方都市ならば『オフ会』が成立しやすい。
2ちゃんねるやSNSをながめれば、自分が知っている駅前の居酒屋やレストランにおいて、なんらかの集会(オフ会、勉強会)が開催されているのを見かけます。

「こんなにカンタンに会えるんだ」と拍子抜けするほどです。そうなると、自分も参加したくなるものです。
会場に行きます。はじめて顔をあわせます。よほど濃いコミュニティでないかぎり、本名を教えあうことはないでしょう。

何度も参加しているうちに、異性の参加者に恋をすることもあるでしょう。しかし、オフ会でアプローチするのは色んな意味で抵抗があります。コミュニティの雰囲気が悪くなるのはいちばん避けたい。
そうやって迷っているうちに、いつしか集まりがわるくなり、ふたたび顔を合わせる機会がなくなってしまう。

もういちど会えないだろうか。Twitterアカウントやメールアドレスは知っているけれど。直接会いたいというのは、なにかちがう。

そういえば、住んでいるのは『なんとか駅周辺』って言ってたっけ。うちから三駅か四駅くらいだから、用もないけれど電車にのって駅前に足を運んでみようかな……万に一つも会えるはずがないのに。

鉄道沿線をさまよう男の気持ちが、すこしだけ理解できます。わかってはいけないのかもしれませんが、わかってしまったので、あらためて自分が何者であるかを再認識しました。気をつけて生きようと思います。

Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)

  • 南武枝線
  • 著者:牟礼鯨
  • 価格:300円
  • 読了にかかる時間:約1時間(個人差があります)

「路上小説」度
★★★★☆(4)
「幻想」度
★★★★☆(4)
「満足」度
★★★★☆(4)
「総合」
★★★★☆(4)

著者について


牟礼鯨さん(@murekujira)。『むれくじら』と読みます。1984年生まれ、東京都出身の物語作家。早稲田大学第一文学部卒。

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