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つんどく速報ライター☆イマガワです。
・異色の少女小説アンソロジー
・2013年の『超文学フリマ』頒布作品
・電子書籍化にあたって、特典を追加!
つんどく速報ライター☆イマガワです。
ざっくり言うと
・異色の少女小説アンソロジー
・2013年の『超文学フリマ』頒布作品
・電子書籍化にあたって、特典を追加!
欠落少女コレクション
神尾アルミ(著), 空木春宵(著), 七木香枝(著), 志保龍彦(著), 藤あさや(著), enu(イラスト)
出版: ソウブンドウ (2014-05-01)
プロ・アマ混合の文芸サークル「ソウブンドウ」が文芸誌頒布イベント「文学フリマ」にて頒布し、好評のうちに完売した『欠落少女コレクション』のKindle版です。
「欠落×少女」をテーマに五名の作家が競作したテーマアンソロジーとなっています。
何かが欠けている少女、何かをなくしてしまった少女、何かを具えていなかった少女......。不完全であるからこそ愛おしく、歪であるからこそ輝きを放つ少女達が、SF、ファンタジー、ゴシック、現代青春から怪奇幻想まで、とりどりのジャンルで舞い踊ります。
※製品版は、タテ書きです。下記プレビューはPC向けです。
生まれた時から喪失する運命にある
本書『欠落少女コレクション』は、2013年の4月に開催された『ニコニコ超会議2』文章系同人誌頒布イベント『超文学フリマ』において発表した少女小説アンソロジーです。
『欠落×少女』をテーマに書きおろした小説7編を収録。知る人ぞ知る少女小説の名手たちによる競演であり、いずれの作品も「ハズレなし!」と断言することができる━━まさに珠玉の短編小説集です。
うつくしい表紙は、イラストレーター・enuの手によるもの。
電子書籍版の特典として━━『神さまのいない世界』(著・神尾アルミ)と『ヘッドレス・マイ・ダーリン』(著・ 空木春宵)という短編小説を追加収録しています。
『自由意思』
夫を殺害したあとバラバラに解体した━━そんな狂人の子である金髪の少女は、ミッション校の寄宿舎で、創作人形をこしらえては壊して埋めるという行為を繰り返していた。
彼女がわたしに友情以上の感情を抱いていることは知っていた。その気持ちを"存在の火花"とするつもりだった。
『欠落少女コレクション』から引用
存在の火花。それは『フランケンシュタイン』に由来する。魂の点火あるいは添加。
とっておきの創作人形には、母の毛髪をもちいた。少女とおなじ髪の色をした人形であり━━少女そのものだった。
少女は、例の「自分に向けて友情以上の感情を抱いている」女生徒に、招待状を送る。
しかし、約束の時間に少女はいない。あえて、人形と女生徒をふたりきりにすることで━━きっと『存在の火花を点ずる』に違いない、と。残酷な儀式がもたらす結末とは?
【感想】ペダンティックな生物学/医学知識がいちいち腑に落ちるものばかりであり、存在そのものがテロメアたることを運命づけられた少女の破滅にむかって収束していく筆の流れは、おみごと!
『爪先に、結んだリボンをひっかける』
『女学校』『師範学校』『修身』というキーワードが散りばめられているので、戦前がテーマなのかと思いきや━━世界が一度滅びてから千年を経ている、大正や昭和初期の日本とよく似た世界観。
女学校に通う珠紀(たまき)は、ゆくゆくは師範学校に進もうと思っていた。珠紀は華族の端くれだが━━『花御殿』(皇族)の子女たちに比べれば身分が低いため、みずからの聡明さを隠して学校生活を送っていた。
しかし。4年生への進級を前に、珠紀の夢は打ちくだかれる。とある『花御殿』のお屋敷に女中として迎えられることが決まってしまうからだ。
この世界において『花御殿』は、たんなる万世一系の皇統にとどまらない。レビューでは多くを語ることはできないものの━━無数の少女たちが世界存続の燃料として費やされてきたことが明らかになるラストは、まさに圧巻。
【感想】スチームパンクならぬ『吉屋信子パンク』ともいうべき、戦前の少女小説を淡くパラレルSF風味で味つけしたような仕上がりの物語。たいへんおいしゅうございました。
『銀鶏』
軌道エレベーターが隔てる、ふたつの居住区域。天都(てんと)。底都(ていと)。
先の大戦によって、放射能物質と産業廃棄物の処分場と化した地上は、底都と呼ばれている。住人たちには奇形でない者はおらず、悪臭にまみれて暮らす彼らの楽しみは、闘技場観戦だった。
怒声が発せられ、血と脳みそが飛び散る━━この世の果てともいえる場にふさわしくない、無謀な少女の姿があった。
天都の住民である雛子(ひなこ)の目的は、ひとりの少女闘士だった。
その名は、銀鶏(ぎんけい)。化け者のような男性闘士たちを相手に勝ち続けている銀髪の女性ファイター。彼女には、肩口から先が無い━━両腕を失っているにもかかわらず、ブーツのかかとに仕込んだ剣をもちいて、最強の名をほしいままにしていた。
雛子は、天都における平和でありながら退廃的なありさまに疑問を感じていた。
銀鶏は、汚物に満ちた底都にあって、はるか上空にある天都をいつか突き破らんと、その憎悪を日々の試合で発散していた。
出会うはずのなかった少女ふたりが、互いの本心に触れあったとき。偽りの楽園は━━。
【感想】読んでいて、最近みたばかりのマット・デイモン主演『エリジウム』の世界観を思い出しました。ほかにもサイバーパンク映画に登場するような和風テイストも加味されており、マンガでも読みたい!と感じました。
ほかにも、肉体や五感のいずれかを欠損した少女ばかりを集めた見世物小屋に、あるとき「五体満足だが、心を持たない少女」がやってくる『感応グラン=ギニョル』。
高尚なサブカル趣味を好みながらも隠して学生生活を送っている少女が、パラレル・ドッペルゲンガーと対面する『きみがいた月曜日』など、計5編+イラスト1点+特別収録2編。
文学フリマおそるべし!
一部の文学フリマ作品は、以前より密林社を経由したAmazon販売がおこなわれていました。
2012年末にはじまった日本版KDP(キンドル・ダイレクト・パブリッシング)を契機として、ますます、文学フリマ作品を入手しやすくなりました。
当ブログでは、いままでに何度も文学フリマ由来のセルフパブリッシング作品をレビューしてきましたが━━手に取るたびに、品質の高さにうなっています。
良い機会なので、Kindleストアで購入可能な『文学フリマ』関連作品をリストアップしておきましょう。
ダイヤモンドの戦士
佐藤(著)
出版: 佐藤 (2013-07-21)
【レビュー】死をもたらすバターの雨。少女が銃をたずさえて空をかけめぐるSF小説『ダイヤモンドの戦士』
南武枝線
牟礼鯨(著)
出版: 西瓜鯨油社 (2013-11-22)
【レビュー】痴漢という言葉からは恋の芽生えしか想像できない。小説『南武枝線』
血を研ぐ
大島圭一郎(著), 内田努(著)
出版: 「愛は豚に喰わせろ」製作委員会 (2013-07-10)
【レビュー】『血を研ぐ』監禁&脱出ミステリー小説。サリンジャーが謎を解くカギ
川町奇譚
栗山真太朗(著)
出版: 少年憧憬社 (2014-03-02)
世界再生の書物と一つの楽園
秋山 真琴(著)
出版: 雲上回廊 (2013-11-04)
菌 くさびら (名刺電庫-003)
山本 清風(著), 西本 愛(イラスト)
出版: 文学結社猫 (2014-04-24)
幻視コレクション 想い焦がれる追憶の行方
水池 亘(著), 鳴原 あきら(著), 渡邊 利通(著), 泉 由良(著), 秋山 真琴(編集)
出版: 雲上回廊 (2014-05-05)
ほか多数。
Kindleストアでサンプルが無料で読めます。お試しください。(スマートフォン、タブレットでもOK)
- 欠落少女コレクション
- 著者:神尾アルミ,空木春宵,七木香枝,志保龍彦,藤あさや,enu
- 価格:300円
- 読了にかかる時間:約3時間(個人差があります)
「背徳のエロティシズム」度 ★★★★★(5) 「少女エキス」度 ★★★★★(5) 「満足」度 ★★★★★(5) 「総合」 ★★★★★(5)
著者について
藤あさやさん(@touasa)。『とう・あさや』と読みます。2006年前後から百合やSFをサイトにて公開。わなざう
七木香枝さん(@hanagasumido)。『ななき・かえ』と読みます。広島在住の大学院研修員生。豆本製作をしている。花霞堂日録
志保龍彦さん(@shivo7)。『しぼ・たつひこ』と読みます。『Kudanの瞳』(原色の想像力2 (創元SF短編賞アンソロジー)所収)にて、第二回創元SF短編賞 日下三蔵賞を受賞。
空木春宵さん(@s_utsugi)。『うつぎ・しゅんしょう』と読みます。『繭の見る夢』(原色の想像力2 (創元SF短編賞アンソロジー)所収)にて、第二回創元SF短編賞佳作受賞。
神尾アルミさん(@kamikamikamio)。『かみお・あるみ』と読みます。同人サークル『ソウブンドウ』代表。一迅社アイリス文庫にて商業作家として活動している。
enuさん(@vanillaiscream7)。東京都在住のイラストレーター。「enu」のプロフィール [pixiv]
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